男子競歩・川野将虎─東京五輪の教訓を胸に挑む頂点 【東京2025世界陸上 注目の日本選手】

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9月13日から9日間にわたり東京・国立競技場で開かれる陸上の世界選手権(世界陸上)。トップ選手が国内にひしめく競歩で、世界記録を出して出場切符を得た川野将虎(旭化成)には、初の金メダル獲得へ期待も大きい。

世界トップレベルの実力

川野には苦い思い出がある。2021年8月6日、涼しいはずの札幌が舞台となった東京五輪の50キロレースで、熱中症とみられるアクシデントに見舞われたからだ。午前5時半開始だったが、41キロ付近で路上に倒れ、コース脇に嘔吐(おうと)。それでも最後まで粘り強く歩き続け、日本勢最高の6位に食い込んだ。

50キロは21年の東京五輪を最後に廃止となり、22年に35キロという新たな種目が創設された。世界陸上での35キロの実施は今回が3度目で、川野は3大会連続でこの距離に挑む。

川野は昨年10月、山形県高畠町で行われた日本選手権35キロ競歩で2時間21分47秒をマーク。この種目の世界記録認定基準2時間22分を初めて突破し、初代世界記録保持者に認定された。日本陸連が定めた世界選手権への派遣設定記録(2時間26分00秒)も突破。世界トップレベルの実力を証明して、日本代表に即時内定した。

世界記録を樹立した後、川野はこんな話をしている。

「世界陸上の代表権をつかめたが、これはゴールではなく、スタートラインにようやく立てたものだと思っている。ハイペースになっても対応できるような準備をしてきたので、その練習の成果を発揮できた。今までやってきたことが実ってよかった」

世界のトップ選手もレベルを上げている。今年3月にはエバン・ダンフィー(カナダ)が川野の世界記録を7秒更新し、その2カ月後には、東京五輪20キロ競歩の金メダリスト、マッシモ・スタノ(イタリア)が 2時間20分43秒とさらに記録を塗り替えた。

カギ握る暑熱対策

世界陸上では2022年大会(米オレゴン)で銀メダル、23年大会(ハンガリー・ブダペスト)で銅メダルだった川野。昨年のパリ五輪でこの種目は実施されず、男女混合リレーに岡田久美子(富士通)と組んで出場したが、8位に終わった。自国開催となる今回の世界陸上に向けて、「スタートラインに立てた」と話すのは、世界の強豪と戦う厳しさを肌で知っているからだろう。

男女同時に行われる35キロ競歩は大会初日の9月13日、午前8時に号砲が鳴る。東京五輪と時期は約1カ月異なるが、まだ厳しい暑さが残る。暑熱対策に余念がない日本競歩陣。川野も4年前の教訓を胸に、世界の頂点を狙い定める。

選手data

  • 生年月日:1998年10月23日
  • 出身地:宮崎県
  • 主な成績:
    2024年 日本選手権35キロ 世界記録
    2023年 ブダペスト世界陸上35キロ 銅メダル
    2022年 オレゴン世界陸上35キロ 銀メダル
    2021年 東京五輪50キロ 6位

バナー写真:2024年10月、日本選手権35キロ競歩で世界記録をマークして優勝した川野将虎=山形県高畠町(共同)

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