「寂しいところは見せずに最後まで」大震災の津波も乗り越えた遊覧船 思い出と共に運航終了へ【岩手発】

社会 旅と暮らし

  • みやこ浄土ヶ浜遊覧船が2021年1月で運航終了へ
  • 津波も乗り越え…ともに過ごしたスタッフの思い
  • 「寂しいところは見せずに最後まで楽しく」

赤字や老朽化で「浄土ヶ浜遊覧船」運航終了へ

8月9日、岩手・宮古市の浄土ヶ浜遊覧船の乗り場には、県の内外から数多くの観光客が訪れていた。


新型コロナウイルスの感染対策を十分に行い、乗客が次々に乗り込む。
船では、家族連れなどがウミネコに餌付けをし、夏のひとときを楽しんでいた。

ーー乗ってみてどうだった?

乗客(子ども):
楽しかった

乗客:
実際に自分の目で、こうして見させていただくと、この景観の素晴らしさ、本当に驚きました

58年にわたって、乗客に笑顔を届けてきた浄土ヶ浜遊覧船だが、長年赤字が続いたことや船の老朽化によって、2021年1月で運航を終了することが決まっている。


津波から1隻を救った船長の判断

みやこ浄土ヶ浜遊覧船 ガイド・金澤明美さん:
来年1月11日をもちまして、みやこ浄土ヶ浜遊覧船、終了することが決まりました。残り数カ月、わたしたちも元気よく頑張って、この浄土ヶ浜遊覧船でご案内して参りたいと思います

23年間ガイドを務めてきた金澤明美さん、苦楽をこの船とともに過ごしてきた。


みやこ浄土ヶ浜遊覧船 ガイド・金澤明美さん:
実はここは、元々は津波によって壊れた防波堤でした。改修工事が行われて、ようやく去年の9月に完成したところ、(去年)10月の台風で、またここが崩れました

この日も名所だけではなく、自らの体験をふまえた東日本大震災の話など、ここでしか聞けない説明をしていた。

遊覧船は1962年から運行が始まり、最盛期には10隻が運航していた。


しかし、その後は利用者が減少し、船も3隻にまで減った。
そんな折りに降りかかったのが、2011年の東日本大震災。


津波で2隻が廃船となったが、とっさの判断で、最後の1隻を沖に出し救ったのが、今なお船長を続ける坂本繁行さん。


みやこ浄土ヶ浜遊覧船 船長・坂本繁行さん:
怖いという感覚はないです。いつも地震があれば船を沖に出すというのは、しょっちゅうやってましたからね

坂本船長らの努力もあり復活した遊覧船だったが、震災後は、一時的に客足が伸びたものの、2018年には4万人を下回り、厳しい経営状態が続いていた。
また、スタッフの高齢化が重なり、これ以上事業を続けていくことができないと、運営する岩手県北自動車が苦渋の決断を下した。

みやこ浄土ヶ浜遊覧船 船長・坂本繁行さん:
残念だなって感じ。30年近くここにおりますけども、自然を他(県)のお客さんたちが見られなくなるんだなって感じですね。だから寂しさがありますよね


「寂しいところは見せずに楽しく最後まで…」

複雑な思いで事業の終了を受け止めている金澤さんや坂本さんだが、ある思いが2人を支えている。

みやこ浄土ヶ浜遊覧船 船長・坂本繁行さん:
(2011年)7月16日に再開したときは、遠くの人は茨城から来ましたよ。すごいなと思って

みやこ浄土ヶ浜遊覧船 ガイド・金澤明美さん:
「ボランティアはできないけれども、宮古にお金を落とすことはできる」ということで、その考えで来たというお客様がいて、本当に感謝の気持ち

あの日から今まで自分たちを支えてくれた全国の人に、1人でも多く思いを伝えたい…
その気持ちが、今の原動力になっている。

みやこ浄土ヶ浜遊覧船 ガイド・金澤明美さん:
お客様とともに思い出を作って、楽しく終わりたいなと思っております。寂しいんですけれどもね、そういうところを見せないように楽しく終わっていきたいなと


みやこ浄土ヶ浜遊覧船 船長・坂本繁行さん:
残り少ないけど、安全を第一に、けがや事故がないように一生懸命やりたいと思います


運航終了まで残り5カ月ほど。最後の最後まで訪れる観光客へ感謝の気持ちを込めて、きょうも遊覧船は三陸の海を走り続ける。

(岩手めんこいテレビ)

(FNNプライムオンライン8月22日掲載。元記事はこちら

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