ネット通販の商品を「原寸大」で表示するシステムを埼玉県が開発…これで“がっかり”が減る?

技術

  • 埼玉県がネット通販の商品を“原寸大”で表示できるシステムを開発
  • 担当者「試作品を開発するだけでは、埼玉県にメリットはありません」
  • それでも埼玉県が開発を進めた理由があった

ネット通販で商品を“原寸大”で表示できるシステムを開発

ネットショッピングを利用する世帯は、年々、増加している。

総務省統計局の「家計消費状況調査通信(2020年4月発行)」によると、ネットショッピングの利用率(2人以上の世帯)は年々、上昇。

2009年は18.1%だったが、2019年には42.8%。10年で約2.4倍になっている。

総務省統計局「家計消費状況調査通信(2020年4月発行)」
総務省統計局「家計消費状況調査通信(2020年4月発行)」

一方で、ネットショッピングは、購入する際に実物を確認できないため、手元に届いた後、「イメージしていた大きさと違った」など、購入する際の画像と実物のギャップにがっかりすることもある。

こうした中、埼玉県が「Webサイト上で商品を“原寸大”で表示できるシステム」の試作品を開発した。
“原寸大”で表示することで、ネットショッピング特有の“がっかり”を減らす可能性を秘めている。

8月4日には、このシステムを体験できるサイトを立ち上げ、希望者には無償でプログラムを提供している。

使い方は簡単

このシステム、使い方は簡単。

パソコンやタブレット、スマートフォンで、“体験サイト”にアクセスするだけで利用することが可能。

画像の作成は、A判用紙を背景に被写体を撮影し、ペイントソフトで背景の大きさに切り抜くだけだという。

(提供:埼玉県)
(提供:埼玉県)

システムの実用化に立ちふさがる課題

商品を“原寸大”で表示するシステムは、すでに大学などの研究機関でも開発が進められているが、専用のデバイスやアプリケーションを必要とするなど、煩雑な工程が不可欠なため、実用化に向けては“課題”が多いとされている。

今回、埼玉県が開発したシステムでは、それらの“課題”を解決。
実用化に向けた試作品となっている。

そのような難しいシステムをなぜ、一自治体である埼玉県が開発できたのか?
また、このシステムを無償で提供することで、埼玉県にはどのようなメリットが生じるのか?


埼玉県の担当者に“理由”と“メリット”を聞いた。

「埼玉県は次世代映像産業の創出に取り組んでいる」

――このようなシステムをなぜ埼玉県が開発した?

埼玉県では、2003年、川口市SKIPシティに設置した「彩の国ビジュアルプラザ」を拠点に、次世代映像産業の創出に取り組んでいます。

2019年度、県内産業の振興につなげるため、最新の映像技術を活用した新商品・新サービスの試作品を制作し、実証実験を行う「近未来映像技術活用研究事業」を実施しました。
”原寸大表示システム”は、この事業で制作したものです。

――最新の映像技術を活用するサービスの中で“原寸大”で表示するシステムを選んだのはなぜ?

何を制作するか関係者でアイデアを出し合い、当初は…

1)リフォームなどを想定した「床面への実寸大投射」
2)教育現場での活用を想定した「教育題材(人物や建築物など)の実寸大投影」

という、プロジェクターによる“原寸大表示”に取り組みました。

しかし、プロジェクターによる“原寸大表示”は、スクリーンとの距離という物理的条件に左右されることから、活用の場が限られます。
また、使用する際のセッティングにも、正確な調整を要します。

そこで、誰もが簡単に利用できる方法として、Web上で“原寸大”に表示できるシステムを試作することになりました。

彩の国ビジュアルプラザ(提供:埼玉県)
彩の国ビジュアルプラザ(提供:埼玉県)

――今回のようなWebサイトで活用するシステムをこれまでに開発したことは?

ありません。

――実用化が難しいとされているシステムにもかかわらず、実用化に近い試作品を開発できたのはなぜ?

システム設計・開発、ソフトウェア開発などを行う会社(エニーシステム)の協力を得ました。

「実用化は予定していません」

――ネット通販で商品を“原寸大”で表示すること、需要はある?
  

“原寸大”で表示することの需要があるか、需要が高まっているかは不明です。

「商品説明と異なるものが届いた」「ブランド品が偽物だった」といったネットショッピングのトラブルとは異なるため、「届いた商品が想像していたサイズと違った」という“がっかり”は表面化しにくいものと考えます。

――今、提供しているのは試作品。実用化はいつ頃になりそうですか?
 
 
今後、県の事業として実用化まで改良を進めることは、現時点で予定していません。
今回、公開したシステムは、希望者にプログラムを無償提供しています。

提供したプログラムについては改変が可能ですので、ご利用になる方がそれぞれ改良していただき、より使い勝手の良いシステムを作り上げていただけることを望んでいます。

「埼玉県にメリットはありません」

――試作品は無償で提供。埼玉県にとってどのようなメリットがある?

試作品を開発するだけでは、埼玉県にメリットはありません。
開発した試作品を公開し、プログラムを無償提供することによって、このシステムが進化し、産業の振興が図られることを期待しています。

それは、ネットショッピングでの活用が既存サービスの向上につながるというだけではありません。システムを改良すれば、他の分野での活用にも広がる可能性があります。
“原寸大表示”は、文字ではイメージしにくいものの大きさや量がダイレクトに伝わりますので、以下のような分野での活用が考えられます。

・教育業:昆虫や植物・動物の図鑑
・飲食業:デカ盛りメニューのPR
・農林水産業:農作物や養殖魚の生育状況の確認
・製造業:試作品の大きさの確認


このようにシステムの進化が、新たなサービスを生み出し、産業の振興につながれば、と考えております。
 

埼玉県のHPより
埼玉県のHPより

様々な活用の可能性を秘めている、このシステム。
コロナ禍でネットショッピングの利用も増加している中、ひとまずはシステム自体の普及が進み、「イメージしていた大きさと違った」という、ネットショッピング特有の“がっかり”が減ることを期待したい。
 

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(FNNプライムオンライン8月14日掲載。元記事はこちら

https://www.fnn.jp/

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