eスポーツ、アジア大会で2度目の正式競技:「愛知・名古屋」の先にある未来は
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「ぷよぷよ」「ポケモン」日本発のタイトルも
アジア大会がeスポーツを初めて公開競技としたのは2018年のジャカルタ・パレンバン大会。23年の中国・杭州大会で公式メダル種目となり、愛知・名古屋大会では前回を上回る11種目13タイトルを実施する。今回は「ストリートファイター6」「鉄拳8」「ぷよぷよeスポーツ」「グランツーリスモ7」「eフットボール」「ポケモンユナイト」など日本企業関連のタイトルが多く、開催国のゲーム産業の存在感を反映したラインアップとなった。日本は7種目9タイトルに代表選手25人を派遣する。

杭州アジア大会でeスポーツをプレーする選手たち=2023年9月、中国・杭州(時事)
ゲームとの違いは競技性の有無だ。明確なルールの下で競い合って勝敗が付けられるものがeスポーツとされる。シューティングや戦略を立てて陣地を攻撃するRTS・MOBA、格闘、一般スポーツ、パズルや音楽ものなどがある。
eスポーツは、画面を通して対戦するため身体を鍛えて競う運動のイメージから遠く、「スポーツではないのでは」との疑問が投げ掛けられている。ただ一般スポーツもeスポーツも、反射神経や判断力を用い、練習による技術向上やチーム戦での戦略、駆け引きなどがある点では共通点も多い。
「Sports」にはそもそも「娯楽、競技(会)」などの意味があり、日本語の「運動」という意味だけでは捉えられない共通性もある。
東京都北区のトップ選手向け施設・ナショナルトレセンにはeスポーツの競技力向上を目的に「HPSC ESPORTS LAB」が開設され、バックアップ体制が整いつつある。日本は世界最大の市場ではないが、ゲームキャラを生み出す力、格闘ゲームを中心とした競技文化、大規模大会の集客力、国による体制強化など多方面で存在感を放っている。
権利はゲーム会社、公共性に配慮
eスポーツを競技として捉えた時にまず懸念されるのが、誰もが同じ条件で競い合える公共性だとされる。
ゲームはメーカーが著作権を持ち、利用上の決定権を持つ。確かに一般の大会や配信などではメーカーの意向によって、運営上のレギュレーション(取り決め)やガイドラインなどを決めることがある。この点を、商業性から離れ、公平性を重視する国際大会でどう成立させるかが論点になる。
アジア大会のような大規模な大会では、どの選手も平等なプレー環境になるよう細心の注意を払った調整が重視される。そもそもゲームは販売戦略上、国籍や政治的立場からの独立性が強く、国境を越えて楽しめる設定となっていることが多い。オンラインで世界のどこからでも近い条件で参加できる「デジタル由来のフラットな公平性」を備えているのだ。
既存スポーツでは、参加国・地域間の公平性を保つため第3国の審判を採用することが多いが、eスポーツの舞台となるゲームは判定の多くをコンピューターが処理するため、誤審や判定を巡る疑惑は生じにくい。実は、誰もが公平に参加し順位を競うという公共性においては、eスポーツは既存スポーツの先を行っている部分もある。
ただ、今大会の代表選考では疑問も呈された。「ストリートファイター6」など格闘ゲームの団体戦では、基準となる大会で好成績を残した選手がアジアeスポーツエキスポのトーナメントに出場し、優勝者を代表にしたため分かりやすかったが、「ポケモンユナイト」や「IdentityV 第五人格」は選考基準に「パフォーマンスや試合内容を総合的に考慮」との主観的な表現が入り、あいまいさが残った。だが、こうした問題は、既存スポーツにも共通するものだ。

世界各地を結んで開催されたオリンピック・バーチャルシリーズ=東京、2021年6月(筆者撮影)
タイトル可変、継続性が課題
もう1つの論点が継続性だ。多くの人が長期間にわたって楽しめるかどうか、という視点であろう。
ゲームは、メーカーの事情でサービス終了や続編への移行が発生し、大会によっては採用タイトルが同じジャンルの別ゲームに代わることがある。
ソフトを常にバージョンアップしていくゲームの性格上、現実に起きてしまう問題だ。このため選手自身も活動の場が同じジャンルの別ゲームに移ることがある。例えば格闘ゲームの「ストリートファイター6」には、同じジャンルの「バーチャファイター」や「ギルティギア」シリーズなど別タイトルの強豪が移ってきている。
タイトルが異なるため、選手には苦労も伴うが、eスポーツ採用のゲームタイトルは格闘、カーレースなどのジャンルや分野が確立されており、それぞれ一定のプレー層も存在する。分野内でタイトルが変わっても、一定程度競える環境は保たれている。
既存スポーツでも基準変更により、従来の強豪が苦しむニュースは珍しくなく、競技環境の変化への対応はeスポーツだけの問題ではないだろう。
大会運営側の都合でタイトルが変更になることもある。アジア大会では、杭州大会は7タイトルだったが、愛知・名古屋大会では11種目13タイトルに拡大。採用タイトルも大幅に入れ替わった。このため「連続優勝」などの称号が付けにくいという問題もある。

アジア競技大会に採用されている『ポケモンユナイト』=横浜市、2026年3月(筆者撮影)
年齢や障害を越えて参戦
eスポーツに対し、「ゲーム愛好家の特殊なもの」というイメージを抱くかもしれない。だが、ゲームであるからこそ、老若男女や障害による影響を小さくしてプレーできる幅広さがあることを知ってほしい。
愛知・名古屋アジア大会の「ぷよぷよeスポーツ」の日本代表、栗原悠輝(ゆうき)選手は11歳の小学生だ。JESU(日本eスポーツ協会)のプロライセンスを持つプロゲーマーで、成人選手と堂々と渡り合い代表の座をつかんだ。一方、対戦格闘・団体戦の「ザ・キング・オブ・ファイターズ XV」代表の澤田彰仁(SCORE)選手は42歳のベテランだ。
このように身体能力や体格による影響が小さく、幅広い人が参加できるという点にこそeスポーツの普遍的な価値がある。

アジア競技大会の日本代表会見に登壇したゆうき選手こと栗原悠輝選手。初出場への緊張を表明しつつ日本代表として力を尽くすことを表明した=2026年8月(筆者撮影)
大会の成功続く
eスポーツは今、成長が続いている。
戦略ゲーム「リーグ・オブ・レジェンド」の世界大会Worldsの24年大会では、決勝戦の最高同時視聴者数が全世界で5000万人を超えた。Esports World Cupは、26年は中東情勢により固定開催地のサウジアラビアではなくパリで実施。フランスへの経済効果は約6億ユーロ(約1070億円)と見込まれた。
日本でも25年からシューティングゲーム「エーペックスレジェンズ」の世界大会が札幌市で開かれ、26年は4日間で3万8000枚を越えるチケットを販売した。「ストリートファイター6」は25年から毎年、東京・両国国技館で年間チャンピオンを決めるCAPCOM CUPを開催。優勝賞金100万ドル(約1億5300万円)と高額であることも相まって注目が集まる。入場チケットは安いもので2000~3000円、高いと1万円を超え、ライブや演劇の相場に比べても引けを取らない。
eスポーツは、既存スポーツに頼らず単独でも世界規模の大会を成功させ、集客や視聴者数、経済効果においても肩を並べるほどになった。

札幌ドームで開かれた人気ゲーム「エーペックスレジェンズ」のeスポーツ大会=2025年1月、札幌市豊平区(時事)
「1つの競技」とする難しさ
eスポーツは、既存スポーツとの連携を通じて社会的な定着を図ってきた。しかし、単独での成長が続くにつれ、アジア大会のような複合的な国際大会に組み込まれることの難しさも浮き彫りになってきた。
まず、「1つの競技」として扱うことに無理がある点だ。eスポーツは、ジャンルごとに異なる技術や能力を必要とする。パズルゲームはひらめきや論理的思考力に加えて空間把握能力、格闘ゲームでは瞬発力や状況判断能力などが勝敗を左右する。既存スポーツで例えるなら、その違いはサッカーと柔道ほど大きい。
そして、アジア大会でのeスポーツは1競技であるがゆえに参加者数が小規模になりがちという点も課題だろう。「ぷよぷよeスポーツ」は1競技としてのeスポーツのさらに1部門であるため、日本代表はゆうき選手1人。多くの強豪が腕を競う「ぷよぷよ」単体の大会のレベルまで盛り上げようとしても、限界がある。
「ぷよぷよ」が1つの競技になり、他の競技並みに参加人数を増やすことができれば、注目度も上向くはずだ。しかし、他競技とのバランスを考えれば、アジア大会でeスポーツの参加枠だけを大幅に増やすことも現実的には難しいだろう。
こうした点から、五輪やアジア大会といった巨大な複合スポーツイベントとeスポーツの相性は必ずしも良いとは言えない。国際オリンピック委員会(IOC)はサウジアラビアと連携し「オリンピック eスポーツ ゲームズ」を計画してきたが、2025年10月に開催計画を白紙にした。アジア大会での今後の扱いについて正式発表はないが、関係者からは継続は難しいのでは、との声も出ている。
アジア大会との関係、将来像の検討を
アジア大会などの複合的な国際大会にeスポーツが加わることには意味がある。「たかがゲーム」という固定概念を超え、世界的なスポーツ文化の一端を担うことを示せるからだ。既存スポーツ側も新しいファンを取り込み、若返りが図れる。eスポーツと既存スポーツが交わることで、技術の導入や大会形式の刷新など、新しい競技シーンが生まれる可能性もある。その点で、アジア大会の取り組みを否定する必要はない。
ただ、スポーツとしての認識のずれや参加条件など解決すべき問題は多い。五輪やアジア大会などとeスポーツの大会は、無理に1つに収めるのではなく、それぞれ独立した大会として発展させる方が双方にとって望ましい結果になるかもしれない。
日本スポーツ協会は9月、国民スポーツ大会の文化プログラムとして開催していたeスポーツ大会を切り離し、新たな都道府県対抗のeスポーツ大会を設立すると発表した。スポーツとeスポーツの関係がさらに一歩進んだ結果と言える。
愛知・名古屋大会の結果を経た後、将来像について十分に検討すべきだろう。

両国国技館で開催されたCAPCOM CUP12=2026年3月(筆者撮影)
バナー写真:「ぷよぷよeスポーツ」の日本一を決める「ぷよぷよファイナルズ 2023」=鹿児島市、2023年3月(筆者撮影)