【4K動画】 仏教哲学者の精神に触発される:金沢・鈴木大拙館

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金沢市の住宅街にある「鈴木大拙館」。加賀百万石の城下町に数ある展示施設の中でも、異彩を放つ存在だ。装飾を排し直線を生かしたモダニズム様式の建物は、金沢にゆかりのある建築家・谷口吉生(たにぐち・よしお、1937~)の設計による。美術館や博物館など多くの公共施設を設計した谷口の作品としては小ぶりだが、世界的な仏教学者・思想家の鈴木大拙(すずき・だいせつ、1870~1966)に対する敬慕の念が感じられる。

金沢の町屋に特徴的な木虫籠(きむすこ)の格子を模した玄関棟から内部回廊を進むと展示棟に入る。展示物は大拙の写真・書・著書が33点。しかも、説明文はほとんどない。同棟から外回廊に出ると、水を浅く張った「水鏡(みずかがみ)の庭」が目に入る。素材は異なるが、砂や石でつくる枯山水と相通じる手法で、自然を表現する。その池に浮かぶように建てられた「思索空間棟」。天井から外光を取り入れる室内には、畳敷の椅子が置かれている。小さな窓から眺められるのは水面、割石の壁、樹木だけだ。

大拙は正規の高等教育を経ず、参禅体験、米国遊学により、禅や仏教を探究した。英文の著書や講演を通じて、日本文化や仏教を紹介。その思想は内外の文化人に影響を与えた。この施設が来訪者に与えてくれるのは静寂。虚心坦懐に自らの心に向かえば、日本文化を伝えた思想家の精神に触れることができる。

映像:金沢ケーブル「なぜだか金澤〜見つけて加賀・能登」より

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