再び頂点に狙いを定める「王者」小林陵侑─スキージャンプ、女子は丸山希に注目【ミラノ・コルティナ五輪 期待の星たち】
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技術に裏打ちされた飛躍
小林の強さを支えているのは身体能力の高さと、群を抜く再現能力だ。
助走路は重心を安定させたポジションで滑り、踏み切りではジャンプ台に確実に力を伝えて力強く飛び出す。さらに空中では助走のスピードを減速させない姿勢をキープ。落下し始めてからはスキーの下面を極力ランディングバーン(着地後の滑走路部分)に向けて平行に近づけ、浮力を得て飛距離を伸ばす。着地も余裕を持って両手を広げ、左右のスキーを前後させるテレマーク姿勢をきっちり決めて高い飛型点を獲得する。高い技術に裏打ちされたお手本ともいえるジャンプだ。
ワールドカップ(W杯)札幌大会から一夜明けた1月19日、東京都内で五輪に向けた記者会見に臨んだ小林は、「五輪という場でビッグフライトを見せて会場を沸かせるという目標でやっている。そうすればおのずとメダルもついてくる」と語った。
抜群の安定感 北京で金と銀
高校卒業後1年目の2016年1月にW杯で国際舞台にデビュー。世界に「RYOYU」の名を響かせたのは18~19年。ドイツとオーストリア4会場のジャンプ週間で歴代3人目となる4連勝を達成し、W杯でも13勝を挙げて欧州勢以外では史上初の総合優勝を果たした。
その後も抜群の安定感で、22年北京五輪ではノーマルヒルで金メダル、ラージヒルは銀メダル。1998年長野五輪の船木和喜以来の個人戦メダル2個を獲得した。
結果を積み重ねるたび、精神力が高まっていくのも小林の強みだ。ジャンプ競技は、各地のジャンプ台の形状や雪質、気象条件や選手の体の状態など試合の度に異なる条件の下で競技に臨む。試合中も風などは刻々と変化し、その影響が勝敗を分けることも少なくない。選手やコーチは常に異なる時々の条件を読みながら、細心の注意を払って調整に努める。
道具のレギュレーション(規定)は毎年変わるため、それを使いこなさなければならず、精神的なストレスも大きい。微妙な感覚のズレに気が付き修正しようとするが、その意識で逆にギャップを広げて崩れてしまう選手は多い。その感覚のズレを広げ過ぎないようにできるのが、安定した結果を出せる選手の能力だ。
19日の会見では「ジャンプはすごく難しい競技、その日どんなことが起こるか分からない。最大のライバルは自分自身。自分のパフォーマンス、もしくはそれ以上ができたらメダルのチャンスがある」と述べている。
小林の調整能力の高さを知ることができる場面があった。昨年2月末のノルウェー・トロンヘイムの世界選手権。小林はW杯開幕から助走が安定せず出遅れたシーズンで、総合順位は11位に付けていた。直前のW杯札幌大会で連勝したが、これまで5位以内を確保していた小林には不本意なポジションだった。
世界選手権の前半は雨で助走路が不安定だった。最初のノーマルヒル予選で13位だった小林は、「明日は明日の風が吹きます」とおおらかな表情を見せ、本戦はヒルサイズ(102メートル)超えを2本そろえて順位を7位まで上げた。
ラージヒルでは、予選でヒルサイズを2メートル上回る140メートルを飛び、1位に0・4点差の2位と復調した。本戦では135メートルと137.5メートルで3位。調整能力の高さを見せた。
1月中旬 W杯総合2位
小林は今季のW杯は、1月中旬の札幌大会を終え、優勝2回、2位2回、3位3回と全戦でトップ10を外さず、総合2位につけている。
1月中旬の札幌大会(計2戦)では、第1戦こそ5位だったが、第2戦は予選を2位通過、本戦1本目は向かい風が弱まった中で2位につけた。2本目は全体1位の138.5メートルを飛び、最終的には今季9勝のドメン・プレブツ(スロベニア)に迫る2位に付けた。「条件によってはワンチャン(勝機が)あるかなと思ったので、すごくワクワクして飛んだ」と話す。
作山憲斗ヘッドコーチは「昨日(第1戦)はテークオフにうまくつながらない助走姿勢だったが、今日はそこを陸上トレーニングから修正し、本番ではイメージ通りのジャンプを出せた。特に2本目はかなりいい状態のジャンプだった」と話すように高い修正能力も見せ、優勝争いのレベルで戦っていることを証明した。

ノルディックスキーのワールドカップ(W杯)ジャンプ男子個人第18戦。表彰台に立った2位の小林陵侑(左)。中央は優勝したドメン・プレブツ(スロベニア)=2026年1月18日、札幌市大倉山ジャンプ競技場(時事)
自然体で臨む3回目の五輪
力が接近すればするほど、大会期間中の諸条件に結果が大きく左右される。それを熟知しているからこそ、小林は平昌、北京に続く3回目の五輪へ向けても気負うことなく自然体で臨もうとしている。
前回の北京に続く五輪メダルへの意欲を質問されると、「大きい大会だというのはわかっているけど、そんなに金メダルにはこだわっていない。ビッグジャンプを見せたいと思うだけですね。みんな金を狙っているが、取れるのは一人だけ。4年に1度だし、テレビの地上波で放映する唯一の世界大会なので良いパフォーマンスを見せたいですね」とリラックスした表情で話す。
今季の世界の勢力図を見れば、昨季W杯総合を3位まで独占したオーストリア勢はまだ3勝のみで、総合も4位が最高と少し元気がなく、地元開催の世界選手権でジャンプスーツ違反が問題となったノルウェー勢も未勝利で14位が最高と低迷している。
その中で小林はプレブツとともに五輪の優勝候補最有力選手に挙げられる。
日本男子チームにとっての期待は小林だけではない。24歳の二階堂蓮(日本ビール)が、W杯第5戦で初の表彰台となる2位に入り、第15戦のジャンプ週間インスブルック大会では初優勝。W杯総合では上位につけて表彰台圏内にいる。「今季は自信もあったし、結果が出るようになってからは去年のような、張り切りすぎての失敗もなくなり余裕を持って試合に臨めるようになった」と話す。
2人1組で争う「スーパー団体」にも期待
今大会から出場選手の総数削減のために各国の出場枠上限は4枠となり、日本は3枠獲得にとどまった。これまで4人で出場した団体は、今回から2人が3本ずつ飛ぶスーパー団体になる。小林と二階堂を擁する日本は優位に立っており、総合1位のプレブツと5位のアンジェ・ラニセクがいるスロベニアや、好選手がそろうオーストリアとの優勝争いになりそうだ。
さらに女子も、今季のサマーグランプリで総合優勝した丸山希が冬に入っても好調を維持。W杯開幕戦から勝利を積み重ね、総合では1月に3戦連続8位で1位をニカ・プレブツ(スロベニア)に譲ったが、2戦休んだ後は表彰台に復帰。蔵王大会第1戦は圧勝と、メダル圏内を維持している。また高梨沙羅(クラレ)も1桁順位には安定して入っており、男女2人ずつで戦う混合団体でもメダルの可能性は高く、スロベニアとの優勝争いが注目されそうだ。

ノルディックスキー・ジャンプ女子のW杯蔵王大会の前日会見で撮影に応じる丸山希(左)と高梨沙羅=2026年1月19日、山形市(時事)
バナー写真:ノルディックスキーのW杯ジャンプ男子個人第18戦。小林陵侑の1回目の飛躍=2026年1月18日、札幌市大倉山ジャンプ競技場(時事)