「絶対に帰るな」帰省を相談した父の返答が話題…岩手県担当者語る“感染者ゼロ”ゆえのプレッシャー

暮らし

  • 岩手の父に「そろそろ帰っていい?」と聞いたLINEのやり取りが話題
  • 投稿者「感染者が出ていないからこそのストレスもあると思う」
  • 県担当者「第1号になった場合の世間体を気にしすぎるようなところがある」


父親に帰省を相談した際の返答が話題

新型コロナウイルスの影響で、”帰省”ができずにいる人は多くいることだろう。

6月19日から県をまたぐ移動の自粛が解除されたが、家族への感染の可能性を懸念し「いつ帰って良いのかわからない」などとタイミングに悩む声が聞かれてくる。

そのような中で今、岩手県に住む父親に、帰省して良いかを聞いたLINEのやり取りが話題となっている。

それがこちらだ。

岩手県に住む父に「そろそろ帰っていいかな」と軽く言ってみたところ…

というコメントとともに投稿された、LINEのスクショ画面には「絶対に帰るな」「岩手1号はニュースだけではすまない」との文字が見える。


Twitterに投稿したのは、けいし(@pandafun20)さん。けいしさんの実家は岩手県で、7年前の大学進学を機に上京し、現在も東京で暮らしているという。

県をまたぐ移動の規制が解除されたこともあり、帰省していいかどうかを家族のグループLINEで連絡したところ、父親からの返答が「帰るな」だったのだ。岩手県と言えば、6月30日現在、国内で唯一、新型コロナウイルスの感染者が出ていない県である。

たしかに、いま岩手県で感染者第1号となれば、ニュースになることは間違いない。また、日本では「新型コロナウイルスに感染する人を自業自得だと思う」と考える人の割合が海外と比べて高いというデータもあり、 感染者に対してネットや近隣住民から誹謗中傷などが起きる可能性もあるだろう。

けいしさんの投稿には、15万5000いいね(6月30日時点)が付いており、「私の妹も岩手県民。第一号になったら、生きていかれないって言ってるよ」「私も同じ理由で帰省しようとは思わない」「私も親に岩手に帰ってくるな言われました」などのコメントが並んでいる。
 

「岩手1号はニュースだけではすまない」という父親の言葉に、岩手県民の感染者ゼロだからこそのプレッシャーが表れている気がするが、改めてけいしさんに話を聞いた。

普段は家族の行動を制限することはほとんどない父親

ーーいつから岩手県に帰っていない?

去年の春(5月)以降、帰っておりません。


ーー普段のお父様はどういう人?

父は、普段は子供の意思を尊重し、家族内ルールや進路などについて行動を制限することは、ほとんどありません。そのため、今回のように「帰省するな」と言われたのは、とても珍しく、いつ以来か思い出せないくらいのことです。

提供:けいしさん
提供:けいしさん

ーーLINEの続きはどうなった?

この後は、妹「まあこんだけ出てないもんね笑」、私「帰るところがどこにもねぇ」と続き、別の話題に移りました。


ーーいつ頃までには帰りたい?

父は還暦が近く、祖母はまもなく米寿を迎えるので、少しでも早く帰りたいです。お盆には帰れるのでしょうか…ただし、父から強く言われたこともありますので、周囲の状況を見ながら慎重な判断をしないといけないなと思っております。

投稿者「早く収まって家族と会いたい」

ーー感染者が出ていない岩手県、どう思う?

家族のいる地域で感染者が出ていないのは安心ですし、各県民も気を張っているのは大切なことだと思います。一方で、感染者が出ていないからこそのストレスもあると思うので、そのストレスはうまく緩和されると良いなと思います。


ーーネットで話題になっているけど、どう思う?

さまざまな方がリプや引用リツイートで全国の感染者やそのご家族、また帰省できない状況をツイートしてくださっています。

感染者やそのご家族の中には、大変な思いをされた方も多数いらっしゃるようで、田舎社会・村社会で生活をする大変さの一面を垣間見ました。

また、帰省を自制されたり、私のように親・親族から止められて諦めている方も多くいると知り、辛いのは自分だけではないのだと知りました。早く収まって家族と会いたいです。


感染者が出ていないことはいいことのはずが、「第1号にはなりたくない」との思いが逆に県民にはストレスとなっているようだ。

では、その岩手県では感染者を出さないためにどのような対策を行っているのだろうか?そしてもしも第1号が出てしまった場合、感染者が過度に批判されないような対策はあるのだろうか?
県新型コロナウイルス感染症対策の担当者に話を聞いた。

できる対策はすべて実施することが重要

ーー県をまたぐ移動が可能になったが、どのような対策をしている?

国が基本的対処方針で示した方針に沿った対策を講じています。

・ 基本的な感染防止対策の徹底した実施。手洗い、うがい、マスクの着用、三密の回避など。
・ 業種別ガイドラインによる感染防止対策の実施。
・ イベント等の開催や施設利用について、段階的な緩和 など。

また、本県では、来県者等に対して、今までいた都道府県において自粛等が要請されている場合は、来県されてから2週間は、その要請を守っていただくようお願いしています。


ーー対策の中でも、特に気をつけてほしいことはなに?

特にこれだけを守って、というものはなく、基本的には全ての対策を実施いただきたいです。

なお対策本部では、このようにTwitterでも県民に感染予防を呼びかけている。

「全ての都道府県との移動の自粛が解除されました」
・ただし、観光(県をまたぐものも含め)は徐々に。
・マスク着用、手洗い、人との間隔確保等、感染防止対策は引き続き。
・熱中症にも注意してマスクを着脱。
・医療従事者に感謝と思いやりを。

「第1号になった場合の世間体を気にしすぎるようなところがある」

ーー初めての感染者が出た場合に混乱はしそう?

混乱状況になるかわかりませんが、県としては、県民に不安が生じないよう、医療体制などの情報発信に努めます。


ーー感染者が出た場合の対策を教えて

・感染経路や濃厚接触者を可能な限り特定することにより、まん延防止に努める。
・適切な医療の提供により、重症化を予防する。
・感染者が発生した場合に備え、重症度に応じた病床を確保しているほか、軽症者や無症状者の宿泊療養施設を確保している。


ーー感染者第1号が出た場合、“犯人捜し”にならない対策は考えている?

県民に対しては、第1号が出た場合には、感染した人は悪いわけではなく、その人をとがめず、優しい気持ちを持って対応すること、命と健康を守ること、感染を拡大させないことが重要であること、を日頃から呼びかけています。


ーー感染者が出ていない県民の皆さんの意識をどう思う?

・県民の感染防止に対する意識は高いと考えています。
・「感染者ゼロ」が続いていることによるプレッシャーはあると思われます。
・ 感染者第1号になりたくないという思いと、第1号になった場合の世間体を気にしすぎるようなところがあるのではないかと思われます。

提供:岩手県
提供:岩手県

県をまたぐ移動は解除されたが、現在も感染への不安を抱える生活が続いている。もちろん、ひとりひとりの予防対策は必要であるが、どんなに気をつけていても感染する可能性は否定できない。万一、周囲に感染者が出たとしても、岩手県の担当者が話すように「優しい気持ちで接する」ことが重要だろう。
 

(FNNプライムオンライン6月30日掲載。元記事はこちら

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