子どもたちと被災者に寄り添われ…天皇皇后両陛下が「お手元金」から1億円を寄付

社会 皇室

  • 天皇皇后両陛下がご即位に際し私的財産から2団体に寄付をされる
  • 上皇ご夫妻から引き継がれた寄付活動 寄付先は時代と共に変化
  • 子どもの明るい未来と被災者へ寄り添われるお気持ちを反映

「お手元金」から1億円を寄付

宮内庁は4月6日、天皇陛下のご即位に際して、天皇皇后両陛下の「お手元金」、つまり私的な財産から2つの団体にそれぞれ5000万円、合わせて1億円を寄付すると発表しました。

皇室が1800万円を超えて寄付することは、憲法8条や皇室経済施行法により制限されていますが、3月の参議院本会議での1億円以内の寄付を可能とする決議を経て、寄付が決まりました。

ご即位一般参賀(2019年5月4日)
ご即位一般参賀(2019年5月4日)

こうした寄付は、上皇上皇后ご夫妻がご即位の際にも行われましたが、寄付先の団体は、時代や両陛下のお考えから違う方向性があったような気がします。

両陛下が今回5000万円を寄付する団体は、政府が創設した「子供の未来応援基金」とNPO法人「全国災害ボランティア支援団体ネットワーク」の2つです。

「子供の未来応援基金」は、平成15年(2003年)に設立された「独立行政法人福祉医療機構」や内閣府、文科省、厚労省が事務局を作り運営しているものです。

平成27年(2015年)に始まった、子どもたちが夢と希望を持てる社会の実現のため、日本全体で子供の貧困をなくしていこうという「子供の未来応援国民運動」を受けて、子どもたちに寄り添う草の根運動をしている団体に助成金を出して支援していく基金です。本年度に支援を受けている団体を含めると、これまでに330を超える団体が助成金を受けています。

子供の未来応援国民運動のHPより
子供の未来応援国民運動のHPより

もう1つの寄付を受けた団体、「全国災害ボランティア支援団体ネットワーク」は、平成28年(2016年)に設立された民間非営利活動法人(NPO法人)です。

東日本大震災では多くのボランティアや支援団体が現地に入りましたが、全体の活動において連携がとれなかったことや、政府・行政・企業などによる支援も調整がとれず有効に機能しなかったことなどの課題も見えたことから、災害時に地域ニーズにあった支援活動をすすめるため、地元関係者と協力して支援に関する情報を集約し、活動の調整機能としての役割を果たそうとする団体です。

これまでに、2019年10月に発生した台風19号による広範囲での被害では、先遣隊を派遣して情報収集に当たり、その直後から現地で情報共有会議を開いたほか、長いタームで支援のための情報共有会議を開き続け、支援活動に入る団体に対し参加を呼びかけています。

「全国災害ボランティア支援団体ネットワーク」HPより
「全国災害ボランティア支援団体ネットワーク」HPより

上皇ご夫妻から引き継がれた寄付活動

こうした寄付活動は、上皇さまがご即位した際にも行われていました。

上皇ご夫妻はご即位の大切な皇室儀式、大嘗祭が終わった平成2年(1990年)12月、やはり「お手元金」から2つの団体に5000万円ずつ寄付をされています。

「社会福祉法人こどもの国協会」と「財団法人日本障害者リハビリテーション協会」です。

「こどもの国協会」とは、神奈川県横浜市にあるこどもの国を運営する団体です。こどもの国と上皇ご夫妻は深い縁があります。そもそもこどもの国は、上皇ご夫妻がご成婚の時に集まったお祝い金を基金として開園した施設です。

開園前にも訪れたことがある上皇ご夫妻は、その後も幼い陛下や秋篠宮さまとご一緒に来園したり、平成31年(2019年)4月ご退位直前にも、来園されています。

この施設は、健全な子どもたちの育成を目指し、自然の遊び場をという上皇ご夫妻のご希望に沿う形でできあがっています。

「日本障害者リハビリテーション協会」は、現在、常陸宮さまが総裁を務められている公益財団法人です。昭和39年(1964年)に設立して以来、昭和天皇やその后・香淳皇后が寄付をするなどし、皇室が支援をしてきています。

実はこの2つの団体には、上皇ご夫妻の思いが色濃く反映しています。

こどもの国の敷地は、旧日本陸軍田奈弾薬庫補給廠の跡地に作られています。ここで、地雷や対戦車砲、手榴弾、高射砲などの砲弾が製造されていたのです。空襲は一度もなかったということですが、爆弾を扱う際、爆発事故が起こり、ここで働いていた作業員も亡くなりました。

戦後、ここで働いていた女学生の1人が沖縄を訪問した際、たくさんの沖縄の住民が手榴弾で集団自決したことを知り、「ひょっとして私たちが作った手榴弾だったのではないでしょうか」という思いをしたそうです。

こうしたことから、平和の碑を建てようと募金活動が始まりました。こうして平成8年(1996年)に女学生たちの休憩場所だった丘に「平和の碑」が建てられています。

また園内には、戦場で出会った日米ボーイスカウトの逸話が刻まれた「無名戦士の記念碑」も設置されています。

戦争の悲惨さを風化させてはいけないという信念をお持ちの上皇ご夫妻も、来園の際にはこうした碑に足を運ばれています。この園には、「戦争のない世の中で、子どもたちにすくすく育ってほしい」という思いがあるのだと思います。

上皇ご夫妻は、弱い立場の方々に心を寄せてこられました。この中には、障害者への思いも大きくありました。

昭和39年(1964年)に東京オリンピックに続いて開催された、2回目となるパラリンピック。当時の皇太子ご夫妻だった上皇ご夫妻は、その開催に尽力されています。障害者も活躍できる社会を目指されてのことでした。

こうして見ていくと、寄付された2つの団体には、上皇ご夫妻の一貫した象徴としてのご活動が色濃く反映されていたように思われるのです。

和歌にもにじむ 子どもたちと被災者への深い思い

今回、両陛下が寄付される2つの団体には、両陛下の思いが反映されています。令和2年(2020年)1月の歌会始の儀で両陛下が詠まれた和歌、御製と御歌はこのような歌でした。

【御製】学舎(まなびや)に ひびかふ子らの 弾む声 さやけくあれと ひたすら望む

解説:保育園などへのご訪問や愛子さまが通われる学習院女子中高等科での若い人たちとの触れ合いのたびに、子どもたちの将来が明るくあってほしいとの願いを詠まれた。

【御歌】災いより 立ち上がらむと する人に 若きらの力 希望もたらす

解説:豪雨や台風による被災地を訪問されていく中で、高校生などの若い人たちが、ボランティアとして献身的に活動し、人々に復興の希望と勇気を与えてくれていることを頼もしく思い詠まれた。

令和になって初めての「歌会始の儀」(2020年1月)
令和になって初めての「歌会始の儀」(2020年1月)

お二方の「若い人たちに明るい未来を作ってほしい」との深い思いが伝わってきます。それと共に、災害に立ち向かう人々への感謝も示されているのです。

上皇ご夫妻が、「平和の中ですくすく育ってほしい子どもたち」や当時、一番気にかけられ、「弱者としての障害者」へ寄り添われたお気持ち。

両陛下が、貧困などの苦しい立場の子どもたち、そして災害からの復興に立ち向かおうとする人たちに寄り添われるお気持ち。

こうした両陛下、上皇ご夫妻のお気持ちから、2つの団体が選ばれることになったと思います。

宮城・丸森町で被災者に声をかけられる両陛下(2019年12月)
宮城・丸森町で被災者に声をかけられる両陛下(2019年12月)

宮内庁からの正式な伝達式はまだ行われていませんが、「全国災害ボランティア支援団体ネットワーク」は、「急な話で驚いています。NPO法人として選んでいただいたことは感慨深いです。活動の積み重ねを見ていただいたのだと思います」とコメントしています。

現在は新型コロナウイルス拡大の中、災害が起きたとき他県から駆けつけられるのかなど、平時に考えられる問題を支援団体と連絡を取りながら準備を進めているということです。

「子供の未来応援基金」では、「このたびの賜与は大変光栄でありがたいことと感じています。事務局としてもさらに気を引き締め、子供たちに寄り添って支援活動に取り組む団体をしっかりと支援し、社会全体で子供の貧困対策を進める環境、応援ネットワークを構築してまいります」としています。

現在、新型コロナウイルス拡大の中、本年度活動予定の団体も活動を中止や延期しなければならない状態に追い込まれている団体もあるということで、感染拡大防止のため、可能な限り柔軟に対応していくということです。

「お手元金」からの寄付という行為は、引き継がれた形になっていますが、社会情勢を反映し、寄付先は変化しました。時代と共に、天皇の象徴としての思いは変わってきます。

ただ、両陛下は上皇さまが寄り添った人たちへの思いがなくなったわけではなく、より広く、多くの人たちに心を寄せ始められているのです。両陛下も上皇ご夫妻も、弱い立場の人たちに寄り添う気持ちは、これからも変りはありません。

(FNNプライムオンライン4月24日掲載。元記事はこちら

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