京アニ事件を受け「火災抑制剤放射器」を開発…消火器と何が違うのか?メーカーに聞いた

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  • 京アニ事件を受けて開発した「火災抑制剤放射器」
  • ガソリンの蒸発を抑え込み、着火しにくくする
  • 担当者「これまでは“放火テロ”に対して、有効な手段がなかった」

京アニ事件受け「火災抑制剤放射器」を開発

京都アニメーションの第一スタジオで36人が死亡、33人が重軽傷を負った放火殺人事件から、7月18日で1年が経った。

この事件では、気化したガソリンに引火したことで、一気に炎が広がったとみられている。

こうした悲劇を繰り返すまいと立ち上がったのが、消防機器メーカー「日本ドライケミカル」だ。「消防機器メーカーとして何ができるのか、このような事件を2度と起こさせない」という強い思いから、日本初だという“火災抑制剤放射器”を開発。7月20日から販売を開始した。

名前は「クイック スプラッシャー」

火災抑制剤放射器「クイックスプラッシャー」(提供:日本ドライケミカル)
火災抑制剤放射器「クイックスプラッシャー」(提供:日本ドライケミカル)

これは、ガソリンをまかれた状態で、不審者に火をつけられる前に、火災抑制剤を“瞬時”に“広範囲”に放射することで、ガソリンの蒸発を抑え込み、着火しにくくするもの。

提供:日本ドライケミカル
提供:日本ドライケミカル

提供:日本ドライケミカル
提供:日本ドライケミカル

また、不審者に火をつけられても、その後に火災抑制剤を放射することで、火の勢いを抑えて、避難通路の確保に繋げることができるのだという。

提供:日本ドライケミカル
提供:日本ドライケミカル

誰でも使えるように消火器機構を採用し、重さも消火器とほぼ同じの約5キロ。2.5リットルの火災抑制剤を瞬時(約1.8 秒)に放射し、1本でおよそ 10平方メートル(6畳)の広さをカバーできるという。

日本初だという“火災抑制剤放射器”は消火器と比べて何が違い、どのような点で優れているのか?

「日本ドライケミカル」の担当者に話を聞いた。

日本初の“火災抑制剤放射器”が誕生

――“火災抑制剤放射器”は日本初?

“火災抑制剤放射器”は、着火の抑制を目的とした日本初の消防防災製品です。 

現行の消防法がカバーする「自動火災報知設備(=火災による煙や熱を感知器が早期に自動的に感知して、警報ベルなどで、建物内の人達に火災を知らせる設備)」「消火」「火災避難」という、火災発生後の3つのジャンルのいずれにも属さない、新しいジャンルの消防機器です。


――海外にはすでにある?

世界に関しては調査が困難なため、確約できませんが、おそらくは世界初の消防防災製品であると思います。

ガソリンをまく“放火テロ”に消火器は対応できない

――開発のきっかけは京都アニメーションの事件?

京都アニメーション放火事件は、私たち、消防機器メーカーにとっても、衝撃的な事件でした。 想定していなかったことが起こってしまう、こうした時代に我々は生きているのだと強く認識しました。 

また、これまでは、消防防災製品として、作為の火災(=放火テロ)に対して、有効な手段がありませんでした。 

放火テロで使用されるガソリンなどは燃焼性が高く、一度、着火すると消火するのが難しく、安全な避難を困難にします。

そのため、放火テロが起こり得る建物内において、ガソリンなどがまかれてしまった場合、火を付けられる前にその場にいる方が、薬剤を“瞬時”に“広範囲”に放射し、火災の抑制や避難を容易とすることができる薬剤放射器を開発しました。


――そもそも、この事件ではなぜ消火器で火を消し止められなかった?

“油による火災に適応する消火器”があり、一般的な油による火災であれば、こうした消火器は有効です。

ところが、この事件のように、作為的にガソリンをまかれた場合、気化したガソリンの蒸気が室内に充満するため、着火されると一気に燃焼が伝わって広がり、爆発的な燃焼になります。

そのため、消火器では対応が困難となります。

これに対し、“火災抑制剤放射器”は、瞬時に放射された火災抑制剤が油の表面を覆うことにより、泡などがガソリンの蒸発を抑制し、蒸気が室内に充満することを軽減。さらにガソリンへの着火を抑制することを可能にしています。

“従来の消火器”と“火災抑制剤放射器”の比較(提供:日本ドライケミカル)
“従来の消火器”と“火災抑制剤放射器”の比較(提供:日本ドライケミカル)


開発では試行錯誤を繰り返した

――開発するうえで、どのようなことに苦労した?

「瞬時に放射をするための機構の開発」「広範囲に泡を散布する放射ノズルの開発」「ガソリンなどの着火を抑制する薬剤の最適化」です。

これらは、相反するものがあり、“こちらをよくすると、こちらが悪くなる”というものなので、試行錯誤を繰り返すことによって、最も機能が発揮できるよう調整しました。

この調整に特に苦労しました。


――その難しい点をどうやって克服し、商品化に至った?

様々な条件を検討し、繰り返し試験を行うことで商品化に至りました。

設置を推奨する場所は?

――どのような場面での使用を想定している?

テロ対策で設置を推奨する場所は、「イベント施設」「金融機関」「交通機関」「空港」「コンビニ」「報道機関」「官公庁舎」「ホテル関連」「警備会社」「文化財施設」「海上保安庁」「警察庁」などです。 

特に、東京オリンピックのテロ対策などにも有効と考えています。 

また、ガソリンなどの油の漏れがあった場合の発火防止対策としては、「ガソリンスタンド」「バス車両基地」「車両整備場」「飛行場施設」といった場所での設置を推奨しています。
 

日本初の火災抑制剤放射器「クイックスプラッシャー」の価格は、3万3000 円(税抜)。購入を希望する場合は、直接、日本ドライケミカルの支店・営業所まで問い合わせる必要があり、今後は防災代理店などを通じての販売を予定している。

あってはならないことだが、いつどこで、ガソリンなどによる放火が起きるかは分からない。悲惨な事件の犠牲者を最小限にするためにも、我々も備えをしなければならないだろう。
 

(FNNプライムオンライン7月21日掲載。元記事はこちら

https://www.fnn.jp/

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