坂本花織、集大成へ万端:フィギュア強国・日本が狙う「金」+複数表彰台【ミラノ・コルティナ五輪 期待の星たち】

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2月6日に幕を開けるミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪に向け、日本のフィギュアスケート陣は、女子の坂本花織(シスメックス)、男子の鍵山優真(オリエンタルバイオ・中京大)、ペアの三浦璃来・木原龍一組(木下グループ)らメダル候補が出場する。2022年の北京冬季五輪でのメダル、銀2個、銅2個を超えることはできるのか。フィギュア強国・日本は本領発揮を目指す。

世界をけん引する日本チーム

北京五輪後の世界選手権4大会では、女子の坂本の3連覇や、ペアの三浦・木原の優勝2回など計14個のメダルを獲得した日本。フィギュア界では、世界をけん引する国のひとつとしての地位を築いた。

フィギュアのミラノ・コルティナ五輪代表選手。(前例左から)男子の三浦佳生、佐藤駿、鍵山優真、女子の坂本花織、中井亜美、千葉百音。(後列左から)ペアの木原龍一、三浦璃来、森口澄士、長岡柚奈、アイスダンスの吉田唄菜、森田真沙也組=2025年12月21日、東京・国立代々木競技場(時事)
フィギュアのミラノ・コルティナ五輪代表選手。(前例左から)男子の三浦佳生、佐藤駿、鍵山優真、女子の坂本花織、中井亜美、千葉百音。(後列左から)ペアの木原龍一、三浦璃来、森口澄士、長岡柚奈、アイスダンスの吉田唄菜、森田真沙也組=2025年12月21日、東京・国立代々木競技場(時事)

坂本「銀以上」へミス封印

女子のエース・坂本は、北京五輪の3位以降、安定した結果を残しつつ、新たなジャンルの曲や表現に挑戦してきた。だが現役ラストシーズンと明言した今季は、「伸びのあるスケーティングやパワフルなスピード感をプログラムの中で出していきたい」と、本来の“坂本らしさ”で勝負することを決めた。 北京の個人は銅、団体は繰り上がりの銀。だからこそ「正真正銘の銀が欲しい」と、個人と団体での銀メダル以上を目標にしている。

今季の直前まで大技トリプルアクセルの練習もしていた。だが、今はこれまでのスタイルでの勝負に集中している。高難度ジャンプを武器にする選手が増えてきたものの、坂本は「跳べないなら跳べないなりのやり方がある」と振り付けのブノワ・リショー氏からの教えを心に刻む。徐々に得点も上がり、勝てることが多くなったことで吹っ切れた。

五輪には、ロシア選手権3連覇中のアデリナ・ペトロシアンが中立国枠で出場する見通し。ペトロシアンは4回転ルッツと4回転トーループ、トリプルアクセルの高難度技を持つ。「他の選手が大技を跳んできても、いかに表彰台に乗るチャンスを自分で残しておくか。できるもののクオリティを上げ、ミスは絶対にしないで勝てる位置にいつも付けていればいけるかなと思うようになったのは、世界選手権も含めて全勝した2023~24年シーズンから」と坂本は振り返る。

今季、始動を遅らせた。初戦となったチャレンジャー・シリーズとフランスでのグランプリ(GP)シリーズ第1戦は、ともに2位。だが、「意味のある2位だった」と話すように、敗因のスピンのミスを修正し、次のNHK杯では今季公認世界最高の227.18点で優勝した。

「GPシリーズでは最初から220点台を出して、どんどん加速できるような試合が、続けてできている。以前のように『ここからもう1回頑張って』というのではなく、今は『この波に乗って行こう』という感じです」と手応えを語っている。

GPファイナルでは、ショートプログラム(SP)で想定外のミスが出て優勝を逃す3位となったが、その悔しさをばねに全日本選手権では、合計を234.36点にして優勝。課題の3回転ルッツの「出来栄え点(GOE)」で加点を伸ばせないわずかなミスがありながらも、勝負強さを見せた。

五輪本番では、ロシアのペトロシアンに加え、昨季に競技復帰していきなり世界選手権を制したアリサ・リウ(米国)との優勝争いになる。

全日本選手権の優勝で五輪代表に内定した瞬間は「五輪のことより、『これが最後の全日本だな』という気持ちが先に出てしまった」と苦笑する坂本だが、これまで大舞台で競り勝った経験は豊富だ。「自分のやるべきことを完璧にやり切れば結果は付いてくる」と、戦う準備はできている。

日本の女子選手は他に2人。中井亜美は今季、トリプルアクセルを武器にGPシリーズ初出場のフランス大会で227.08点を出し、坂本を破る衝撃的な優勝デビューを果たした。大舞台でフランス大会のような演技ができればメダル争いに食い込めるだろう。安定感が武器の千葉百音も、220点台中盤を出すポテンシャルを持っているだけに、力を出し切ればメダル争いに加わる可能性は持っている。

鍵山にエースの自覚

前回の北京五輪では日本人最高の銀メダルを獲得した鍵山。そのメダルは当時、日本男子の主力、羽生結弦や宇野昌磨がいる中で手にした価値あるものだった。

左足首のけがを経た2022~24年の2シーズンは高難度ジャンプを控えめにした。難度ではなく質、つまりプログラムの完成度を高める場にしてきたのだ。一方、海外のライバルは、4回転アクセルを含む全種類の4回転を跳ぶイリア・マリニン(米国)が急激な進化を見せている。

厳しい環境の中でも世界選手権では初出場の22年以来、4大会連続で表彰台に上り、資質の高さを見せ続けた。ミラノ五輪は、日本のエースの力を証明する大会になる。

フィギュアGP ファイナルの男子ショートプログラム(SP)で演技する鍵山優真=2025年12月4日、愛知・IGアリーナ(時事)
フィギュアGP ファイナルの男子ショートプログラム(SP)で演技する鍵山優真=2025年12月4日、愛知・IGアリーナ(時事)

羽生、宇野の引退後の24~25年シーズンからは、日本男子のけん引役と目されるようになった。本人も「エースはこうであるべきだ。こうでなければいけない」という思いから、重圧も感じ始めた。

その象徴ともなった大会が、世界選手権だった。SPはマリニンに3.32点差の2位発進をしながら、フリー(FS)では4回転でミスを連発して10位と崩れ、合計は278.19点で3位に終わった。「僕が直接見てきた日本のエースは羽生君と(宇野)昌磨君。2人はそれぞれにスタイルは違っていた。僕は僕で自然体でいるのが一番大事というか、それが自分のパフォーマンスでも強みになると思う。自分は自分らしく、やってきたことを出すというのがすごく大事なのかなと思います」

自己最高の滑りへ

今季前半に目指したのは、自身のベースをより強くするためにFSでは4回転をトーループ2本とサルコウのみに限定。計300点台に早く乗せ、そこから北京五輪で出した自己最高の310.05点にいかに近付けるかだった。

昨年11月のGPシリーズ初戦から全日本選手権まで中1週間での4連戦。鍵山は当初、第1段階の目標の300点台の達成も難しかったが、12月のGPファイナルではSPで自己最高の108.77点を出し、合計は302.41点で銀メダル。最低限の目標はクリアした。

続く全日本選手権はSP104.27点と目標に近付きながら、FSでは中盤でミスが重なり287.95点。得点を伸ばせなかった。それでも国内1位で五輪代表の座を手にし、気持ちを切り替えている。

「フリーに4回転フリップを入れたいという気持ちはすごく強いが、1カ月でなじむかどうかというところ。とにかくフリップに限らずどのエレメンツも、ショートもフリーも全力で。日々後悔しないような生活を送って五輪という舞台を全力で楽しみたい」

メダル獲得のボーダーラインは300点台と位置づけている。「それは絶対条件で、自己ベストを出したい。そうすれば自然に結果は付いて来るし、良い成績も付いて来る。自分に負けまくってきた年だし、反省は十分してきたつもりなのでそこを五輪で生かしたい」

五輪の男子代表には他に、小学生の頃から共に鍛錬してきた、佐藤駿(エームサービス・明大)と三浦佳生(オリエンタルバイオ・明大)がいる。同学年の佐藤は今季になってメダルを狙える力を付け、三浦も貴重なムードメーカー。仲の良いメンバーとリラックスした雰囲気で2回目の五輪に臨めるようになったのは大きい。

これまでの大会は、次への「何か」が懸かった試合が多かった。だが次のミラノ五輪はその場の勝負の天王山だ。マリニンの強さは別格だが、攻めの姿勢に徹することができれば結果は付いてくるはず。鍵山は「前回の銀メダルを守るというよりは、勝ちを求めて攻めに徹したい」と明言する。

「りくりゅう」ペアは金メダル候補筆頭

ペアに出場する「りくりゅう」こと三浦と木原。7位だった前回北京五輪の1カ月後、ロシア勢など上位5組が出場しなかった世界選手権では2位と、自分たちのポジションをしっかり確定した。その翌年は得点も一気に伸ばし、世界選手権を初制覇。それぞれのけがもあったものの、2024年は2位、25年は優勝と安定した結果を残してきた。

フィギュアの全日本選手権ペアのショートプログラム(SP)で演技する三浦璃来(左)、木原龍一組=2025年12月20日、東京・国立代々木競技場(時事)
フィギュアの全日本選手権ペアのショートプログラム(SP)で演技する三浦璃来(左)、木原龍一組=2025年12月20日、東京・国立代々木競技場(時事)

「夏場は拠点のカナダでじっくり腰を据えて準備ができた」との言葉通り、国際大会初戦だった9月のチャレンジャー・シリーズでは、昨シーズンの世界選手権の得点を3点強上回る222・94点でシーズンイン。絶好のスタートを切った。

GPシリーズも、ファイナルに連勝で進出。その舞台ではスピード感と力強さがあふれる滑りを披露し、FSは自己最高得点をマーク。合計は自己最高まで0.84点の225.21点と、今季世界最高で優勝した。

全日本選手権は直前の6分間練習で三浦が左肩を脱臼しながらも、SPでは84.91点で1位発進した。FSは大事を取って棄権したが、過去にも同じけがを経験しているだけに対処の仕方はわかっている。今季はさらに安定感が増し、しっかり準備できれば優勝候補筆頭になる。最終予選で五輪出場権を勝ち取ったペア2組目の長岡柚奈・森口澄士組(木下アカデミー)も今季は急成長しており、入賞に肉薄したい。

バナー写真:フィギュアの全日本選手権で女子フリーで演技する坂本花織。国内トップに着け、五輪メダルへの足掛かりとした=2025年12月21日、東京・国立代々木競技場(時事)

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