【4K動画】北前船の栄華を伝える夏の伝統行事「黒島天領祭」:石川県輪島市

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日本海に臨む石川県輪島市は江戸時代から明治の中頃まで、主要航路「北前船(きたまえぶね)」の能登半島の寄港地として栄えた。日本海の荒波を隔てる入り江が天然の良港だったからだ。同市黒島地区には船主や廻船(かいせん)問屋、船頭が居を構えた。黒瓦、下見板張りの街並みは今も保存され、青い海とのコントラストが美しい。

ふだんは静かなこの地区も、8月17、18の両日は黒島天領祭が行われ、かつてのにぎわいを取り戻す。天領祭のメインイベントは曳山(ひきやま)だ。大坂城、名古屋城の天守閣をかたどり、武者人形を乗せた2台の山車(だし)が町内を巡る。和太鼓や曳山の掛け声が響き、伝統工芸の輪島塗に金箔(きんぱく)を施した山車、紅白ののぼり旗が夏空に映える。

上方と北国を結ぶ交易の拠点となった黒島地区は1684(貞享元)年、江戸幕府がその重要性に着目し直轄地とした。これを機に、航海の安全や五穀豊穣(ほうじょう)を若宮八幡宮に祈念する天領祭が始まった。八幡宮の社殿や山車の側面に張られる幕、神輿(みこし)、のぼり旗には、「丸に立ち葵(あおい)」の御紋があしらわれている。徳川家康が家紋に定めた「三つ葉葵」の流れをくむ紋は、天領の象徴でもある。北前船の歴史を伝える街並みは国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。特に廻船問屋で財を成した旧角海(かどみ)家住宅は国重要文化財であり、邸内の見学もできる。

米や塩、特産品を日本国内に流通させる北前船の役割も、文明開化で台頭した蒸気船や鉄道に取って替わられた。産業・交通基盤の整備が後れ、過疎化が進むとともに祭りの担い手も減少。これをカバーするため、石川県内の大学生によるボランティアが曳山などの行事に参加し、伝統ある祭りを盛り上げている。

映像提供:金沢ケーブル『なぜだか金澤 見つけて加賀・能登』
テキスト作成:ニッポンドットコム編集部

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