坂本花織:演技の完成度で4回転ジャンプに対抗する日本女子フィギュアのエース 【北京五輪を彩る主役たち】

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激しい五輪代表争いが繰り広げられたフィギュアスケート女子にあって、国内外で他の選手を常に一歩リードする成績を残し、代表入りを果たした坂本花織。独自の道を進みながらステップアップし、いまや日本女子の主軸となった。2度目の大舞台へ向けて、視界は良好だ。

準備万端で臨む2度目の大舞台

坂本花織にとって、北京大会は平昌大会に続き2度目のオリンピックとなる。21歳となって臨む大舞台は、以前とは意識の持ちようが大きく異なる。

「平昌はただがむしゃらにやっていただけで、今回はしっかり目標に取り組んできました」

高校2年生で出場した4年前の五輪は、ジュニアからシニアに上がって1年目だった。本人も語る通り、年長で実績のあるスケーターたちを必死に追いかけ、結果としてつかんだ五輪の舞台で個人6位入賞を果たした。それから4年、不振にあえいだ時期もあったが、オリンピック出場をしっかりと見据えて日々を重ね、「エース」と呼ばれるまでに成長を遂げた。

今シーズンの実績がそれを裏付ける。グランプリシリーズではNHK杯で優勝するなど好成績を挙げて、日本女子ではただ一人、シリーズ上位6名だけが出場できるグランプリファイナル進出を決めた。昨年末の全日本選手権でも2位以下に大差をつけて3年ぶりの優勝を果たした。

坂本はある意味、異色の存在と言っていいかもしれない。女子フィギュアはロシア勢を筆頭に、4回転ジャンプやトリプルアクセルなど高難度のジャンプを追求する流れにあり、日本でもベテランから若手まで、多くのスケーターがそれらに取り組んでいる。だが、坂本はトリプルアクセルも4回転ジャンプも意図的にプログラムに入れず、シーズンを過ごしてきた。その理由は、プログラムの完成度を高めることを優先したからだ。

4回転ジャンプに対抗するために

いくら高難度のジャンプにチャレンジしても、失敗するなら意味はない。また、難しいジャンプをプログラムに取り入れると、そこに意識が向いてしまい、ステップや表現などがおろそかになりかねない。

フィギュアスケートはジャンプやスピンなど技の出来がよければ「できばえ点」が加点され、表現面を捉える「演技構成点」も失敗のない方が高くなりやすい。それも考慮すれば、むしろできることの精度を高めることが成績に結び付くのではないか――そんな考えが背景にあった。その成果が今シーズンの結果に表れている。

むろん、高難度のジャンプがないため、フリープログラムで4回転ジャンプを複数本取り入れるロシアの3選手と競うのは容易ではない。だが、ロシア勢の一角が崩れれば、オリンピック出場選手の中では4番手と言える力を持つ坂本が浮上することになる。6位入賞した平昌大会をはじめ、大舞台で力を出せる精神的な強さもある。

開幕までの残りの時間でさらに精度を高め、坂本は北京に挑む。2度目の大舞台で、これまで貫いてきた自分のスケートを披露できれば、メダル獲得も決して夢物語ではない。

バナー写真:優勝した2021年のNHK杯で女子フリーの演技をする坂本(2021年11月13日、東京・国立代々木競技場)時事

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