12月に景気息切れ、追加措置か 長期化する大規模金融緩和…新政権と連携する日銀の課題

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  • 新首相と総裁が初会談で「連携確認」
  • 12月には景気息切れも…追加緩和措置か
  • 菅首相の2つの「こだわり」…日銀の対応は

「連携を確認」菅首相と黒田総裁が初会談

9月23日、就任後の菅首相と初めて会談した日銀の黒田総裁。
首相官邸で約40分にわたって行われた会談では、菅首相からは金融政策に関する話は特になかったようだが、黒田総裁からは、日銀の金融政策の考え方について説明がなされた。
その上で、政府と日銀が連携しての政策運営を継続する方針で一致したという。

黒田総裁:
首相とはこれまでも機会をとらえてお会いし、経済・金融情勢について意見交換をしてきた。菅首相就任後も同様のことをしたいと思っており、今回が最初になった

黒田総裁は会談後、こう述べた。
黒田総裁は安倍前首相と定期的に会談してきたが、今後は菅首相との会談を継続する意向を示した。

日銀・黒田総裁(9月23日 官邸)
日銀・黒田総裁(9月23日 官邸)

 

この後、大阪の経済団体とオンラインで懇談した黒田総裁は、終了後の記者会見でも、菅首相との会談について以下のように話した。

黒田総裁:
今回は菅首相就任後初めてだったものですから、今後とも政府と日本銀行がしっかりと連携していくことを確認したということであります。
首相とお会いして、経済や金融についての意見交換をするということは、いわばエスタブリッシュされた慣行であると考えております。

日銀・黒田総裁 大阪経済4団体共催懇談会終了後記者会見(9月23日)
日銀・黒田総裁 大阪経済4団体共催懇談会終了後記者会見(9月23日)

 

安倍前政権では足並みそろえ…スピード感ある連携

「アベノミクスの第一の矢」として、大規模な金融緩和を続けてきた日銀。
黒田総裁は9月17日の記者会見で、安倍前首相のもとで7年以上にわたり進めてきた経済政策について、「雇用が大幅に拡大し、デフレの状況ではなくなった。全体として大きな成果だった」と評価した。

また、直近のコロナ対策でも、政府と日銀は「あうんの呼吸」で、コロナ禍で苦境に陥る企業への支援を強化。スピード感のある連携ぶりを見せた。


4月7日 政府は、企業の資金繰りを支えるため、民間の金融機関が実質無利子・無担保の融資を行う仕組みを盛り込んだ緊急経済対策を決定。5月から実際に融資が始まった。
すると、日銀は5月22日 臨時の金融政策決定会合を開いた。
そして、政府の緊急経済対策に基づく無利子・無担保融資などを行った金融機関に対し、金利0%で資金を貸し出す新たな資金供給策を決定。
さらに、企業への積極的な融資を促すため、利用実績に応じて金融機関が日銀に預けている当座預金に0.1%のプラス金利を付けるという、金融機関に有利な条件まで付けた。

金融政策決定会合に向かう黒田総裁(5月22日)
金融政策決定会合に向かう黒田総裁(5月22日)

 

菅政権と協調…12月にも追加緩和措置か

9月23日のトップ会談で、連携を確認した政府と日銀。
では今後、具体的な連携は、どのような場面で想定されるのか。
明治安田総合研究所の小玉祐一チーフエコノミストは、以下のように分析する。

明治安田総合研究所・小玉祐一チーフエコノミスト:
次回10月28、29日の金融政策決定会合も、おそらく(金融政策は)すえ置きとみるが、その次の 12月17、18日の会合までには生産、消費とも反動増局面が一巡し、景気の息切れが明らかになっている可能性が高い。
対面サービス関連を中心に、需要の戻りの鈍さに苦しんでいる業種も多い。

明治安田総合研究所・小玉祐一チーフエコノミスト
明治安田総合研究所・小玉祐一チーフエコノミスト

明治安田総合研究所・小玉祐一チーフエコノミスト:
(政府側の動きとしては)12月には、そうした企業への追加支援策を含んだ第3次補正予算の編成が俎上に載ってくる可能性が高い。
菅政権が、日銀と協調してコロナ対策に注力する姿勢をアピールできる最初の機会となる可能性が高いこともあり、日銀も歩調を合わせて、政府の支援策へのバックファイナンスの追加を中心とした追加金融緩和策を打ち出す可能性が考えられる。

12月にも追加緩和措置はあるのか。
黒田総裁も、先述の企業の資金繰り支援策について「必要と判断すれば延長も十分にあり得る」と、2021年3月までの期限の延長を検討する方針をすでに示している。

菅新首相の「こだわり」…日銀の対応に注目

菅首相は9月16日の就任会見で、アベノミクスの成果として、為替や株価など「マーケット市場の安定」と「雇用の改善」を強調。
今後の経済政策においても、新首相の「成果の基準」「こだわる点」になると見られている。

こうした中、9月16日、アメリカのFRB=連邦準備制度理事会は、事実上のゼロ金利政策を少なくとも2023年末まで維持する見通しを示した。
物価上昇率が一時的に目標の2%を超えてもゼロ金利政策を続ける姿勢だが、アメリカの低金利の長期化は、ドル安(円高)圧力を強めやすい。
実際、翌日の東京外国為替市場は1ドル104円台半ばまで上昇し、約1か月半ぶりの円高水準となった。
市場で円高・株安が進めば、政府は日銀への緩和圧力を強める可能性もある。


このため日銀は、2%の物価上昇という目標を、現在どんなに達成が厳しい状況でも取り下げることは難しいと見られ、金融緩和は長期化も予想されている。
しかし、長引く金融緩和をめぐっては、国債の大量購入を続ける日銀の財務状況の悪化も懸念されている。
また、金融機関の収益悪化といった副作用が顕在化する恐れもある。

こうしたマイナス面にも配慮しながら、当面の重要課題であるコロナ対策、そして新首相もこだわる「金融市場の安定化」に向けて、日銀はどのように対応していくのか?
政府と日銀の関係には一定の距離感も求められる。
残り2年半の任期を全うする考えを示した黒田総裁の舵取りが注目される。

(フジテレビ経済部 日銀担当 土門健太郎)

(FNNプライムオンライン9月29日掲載。元記事はこちら

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