帰省を相談したら「東京大変らしいけどマスク足りてる?」…“京都特有”の言い回しの難易度が高い

社会 暮らし

  • 京都への帰省を親に相談すると「東京はマスクとティッシュ足りてる?」
  • 投稿者は意味を察し、帰省を中止
  • 専門家が京都で体験した「出前でも取りましょうか」
  • 京都への帰省を親に相談すると「東京はマスクとティッシュ足りてる?」
  • 投稿者は意味を察し、帰省を中止
  • 専門家が京都で体験した「出前でも取りましょうか」

京都府民は遠回しな言い方を好み、あまり本心を口にしないという印象を持っている人は多いかもしれない。

編集部でも以前、「良い時計してますなぁ」という言葉に「話が長い」という意味が含まれていたエピソードを紹介した。

そして新たに、新型コロナウイルスに関する京都府民の“言い回し”が話題となっている。

「ティッシュ足りてる?」の意味とは

地元の京都に来週帰っていい?ってLINEしたら「東京大変らしいけど、そっちマスクとティッシュ足りてる?」っていう意訳すると京都に来るなっていう返信が秒で来た。

投稿したのは、八重洲無能系OLみやびんちゃん(@miyabine)さん。もともと7月の連休に京都への帰省を計画していたそうで、コロナの状況を鑑みどうするべきか親に意見を聞こうとLINEを送ったという。

ところが、その返答は「東京大変らしいけど、そっちマスクとティッシュ足りてる?」。

普通であれば、感染者数が増えている東京での暮らしを心配してだと思うが…。京都では「来るな」という意味になるというのだ。

Twitter上では、「Google翻訳が永遠にたどり着けない難易度」「京都カルチャーは高度!」「さすが、はんなりしたはるわぁ」 などこの言い回しが話題となり、11万いいねが付いている。(7月21日時点)。

なぜそういう意味だとわかったのか?そして、意味を察してどう返信したのだろうか? 投稿者に詳しく話を聞いてみた。


意味を察し帰省は中止

ーーLINEの続きを教えて

「ほな、在庫確認して少なかったらお願いしよかな?」ということで、私が察したのでこれ以上の具体的な会話はなく終了です。

帰省も無しよという意味で家族内での了解を得ています。


ーーなぜ意味を察することができた?

・大都市東京はまだマスク供給回復していないでしょ?(もしくはこれから感染者拡大で不足する)
・ですのでまだ供給が十分にある京都から送ってあげます
・送ってあげるので東京にいてね

という流れです。


親の返信から察した投稿者は、7月の帰省を中止。状況をみて帰省したいと思っているそうだが、いつになるかは未定とのことだった。

最近も長野県で、感染者のうち数人が発症前に東京など首都圏に滞在していたということが分かっている。首都圏からの移動による感染を心配するのは親として当然のことではある。


だが、この“京都らしい”エピソードは、他県出身者には理解しにくい点もある。では専門家はどうみるのだろうか?

社会言語学が専門の東京女子大学現代教養学部の篠崎晃一教授にも話を聞いた。

本音を表に出さないことが生き残る術

ーー「そっちマスクとティッシュ足りてる?」に「来るな」という意味はある?

これはよくわからないです。遠回しすぎると真意が全く伝わらないです。「東京も感染者増えて大変らしいなぁ」くらいなら断りの意が通じると思いますが。


ーー京都ではよくあること?

日本文化の根底には「謙譲の美徳」という精神があり、人を先に立てて、自分は出しゃばらないということが美しい行為であるとされてきました。それを他域よりも京都の人達が体現化することが多いということかもしれないです。

背景には、日本の文化を支えてきたという自負があるのかもしれません。


ーーなぜ京都の人は“遠回し”に本音を伝える?

 平安以降、首都として長く日本の政治文化の中心地であったため様々な権力者に支配されてきました。その中で自らの主張を控え、直接本音を表に出さないことが生き残るための術だったと言われることが多いです。
 


教授は「出前でも取りましょうか」を体験

ーー遠回しに本音を伝えられたことはある?

紹介された京都のあるお宅へ調査に行った際、昼近くになったら「出前でも取りましょうか」と言われました。

結構時間がたったのでそろそろ解放して欲しいということだと思いました。いわゆる「ぶぶ漬けでも」を体験できたことがあります。


ーー「ぶぶ漬けでも」とは?

京都の人の家を尋ねて、「ぶぶ漬けでもどうどす?」と言われたら「そろそろ帰ったら」という暗黙のサインだという話が流布しています。ただ、実際に使う人はいないらしいです。

前に調べたところ上方落語の「京の茶漬け」という演目が由来らしく、一般に帰り際の挨拶として「何もお構いもできませんで…」というところを、京都では「ちょっとぶぶ漬けでもいかがですか」と尋ねる習慣があったことがネタだとか。



ーー日本では遠回しに伝える文化はある?

京都のステレオタイプのように思われていますが、日本語には婉曲表現(物事を遠回しに言う表現)は多いです。

例えば、
・今度結婚します。→結婚することになりました。
・こちらです→こちらのほうです。
・私は~と思います。→私的には~と思います。
などなど、あえて断定を避けたり、自分が決めたことをあたかも自身の関知しないところでそういう流れになったような表現の仕方をすることが多いです。
 

ーー他に京都ならではの遠回しの言い方を教えて

直接聞く機会はないですが、一般に紹介されているのは、

・元気なお子さんやね →騒がしいから静かにさせなさい。
・お嬢ちゃんピアノお上手やね →音がうるさくて迷惑。
・いい時計してますな →話が長い(もう解放して欲しい)。
・きれいな柄のネクタイやね →派手なネクタイだなあ。など


ーー素直に返答された場合、京都の人はどう対応する?

わからないですが、ネイティブに確認するのが確実です。そもそも直接的な言い回しを回避しているわけだから、受け流すのではないかと思います。


専門家も真意を汲み取るのが難しかった「東京大変らしいけど、そっちマスクとティッシュ足りてる?」。

たびたび話題になる京都特有の言い回しには、今後も注目していきたい。
 

(FNNプライムオンライン7月22日掲載。元記事はこちら

https://www.fnn.jp/

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