災害情報を“国内最速レベル”で通知! 話題の「特務機関NERV」防災アプリは何がスゴいのか

防災 暮らし

  • “エヴァ”がモチーフの「特務機関NERV」が防災アプリの配信開始
  • 気象庁と連携…ダイレクトに受け取った災害情報を数秒~数十秒で通知
  • 開発者「自分で考え判断して行動できる、防災リテラシーにつながれば」

“エヴァ”をモチーフとした防災アプリが登場

9日午前に首都圏を直撃した台風15号。都内では死者が出たほか、千葉・君津市では強風による鉄塔倒壊で広範囲な停電が起きるなど、大きな被害をもたらした。

そのような中、「防災の日」の9月1日にリリースされた、スマホ向けの無料防災アプリが話題を呼んでいる。

その名も「特務機関NERV 防災アプリ」。
ロゴや名称は、一世を風靡した人気アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」に登場する組織「特務機関NERV(ネルフ)」がモチーフ
で、原作ファンなら思わず二度見してしまうようなデザインだろう。

アプリは黒を基調。中央のロゴはエヴァファンならおなじみのはず
アプリは黒を基調。中央のロゴはエヴァファンならおなじみのはず

しかし、このアプリの魅力はなにもデザインだけではない。気象庁の情報データと連携することで、天気・台風・雨雲の予報、地震・津波・噴火の速報、Jアラート(全国瞬時警報システム)などと、災害・防災に関する情報を“国内最速レベル”で通知することができるというのだ。

さらに、現在地や登録した地域に関わる、過去72時間の情報を時系列で確認できたり、緊急地震速報や津波警報などをプッシュ通知で知らせてもらうことも可能。このほか、視覚障害や読字障害の人にも伝わりやすいよう、音声での読み上げ機能も搭載するアプリとなっている。

アプリ開発を主導したのは、セキュリティー企業「ゲヒルン株式会社」の石森大貴代表取締役。エヴァンゲリオンの熱狂的ファンで、社名も作品に由来するほどだ。Twitterアカウント「特務機関NERV(@UN_NERV)」の管理者として、2010年から、災害・防災情報を発信し続けてきた人物でもあり、総ツイートは約24万件、フォロワーは約77万人(2019年9月現在)にのぼる。

そのような人物が今なぜ、アプリでの防災を呼びかけようと考えたのだろうか。話を伺うと、東日本大震災との関連性や“国内最速レベル”の秘密を教えてくれた。

東日本大震災をきっかけに災害・防災情報の発信を本格化

――そもそも「特務機関NERV」として、Twitterで防災情報をするようになった理由は?

アカウント自体は2010年からありますが、大きなきっかけは2011年の東日本大震災です。私は宮城・石巻市出身で、震災では実家が被害を受けました。ですが当時、Twitterには防災情報を投稿するアカウントがほぼありませんでした。この状況を見たとき、防災情報の発信場所がネットにも広がれば、人々の助けになるのではないかと考えるようになりました。

震災直後は電力が逼迫していたので、節電の呼びかけを「ヤシマ作戦」(エヴァンゲリオンに登場する作戦名)として広め、緊急地震速報なども投稿するようになりました。今のような形式で運営するようになるとは、夢にも思わなかったです。

――Twitterではなく、防災アプリをリリースしたのはなぜ?

ユーザーが今すぐに知りたい情報を届けられると考えたためです。Twitterだと一つの投稿で140文字しか入力できませんが、アプリなら地図や音声など、これまでの枠を超えた表現で情報を伝えられます。

「プッシュ通知」があるところもポイントです。Twitterのアプリにもある機能ですが、リツイートなどで本当に必要な情報は埋もれてしまうことがありました。アプリなら、現在地や指定地域の情報をまとめて通知できるので、より伝わりやすいとも思いました。

「緊急地震速報」は気象庁の速報から約3秒で通知可能

――「特務機関NERV 防災アプリ」の強みは?

気象庁の情報を配信するアプリは他にもありますが、音声や地図などで伝える事業者はほとんどいませんでした。「特務機関NERV 防災アプリ」では、地震などの災害情報も自動音声で読み上げることができますが、元の情報データから自動音声の生成までには約2秒しかかかりません。つまり、アプリを起動すると音声付きの情報がすぐ収集できる環境があります。

また、色覚異常の人が見やすい配色であることも強みです。私自身も色覚異常があり、赤と緑などは同じ色に見えるのですが、様々な色を多用する災害情報などは分かりにくいと感じます。そのため、アプリでは緑を靑よりにするなどの工夫もしています。アプリが黒を基調としているのも、スマホの有機ELディスプレイではバッテリー消費が抑えられるという、利点があるためです。

黒を基調とするのには理由があった
黒を基調とするのには理由があった

――情報はどんな仕組みで発信している? “国内最速レベル”とは、どれくらい?

気象庁の「気象業務支援センター」と接続した専用線から、気象庁独自形式の情報データを受け取ることで実現しています。当社では、その情報データを変換処理できるプログラムを開発しているので、受信してすぐに発信することができます。気象庁のウェブサイトで発表されるよりも速く、国内の有名防災アプリと比べても、約25分前には通知できています。

例えば、地震波が検知された場合、計測精度を安定させるための時間を含めても、数秒~20秒もあればアプリ上で発信することができます。「緊急地震速報」など、一刻を争う周知が求められる場合は、気象庁の速報から3秒ほどで通知することも可能です。

緊急地震速報のプッシュ通知例
緊急地震速報のプッシュ通知例

――開発過程でのこだわりや苦労などを教えて。

大規模なトラフィック(情報通信)に対応できることを重視しています。防災アプリは災害が起きてからアクセス数が増えるものですが、そのときに利用できなければ意味がありません。「特務機関NERV 防災アプリ」の情報通信には、クラウドサービスを利用しているので、そのシステムがダウンしない限りは、アプリが使えなくなることはないと思います。

苦労したところと言えば、これまでの過程でしょうか。2018年9月にアプリ開発の検討を始め、色彩の配置や音声収録など、約1年間にわたり準備を進めてきました。災害・防災情報を読み上げる自動音声は独自収録したもので、地名など1600のワードを実際に話してもらいました。アプリのソースコードなどを担当する開発チームは、眠らずに作業することも多かったですね。

今後は外国人向けに多言語対応のアップデートなどを予定

――今後はどう展開する?アップデートなどはある?

現状(2019年9月現在)では、全盲・視覚障害を抱える人への対応を改善したいと考えています。iPhoneには、画面に触れた部分の文章を音声で読み上げる「VoiceOver」という機能が備わっていますが、アプリ上の情報を「アイコン」と読み上げたことなどがありました。また、雷や降灰情報などの機能追加、洪水など河川情報の充実も進める予定です。外国人の方にも使っていただけるよう、多言語対応も進める方針です。まずは英語と中国語に対応したいですね。

――アプリが話題となっていることは?

ユーザーのみなさま、開発に協力いただいた方々に感謝の気持ちです。既に10万ダウンロードを達成できましたが、個人的には10万人が防災の思いを託して、ダウンロードボタンを押していただいたと捉えています。災害時に役立てるよう、大きな責任も感じています。災害時に自分で考え判断して行動できるような、防災リテラシーを高めることにつながればと願います。

今後は雷や降灰情報なども追加されるという(画面は洪水警報・土砂災害の危険度分布)
今後は雷や降灰情報なども追加されるという(画面は洪水警報・土砂災害の危険度分布)

「特務機関NERV 防災アプリ」は2019年9月現在、IOS版が配信済みで、Android版はリリースまでもうしばらく時間がかかるという。

エヴァンゲリオンでは、主人公・碇シンジが「逃げちゃダメだ」と自分を奮い立たせるシーンが有名だが、災害の場面では避難しなければ命に関わることも多い。そのときに迷わないよう、災害・防災情報の収集手段の一つとしてダウンロードしてみてはいかがだろうか。

(FNNプライムオンライン9月12日掲載。元記事はこちら

https://www.fnn.jp/

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