南ア出身の双子の協力隊員が兵庫県朝来市をPR、休暇で訪れ自然に感銘
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2人は南アフリカで生まれ、いずれもヨハネスブルク大学で工業デザインを学んだ。幼少期に空手を習っていたことなどから日本に興味を持ち、2017年にそろって来日。兄のケビンさんは同県姫路市の中学校、弟のレハンさんは札幌市の高校で、それぞれ外国語指導助手(ALT)として働き始めた。
朝来市との出合いは、ケビンさんが休暇を利用して訪れたのがきっかけ。豊かな自然に感銘を受けたという。誘われて訪れたレハンさんもすっかり気に入り、一緒に協力隊に応募した。
サイクリングで案内
現在、ケビンさんは市の中央部を拠点とする「朝来地域自治協議会」で勤務し、神子畑(みこばた)選鉱場跡(同市佐嚢)の観光振興に取り組んでいる。大学で学んだ知識を生かして、これまでに4種類のグッズをデザイン。情報発信拠点「鉱石の道神子畑交流館『神選(しんせん)』」で販売している。
グッズの製作には、活動費で購入した3Dプリンターを活用する。代表的なグッズは、選鉱場跡をかたどった樹脂製の模型に磁石を貼り付けた「マグネット」と、選鉱後の泥水を分離する装置「シックナー」を模したプランター。選鉱場跡の上部から見たシックナーの上部に雑草が生えていたことに着想を得たという。今月からは木製グッズの販売も始めた。
活動は幅広く、現在、最も力を注ぐ企画が、市内の観光地を巡るサイクリングツアー。高校時代はサイクリングクラブに所属し、来日後のALT時代も淡路島を自転車で巡るほどの自転車好き。「自動車では味わうことができない自然と一体化した感覚が魅力」と話し、自転車の魅力を広めたい考えだ。
間もなくサイクリングコースも完成する。道の駅あさご(同市多々良木)を拠点に、多々良木ダム(同)までの約3キロで高低差が少ない「ママチャリコース」と、同選鉱場跡まで約10キロの「クロスバイクコース」の2種類。道中の自然や遺構などをケビンさんが案内しながら巡るという。
2022年にはレンタサイクル事業も始める予定だ。生野銀山や竹田城跡を目的地とするコースづくりにも意欲を燃やす。ケビンさんは「日本の山と川、田んぼのロケーションがサイクリングには良い。日本人だけではなく、将来は外国人をターゲットにしたい」と意気込む。
生野鉱山の宿舎をゲストハウスに
一方、朝来市の南部を拠点とする「いくの地域自治協議会」で活動するレハンさんは今年8月、同市生野町口銀谷にある旧生野鉱山職員宿舎(甲社宅)の9号棟と19号棟の2棟を利用してゲストハウス「生野ステイ」をオープンさせた。
生野鉱山の社宅は甲、乙、丙の3種類があり、甲社宅は幹部向け。9号棟は官営鉱山だった頃の1876(明治9)年に官舎として、19号棟は1896(同29)年に払い下げ先の三菱の社宅として建てられた。両棟とも市が将来的な宿泊事業の運営を想定して改修を終えており、ほぼそのまま利用できたという。
9号棟には「五右衛門風呂」が残るなど、レトロな暮らしが体験できるのが魅力。テレビなどの調度品も昭和期に使われていたものがそのまま展示され、「過去にタイムスリップしたような感覚を味わうことができるとして、来訪者の満足度も高い」とレハンさん。
趣味の写真撮影の腕を生かして、動画制作にも挑戦。初めて制作した生野ステイのPR動画は、動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開すると、2カ月で約4万回再生されるほど注目を浴びた。すでに他地域の観光地からも動画制作の依頼が複数届いているという。
レハンさんは、生野の魅力を「昔のままの街並みが残っていること」と話す。将来的には別の空き家も活用して「生野ステイ」としての宿泊事業を拡大させる計画。さらに「ケビンのサイクリングイベントと宿泊をセットにして売りたい」と兄弟のコラボレーション企画を目指している。
生野ステイは1人1泊8500円、2人では1万4500円(サービス料を除く)。予約サイト「airbnb(エアビーアンドビー)」で受け付けている。
記事・写真 竜門和諒
バナー写真:自転車を支えながら、神子畑選鉱場跡の前に立つケビンさん=朝来市佐嚢
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