【4K動画】旧陸軍兵器庫の面影「石川県立歴史博物館」:金沢市

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側面が90メートルもある赤煉瓦(れんが)の建物が3棟並ぶ威容は、実に壮観だ。旧陸軍の兵器庫として明治末から大正初期に建てられ、戦後は金沢美術工芸大学の校舎として使われた。大学の移転に伴い石川県が建物を譲り受け、各棟を異なる工法で復元。1986(昭和61)年、「石川県立歴史博物館」として開館した。3棟をつなぐ渡り廊下や全面ガラス張りの休憩室の新設などを行い、2015(平成27)年に「いしかわ赤レンガミュージアム」の愛称でリニューアルオープンした。

軍施設らしく切妻屋根のシンプルな造りで、妻壁(端部の三角の壁面)の頂点に瓦製の棟飾りが施されている。屋根下部の軒蛇腹(建物の軒に帯状に取り付けた装飾的な水平帯)、1階と2階の間の胴蛇腹(建物の胴の位置に各層を区切る装飾的な水平帯)、グレーがかった「焼き過ぎ煉瓦」も装飾的な要素と言える。

夜間にはライトアップされ、幻想的な雰囲気をかもし出す。周辺には旧石川県庁舎本館、旧陸軍第九師団司令部庁舎などレトロな建物が文化施設として開放されているので、金沢市の人気観光ルートの1つとなっている。こうした歴史的建築物が残っているのは、同市が米軍の爆撃を受けなかったからだが、活発な官民の文化財保存活動の賜物(たまもの)でもある。

第1棟は木製の梁(はり)や柱を取り外し、鉄筋コンクリートの構造体に煉瓦壁を接着させた強度重視の改修。第2棟は鉄骨で補強しつつ、木の骨組みを一部、復元した。第3棟は兵器庫を忠実に再現するため、外壁を内側から鋼材で支える工法が採られた。それぞれのアーチ窓の外側には、第3棟の改修の際に発見された鉄扉がはめられており、兵器庫らしい風貌をたたえている。威厳のある外観を残しながら、公共施設として再利用されていることが評価され、90(平成2)年に国の重要文化財に指定された。翌年には日本建築学会賞も受賞している。

映像:金沢ケーブル「なぜか金澤〜見つけて加賀・能登」より

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