テレワークでけがや病気...これって労災になる? 専門家に聞いた意外な“認定条件”

暮らし 仕事・労働

  • テレワーク中にけがや病気となったら労災となるのか
  • 認定のポイントは、業務遂行性と業務起因性
  • 業務中だったと立証できる証拠を残すことが大切

テレワークでのけが・病気は労災?

2020年はテレワークが社会的に普及した年となった。新型コロナウイルスの感染拡大が長期化していることもあり、自宅で仕事をする時間が増えた人もいるのではないだろうか。

こうした中で気になるのが、テレワークの最中にけがや病気をした場合、労災と認定されるのかということ。自宅が仕事場となった場合の環境は人それぞれだろうし、落ち着ける環境を求めて近場のカフェなどを利用して、働く人もいるだろう。

だが、けがなどはいつ当事者になるのか分からない。どこで働いていても、倒れてきた物がぶつかる可能性もあれば、転んで骨折する可能性もある。労働者はどう対応すればいいのだろうか。

今回は労務問題に詳しい、大槻経営労務管理事務所の特定社会保険労務士・三戸礼子さんに、テレワークと労災についての考え方を聞いてみた。

業務遂行性と業務起因性がポイント

――テレワークでのけがや病気は労災?

実は労災の認定に、テレワークであるかどうかは直接関係ありません。けがや病気の要因に「業務遂行性」と「業務起因性」があれば、労災と認められる可能性は高いです。


――業務遂行性と業務起因性とは、どういうこと?

業務遂行性とは、労働契約に基づく会社の管理下・支配下にあり、業務命令に従っている状態であること
です。例えば、一般的な会社勤めならオフィスにいることで会社の管理下に置かれ、上司から業務命令も受けているので、業務遂行性が認められます。

業務起因性とは、けがや病気の原因が業務に起因していることです。つまり、業務をしたことによってけがなどをしたということですね。例えば、会社の管理下にあっても、休憩時間の自由な行動でけがをしたりすると、業務起因性は認められません。

労災は業務に起因するけが・病気が対象(画像はイメージ)
労災は業務に起因するけが・病気が対象(画像はイメージ)

在宅勤務で腰痛を発症した人が労災不認定となった例も

――テレワークに業務遂行性や業務起因性はある?

労災の認定は労働基準監督署(労基)が判断するので、一概には言えませんが、テレワークだと自宅などでの業務となるので、会社の施設管理下にはないですが、会社からの指示(命令)を受けて業務を行うことになりますので、業務遂行性はあるといえるのではないでしょうか。

業務起因性はケースバイケースです。実際の例だと、在宅勤務で腰痛を発症した人が労災を申請して不認定となったことがあります。労基の調査で座り方の姿勢が良くないことが分かり、腰痛の原因が自分自身にあると判断されたためです。


――自宅での災害でけがなどをした場合は?

地震や台風などの「天災地変」は、労災の認定外
となります。労災は事業主の責任が問われるものですが、自然災害は事業主の責任ではないため、原則、業務起因性が認められません。

地震などの災害では認定されないという(画像はイメージ)
地震などの災害では認定されないという(画像はイメージ)

生理的行為は業務として認められる

――自宅でけがなどをしたらどう対応すればいい?

けがなどをすると気が動転するかもしれませんが、まずは会社に連絡して、どうすればいいかの指示を受けるべきでしょう。病院で診察を受けるときも、「業務中にけがをしてしまって」などと状況を説明することが大切です。通常の診察では、治療費の3割が負担となりますが、労災と認定された場合は治療費はかかりません。


――自己責任となる可能性が高い、行動は?

所定労働時間内でも、私的行為とみなされた場合は労災には該当しません
。例えば、いわゆる「中抜け」をして、子供を保育園に送迎したり、両親を介護したりしているとき、または休憩時間に食事を用意している最中にけがなどをしても、それは労災とは認められません。

子供の送迎などは私的行為となる(画像はイメージ)
子供の送迎などは私的行為となる(画像はイメージ)

――労災と認められやすい、意外な行動は?

トイレをしようと動いて転んだのであれば、認められる可能性があります。排せつや喉の渇きといった、生理的行為は業務に付随する行為として認められるためです。

生理的行為は業務に付随する行為とみなされる(画像はイメージ)
生理的行為は業務に付随する行為とみなされる(画像はイメージ)

――新型コロナウイルスに感染した場合は?

感染経路が業務中であったことが確認できれば、労災と認められる可能性はあります。例えば、2~3日前にオフィスに出社したときに事務所に感染者がいて、そこでの濃厚接触で感染してしまったなどでしょうか。

業務中だった証拠を残すことが大切

――業務時間外(始業前やサービス残業)のけがなどは?

業務時間外であっても、業務遂行性や業務起因性の考え方に変わりはありません。ただ、テレワークの場合はその時間に働いていたことを証明できなければ、労災の認定は難しいと思います。残業を申請した証拠、仕事で使うPCのアクセスログなどが必要になるかもしれません。


――カフェなどに移動して仕事をする場合は?

これも同じで、移動や業務に業務遂行性と業務起因性があれば労災と認められます。ただ、けがなどをした時間がお昼どきだったりすると、「昼食を食べにいっただけでは?」と捉えられてもおかしくありません。業務中であったことを証明するため、いつ・どこで・なにをしていたかを立証することが必要になってくるでしょう。

仕事をしていたことを立証する必要が出てくる(画像はイメージ)
仕事をしていたことを立証する必要が出てくる(画像はイメージ)

――けがや病気をした場合に備えて、個人ができることは?

労災が起きないように注意するのが一番ですが、起きた後のことを考えると、業務をしていたと主張できる証拠を事前に残すことではないでしょうか。例えば、業務の開始時間と就業時間をメモに書いておくという方法があります。毎日続けていれば、証拠となります。

馴染みのカフェであれば、お店の関係者などの第三者に現認者(災害発生の事実を確認した者)となってもらう方法もあります。このほか、スマートフォンのカメラでけがなどをした状況を撮影しておくことなども、証拠になり得るかもしれません。

業務中だったことが第三者からみて分かることが大切(画像はイメージ)
業務中だったことが第三者からみて分かることが大切(画像はイメージ)

――実際にけがなどをしたらどう考えるべき?

労災かどうか判断しにくいが、実際は労災だったということもあります。会社が協力してくれるかは別ですが、労災の申請自体は本人が直接できますし、認められると、病院の治療費、休業分の賃金の補償にもつながりますので、まずは申請してみるという考え方も一つだと思います。


テレワークでも、けがや病気の発生に業務遂行性と業務起因性があれば、労災と認められる可能性は高いようだ。ただ、テレワークの場合はそれが立証しにくい側面もあるので、気になる人は始業・就業時間のメモなどを残すといった、備えをしておくべきかもしれない。

(FNNプライムオンライン9月4日掲載。元記事はこちら

https://www.fnn.jp/

[© Fuji News Network, Inc. All rights reserved.]

FNNニュース