意外に知らない「ニッポン入門」

海藻

暮らし

海に囲まれた日本の沿岸で採れるノリ、ワカメ、コンブなど食べられる海藻は100種類以上ある。ミネラル、食物繊維、ビタミンが豊富で生活習慣病の予防効果もある海藻は、健康づくりに欠かせない食材だ。

日本列島の周りは有数な海藻の生育地で、約1500種の海藻が生えていると言われている。海藻は古代に税として納められたり、神事の供物や薬として重用されたり、万葉集などの詩歌に詠まれたりしていた。今でも、コンブは「喜ぶ」に通じる縁起物としておせち料理の昆布巻きや、結納品の1つに使われる。

海藻には、カルシウムやヨウ素、マグネシウム、鉄分などのミネラルや食物繊維が豊富に含まれている。コレステロール値を下げたり、血糖値の上昇を抑えたり、腸の働きを促して新陳代謝を促進する効果が確認されている。ゼリーやアイスクリームなどの増粘安定剤として、また、医療分野や化粧品など食品以外にも利用されて注目を浴びている。

おなじみの海藻あれこれ

コンブ

縄文時代から使われていたといわれるコンブ。和食のだしを取るのに欠かせない食材だ。

乾燥コンブ(PIXTA)
乾燥コンブ(PIXTA)

乾燥コンブから本物を想像するのは難しい。コンブの葉は品種によって異なるが、長いものでは8メートルほどに生長する。天然と養殖があり、天然の9割以上は北海道産で、真コンブ、羅臼コンブ、利尻コンブは主にだし用、日高コンブは煮物用に使われる。コンブのつくだ煮はおにぎりの具としても人気が高い。乾燥したコンブは長期保存で熟成させるとうま味が増す。

 天日干し(PIXTA)
天日干し(PIXTA)

コンブのうま味成分はグルタミン酸。1907年に東京帝国大学の池田菊苗教授が発見し、うま味の化学調味料のもとになった。コンブにはミネラルやビタミンB、食物繊維が多く含まれる。中でも水溶性の食物繊維は、がんに対する免疫力を高める成分があることが分かっている。

昆布巻き(PIXTA)
昆布巻き(PIXTA)

ワカメ

湯に入れると、数秒で茶色からヒスイ色になるワカメ。長さは1メートルぐらいで春から夏にかけて成熟する。国産品の90%は、養殖だ。

海中のワカメ(PIXTA)
海中のワカメ(PIXTA)

カット、乾燥、歯応えの良い塩蔵など、ワカメは用途によって使い分ける。みそ汁やスープ、酢の物、サラダ、うどんやそば、ラーメンのトッピング、炒め物、煮物、天ぷらなどさまざまな料理に使われる。

ゆでワカメ(PIXTA)
ゆでワカメ(PIXTA)

ワカメときゅうりの酢の物(PIXTA)
ワカメときゅうりの酢の物(PIXTA)

ワカメの生長点となる根元のひだの部分をメカブという。春限定で店頭に並ぶ生のメカブは、刻むとぬめりが出てくるので、あえ物やスープにすると、のどごしが良くなり、夏の暑さで食欲が落ちたときにぴったりの一品になる。水溶性の食物繊維はワカメよりメカブに多く、コレステロール値の改善につながるといわれている。

根元の部分メカブ(左)、メカブをゆで、刻んでポン酢とニンニクやショウガで食べる。(PIXTA)
根元の部分メカブ(左)、メカブをゆで、刻んでポン酢とニンニクやショウガで食べる。(PIXTA)

ヒジキ

葉の部分を集めた柔らかい芽ヒジキ、茎上の長い部分が入った歯応えのある長ヒジキの2種類に大別できる。いずれも生と干したものがあるが、日本国内で流通するヒジキの9割が輸入品。干しヒジキは水で戻してから、油で炒めてニンジンや油揚げ、大豆、シイタケなどを加えて、だし、しょうゆ、砂糖などで煮ることが多い。

浅瀬の春ヒジキ(ニッポンドットコム)
浅瀬の春ヒジキ(ニッポンドットコム)

炊き込みご飯やサラダ、卵焼き、天ぷら、白あえ、酢の物、みそ汁などさまざまな料理に使える。カルシウムが多いので、不足分を補うには打ってつけの食材だ。

ヒジキの煮物(PIXTA)
ヒジキの煮物(PIXTA)

モズク

約9割が沖縄で養殖されている太い沖縄モズクで、ぬめりが少なく歯応えがある。北陸には細くてぬめりの強い「糸モズク」が生育している。モズクに含まれる食物繊維フコイダンは水に溶ける性質があり、スープやみそ汁に加えることで効果的に摂取できる。酢やしょうゆをかけて食べるとカルシウムが酢に含まれるクエン酸の働きによって体内に吸収されやすくなる。モズクの酢の物は、栄養価も高く、つるりとした食感でさっぱりした箸休めになる。

モズク酢(PIXTA)
モズク酢(PIXTA)

ノリ

日本で流通しているノリは、スサビノリ、アサクサノリなどが主流で、海から採ったままのものを「生ノリ」、生ノリを乾燥させたものを「乾ノリ」、それを焼いたものが「焼きノリ」と呼ぶ。店頭で「ノリ」と売られているものは「焼きノリ」だ。

有明海のノリ養殖 (ニッポンドットコム)
有明海のノリ養殖 (ニッポンドットコム)

乾ノリや焼きノリは、和紙を作るようにすいて薄く広げて乾燥させる。すしおにぎり、磯辺餅、ふりかけ、ざるそばやラーメンのトッピングなどに使われる。焼きノリにたれを塗って小さくカットした味付けノリは、ご飯との相性が良い。ノリの需要は、家庭用30%、贈答用10%、加工用60%で、加工用の多くはコンビニのおにぎりとして消費される。生ノリは、つくだ煮やみそ汁の具にしたり、パスタの材料にしたりする。「海の野菜」と呼ばれるだけあって、ビタミンCやたんぱく質、食物繊維が豊富に含まれている。

ノリ(PIXTA)
ノリ(PIXTA)

手巻き寿司(PIXTA)
手巻き寿司(PIXTA)

アオサ・アオノリ

アオサとアオノリは見た目がよく似ていてアオサ属に分類されるが、アオノリの方が香りが強く、オイルやバターを使う料理や、クリーミーな食材とよく合う。お好み焼きや焼きそば、たこ焼き、天ぷら、ふりかけ、みそ汁の具や、タコ焼き、パスタなどに使われる。

アオサのみそ汁(左)、タコ焼きにかけるアオノリ(PIXTA)
アオサのみそ汁(左)、タコ焼きにかけるアオノリ(PIXTA)

テングサ

寒天やところてんの原料になるテングサは、水にさらし、天日乾燥を4、5回繰り返すと紅色から無色になる。水に一晩漬け、強めの火で煮てからざるでこすと寒天が出来上がる。菓子作りには欠かせない寒天だが、最近は化粧品や介護食のとろみ付けなどにも使われ、用途が広がってている。

テングサ
テングサ

数日天日に干したテングサ(PIXTA)
数日天日に干したテングサ(PIXTA)

ところてん:酢やしょうゆ、または黒蜜をかけて食べる。(PIXTA)
ところてん:酢やしょうゆ、または黒蜜をかけて食べる。(PIXTA)

トサカノリ

刺し身のつまや海藻サラダなどの材料として用いられる赤い海藻。見た目が鶏のとさかに似ていることから、その名が付いた。

トサカノリの海藻サラダ
トサカノリの海藻サラダ (協力=Sea Vegetable)

バナー写真=PIXTA

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