Perfume 2026年から活動休止:世界中を魅了した魅力とは
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グループ名の由来はメンバーに共通する「香」から
Perfumeは、樫野有香(かしゆか)、西脇綾香(あ〜ちゃん)、大本彩乃(のっち)からなる同級生3⼈組。芸能養成学校であるアクターズスクール広島に通うかしゆか、あ〜ちゃんが、当初は河島佑香と組み1999年に結成した。グループ名は3人の名前全てに「香」の字がついたことにちなんでいる。しかし河島は脱退、のっちが加わった2001年に現在のメンバーになった。ちなみに、3人はアクターズスクール広島の1期生だが、同校は非常に多くの芸能人を輩出。BABYMETALのSU-METAL(中元すず香)もここで学んだ一人だ。
翌02年、3人は「ぱふゅ〜む」名義で初のCDをリリース。地方で活動するローカル・アイドルに注目が集まり始めた2003年には上京を果たし、グループ名の表記をPerfumeと改めた後にシングル「スウィートドーナッツ」をリリースした。この曲で作曲、アレンジ、プロデュースを務めた中田ヤスタカが、以降Perfumeの全楽曲を手がけることになる(この後すぐ作詞も全て彼が手がけるように)。
音楽家・中田ヤスタカ氏がプロデュース
Perfumeの魅力、一番はなんといっても曲そのものの良さ、おもしろさだ。3人にテクノポップを歌わせ、そのつくり手として中田ヤスタカを抜擢したPerfumeチームの慧眼(けいがん)はすごい。2003年当時はそれほどに、一般的にはテクノポップははやりではなかった。ところがその3、4年後、2000年代後半には世界中で、テクノポップも含むEDM(エレクトロ・ダンス・ミュージック)のブームが巻き起こる。そうしてPerfumeの音楽は一躍、シーンの最先端になった。
キャリアの前期に顕著だったボーカル・エフェクトのユニークさも特筆ものだ。05年から世界的なはやりとなった歌声の加工を、国内で誰よりもウマく用いたのが中田で、そうして生まれたのが大ヒット「ポリリズム」だった。歌声を加工されること、また「抑揚を抑えて歌って」といった中田の指示に、メンバーは最初、猛反発したという。しかし、中田の「全ては曲のクオリティーのため」という思いを徐々に理解した3人は、彼との二人三脚でアイドルの在り方を覆すような楽曲至上主義の作品づくりに邁進(まいしん)していく。

「第53回ベストドレッサー賞」芸能部門を受賞したPerfume=2024年11月27日、東京都内で(共同)
未来的なイメージや抽象度の高い言葉の中からも、3人のキャラクターが伝わってくる独自の歌詞世界も、Perfumeを語る上で外せないもの。男女の恋愛にとどまらない、もっと大きな愛を描いた歌詞は、彼女たちと同世代、さらにはその下のZ世代の多くが共感を覚える清廉・誠実さが特に印象的。とても純粋でナイーブな心情を優しく歌う様を聴いていると、よく言われるサウンドのみならず、歌詞の面でもイエロー・マジック・オーケストラ(YMO)に始まる日本型テクノポップを正しく継承しているのがPerfumeだと理解できる。
MIKIKOが振り付けるダンスにも注目
全て中田ヤスタカとのタッグでつくられるが故に、稀有(けう)なまでの統一性にあふれるPerfumeの曲。統一性は、Perfumeを言い表す際に欠かせないキーワードだ。ほぼ全曲の振り付けをMIKIKOが手がける3人のダンスもまた、統一性にあふれている。メンバー3人とはPerfume結成以前からの付き合いとなるMIKIKOにしか出来ない振り付けは、それまでになく独創的かつ目を引くもので、当初から注目を集めた。動画共有サイトの広まりとともに、アーティストのダンスをコピーしてみせる「踊ってみた」動画が10〜20代の間で大流行したが、このムーブメントにおいてもPerfume人気は絶大で、ダンスがトレードマークとなるアーティストの先駆けと言える存在にもなった。彼女たちは驚くほどにさまざまな面で時代を捉えたのだ。
映像クリエイターの関和亮が多くを手がけ、一貫してディレクションを行ってきたジャケット、ミュージックビデオ(MV)をはじめとしたビジュアル面。特に真鍋大度率いるライゾマティクスとチームアップした2018年以降、最先端テクノロジーの活用で独創性を高めたステージ演出面。やはり統一性の高いこの両面もPerfumeの大きな魅力。「ライブが活動の中心」と公言してきた3人だが、ライブDVD・ブルーレイの売り上げも国内トップクラス。「Perfumeのライブは一つ一つが価値ある作品」としてファンに捉えられている証しだろう。またビジュアル面、ステージ演出面も含めたジャパニメーション(日本産アニメ)、ジャパン・テクノロジー神話などとの近似性が、海外での人気を後押ししている点も記しておきたい。
髪型や衣装へのストイックなこだわり
「成功して覚えてもらうまで変えない」と髪型を、メンバーそれぞれでミニスカート、ワンピース、ショートパンツと決めた服装を、ブレイクしてからも変えなかったこともグループの統一性を強く印象付けてきた。3人の、Perfumeのメンバーであることに徹してきたストイックさ。自分のことよりチームを優先する在り方は、特にアーティストとしては欧米ではあり得ないほどだ。
ところが3人個々に触れると、グループが発するイメージとはまた違うパーソナリティーであることも「ギャップ萌え」要素となって、ファンを魅了する。ライブのMCやインタビューの場では、飾らずに、時には毒舌と評されるほど気持ちをそのままに表す3人。表裏のない、とにかく正直でファンへの誠意にあふれる彼女たちのキャラクターは、日本で、世界中で多くの人を虜(とりこ)にしてきた。Perfumeはさまざまな奇跡の上に成り立つグループだが、今のメンバー3人が集ったことがもちろん何よりの奇跡だろう。
25年間で世界の大型フェスに相次ぎ出演
2005年にシングル「リニアモーターガール」でメジャー・デビューすると、07年にシングル「ポリリズム」でブレイク。同年8月には大規模音楽フェス『サマーソニック07』で観客を魅了し、ロック・フェスへのアイドル出演の先鞭(せんべん)をつけた。08年には日本武道館、10年には東京ドームでの単独公演を成功させ、12年には初の海外単独ツアーを台湾、香港、韓国、シンガポールで開催。以降、アジア、欧州、北米でツアーを数回開催。15年には米テキサス州オースティンで開かれた音楽やテクノロジーの祭典『SXSW (サウス・バイ・サウスウェスト)2015』でヘッドライナーを務め、19年には米国の大型音楽イベント『コーチェラ』に日本人女性アーティストとして初登場、23年にはスペイン・バルセロナで開かれる音楽フェス『プリマベーラ』に招聘(しょうへい)されるなど、海外の主要音楽フェスにも出演した。女性グループとしてはまさに前人未到、これ以上ない成功を積み重ねた25年間だった。

11月11日に一般男性との結婚を発表した「あ~ちゃん」こと西脇綾香=2024年4月25日、東京都渋谷区で(時事)
活動休止を発表した2日後の9月23日、東京ドームでのライブでファンにしばしの別れを告げた3人。活動再開については全てが未定とされるが、休息期間は3人で一生グループを続けるためのものという彼女たちの言葉もあり、Perfumeという奇跡の続きを楽しめる日はきっとやってくるはずだ。数年後、AIをはじめとしたテクノロジーがさらに進化しているだろう世界で、これまで以上の楽しみや驚きでPerfumeチームは魅せてくれるに違いない。他ならぬ、かしゆか、あ〜ちゃん、のっちの3人が、誰よりもそれを望んでいるはずだから。
バナー写真:Perfumeの(左から)かしゆか、あ~ちゃん、のっち=2024年4月25日、東京都渋谷区で(時事)