PCR検査までの長き道のり : 同僚がコロナ感染で自宅待機2週間

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新型コロナウイルスが世界で猛威をふるっている。東京でも、3月下旬以降、感染者の増加のペースが上がり、4月28日にはついに累計4000人を超えた。いまや、いつ自分の身に降りかかってきてもおかしくない状態だ。身近な同僚が感染し、だらだらと続く微熱におびえながら2週間にわたる自宅待機生活を送る都内在住の会社員に、匿名を条件に心境をつづってもらった。

感染者と20分間の打ち合わせで、自宅待機に

自宅待機から2週間過ぎた。
4月上旬、職場の同僚が新型コロナウイルスに感染した。その後、ごく近いところで仕事していた数人の感染も判明。業務の性格上、完全な在宅勤務は難しい仕事なのだが、社内外に感染を広げないため、疑いがある社員は在宅勤務を命じられた。

在宅勤務が始まってから、37度台の微熱が続いていた。症状は熱だけだが、テレワークをすると疲れがどっとたまり、発熱外来のクリニックで処方された解熱剤を飲んでも熱は下がらない。

最初に感染が判明した同僚とは、その数日前に20分ほどの打ち合わせをしていた。その後、相次いで感染が分かった同僚とも近い距離でやりとりをしていたため、すぐにPCR検査を受けられるものと思いきや、微熱程度の症状では相手にしてもらえない。他の症状のひどい人が優先され、順番待ちすることになった。

軽症のうちに病院を探しておくべし

その間、一番思ったのは、感染ルートがよく分からない状況で、症状が出たらどれだけ大変だったのだろうということだ。私の場合は、社内で複数の感染者が出たため、会社側も「健康観察」の必要性を認識していて、日々、状態を報告したり、会社からも連絡があったりした。また、同じように自宅待機を命じられた同僚同士でお互いの状況を確認し、励まし合うこともできた。つまり、万が一、危険な状況になった時にも孤立無援ではないという頼みの綱が心の支えになった。

しかし、「症状は新型コロナっぽい…けれど、どこで感染したか分からない」場合には、「自主隔離」という不自由な環境の中、孤独と不安と恐怖の中であれこれ対応を考えなくてはならないだろう。その不安を解消するためにも、どうしても伝えたいことがある。

「自由に動けるうちに、すぐに対応してくれる病院を見つけておく」ということだ。

新型コロナウイルス感染が疑われる場合、まずは「居住する地域の帰国者・接触者相談センターに電話する」ことが求められている。しかし、そこでは医療機関を紹介してくれるだけで、よほどラッキーでない限りすぐ検査とはならない。そもそも「37.5度以上の発熱が4日続く」という、接触者相談センターに連絡する基準に達しないケースも多いのではないだろうか。私自身も、たまに38度近くまで上がることがあっても、だいたいは、37度台の前半で推移していて、37.5度以上が4日続いたわけではなかった。

一番、確実なのはかかりつけ医への相談だ。そこが発熱外来に対応していれば、できるだけ早く診てもらった方がいい。仮に、対応していなくても、近くの医療機関を紹介してもらえる可能性が高い。かかりつけ医がない場合には、近所で発熱外来をやっていそうな病院に当たりを付けておくことお勧めする。熱が上がったり、倦怠(けんたい)感が高まったりしてからでは、インターネットで情報検索する気力すら湧かなくなるからだ。事前に確認しておけば、万が一、症状に変化があった時にも落ち着いて対応することができる。

電話がつながらない、急患受け付けない週末の恐怖

注意が必要なのは、週末だ。私も、土曜日に熱が38度近くまで上がった。通っていたクリニックは休診だったため、やむなく地元の帰国者・接触者相談センターの緊急番号に電話した。相談センターは保健所内に設置されていて、都内の感染者が急増する中、ここ数カ月、限られた職員で業務がパンク状態であることは、テレビのニュースなどでもたびたび目にしている。案の定、何度電話しても、「ツーツー」と話し中状態でつながらなかった。仕方なく、社内の感染者が受診したという救急対応の病院に電話したが、「土日は救急の受け入れしていません」と断られる。

すがるような思いで、東京都の新型コロナコールセンターに電話したところ、「ここは医療機関とも保健所とも連携していません。自分で週末に対応している救急病院をネット検索して下さい」と言われた。いったい、なんのために開設している窓口なのか…と体中の力が抜けた。

その時点で病院探しは諦めて、週末は不安な気持ちのまま、ひたすら布団の中でやり過ごした。平日なら保健所の対応ももう少しスムーズだと思うが、保健所に1日中電話をかけ続けてもつながらず、2日目でようやく紹介してもらったクリニックにも診察拒否され、漂流したという話も耳にした。

「医療崩壊を防ぐため」と言われると、まったく反論の余地がないのだが、重症者以外は皆、後回しというのが、新型コロナウイルス対応の現状なのだ。ごくたまにラッキーにもすぐに検査できたという話も聞くが、多くのケースでは、「濃厚接触者」でなければ、容易には検査してもらえない。少なくとも、感染者と一定の時間近くで打ち合わせしていた私ですら「濃厚」とは分類されず、検査の網からこぼれ落ちた。また、多くの同僚も同じ状態だった。

私自身は、感染が疑われる症状が出ているという自覚があり、クリニックにかかる際にも、公共交通機関は使わず、ふらつきながらも歩いて通院した。どうしてもつらい時にはタクシーを利用したが、手袋をして、マスクは二枚重ね。乗車中は窓を開けて、ずっと顔を外に向けて、料金の支払いにはパスモを使った。ウイルスを車中に残して、ドライバーや次のお客さんに迷惑をかけてはならないと、細心の注意を払った。自宅のごみを捨てるのも、恐怖だった。袋の口が開いて、清掃員の方が危険な目に遭ってはいけないと、使用済みのマスクなどは厳重に包んで、ポリ袋の口はしっかり結び、二重にした。

ようやくたどりついたPCRで陰性になったが…

何日たっても、薬を飲んでも熱が下がらず、クリニックの医師から保健所に連絡してもらい、発症から10日あまりたって、ようやくPCR検査を受けることができた。結果は陰性。しかし、あの長く続く微熱が本当にただの風邪だったのか、それとも、自宅待機しているうちに、運よく、ウイルスに打ち勝つことができたのか、本当のところはよく分からない。「陰性」を報告したものの、会社も慎重な姿勢で、もうしばらく、自宅待機するように言われている。

検査の網から漏れた人の中には、実際には感染していた人もいるだろうし、ましてや無症状であればそのまま普通に生活し、さらに感染を広げることにもなる。感染の実態がよく分からない日本で、外に出るのは本当に恐ろしいことだと思う。

自宅から、一日も早く終息の兆しがみえることを祈るばかりだ。

バナー写真 : PIXTA

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