孔鉉佑駐日中国大使に聞く「日本は自国の国益だけでなく地域貢献を」 米中対立の裏にある思惑は

国際 政治・外交

  • 「対中叩きをするアメリカの背景には中国はパートナーか脅威かの議論がある」
  • 「アメリカによって中国の体制が変化することはなく、その必要もない」
  • 「米中関係の利害関係者である日本には、地域の安定に貢献する対米関係を望む」

今回の放送では、駐日中国大使の孔鉉佑(こう・げんゆう)氏をスタジオに迎えた。日本に対する仕事において豊富な経験を持ち、2019年より大使を務める孔氏は先月、大使館のホームページに中国関連の問題についての論述を発表するという異例の発信を行った。米中対立が深まる中、日本国民に対する日本語での発信にはどのような狙いがあるのか。日本にどのような役割を求めるのか、掘り下げてたずねた。

アメリカの「中国叩き」の背景


長野美郷キャスター:
孔大使が先月29日付で大使館のホームページに論述を発表されました。タイトルは「中国関連の問題を見るいくつかの視点」。この中で、「中米関係悪化の原因と活路は?」と題してアメリカによるチャイナ・バッシングについて述べています。まずはこの米中関係について。

孔鉉佑 駐日中国大使:
中米関係はすでに40年余り。1972年に、発展段階、国の体制、歴史や文化など様々な違いがあると双方が認識した上で、それぞれの国家利益と世界の平和・安定のため和解に踏み切りました。現在までには波風もあり、依然として複雑な問題も残る。しかし、この関係は中米の2国のみならず世界に対しても非常に大きな意味がある。お互いに尊重し合い、平等な立場で建設的な協力を行い、さらに安定した大国関係、世界に貢献できる関係に進めていかなければならないと思います。

ドナルド・トランプ米大統領(左)、習近平 中国国家主席
ドナルド・トランプ米大統領(左)、習近平 中国国家主席

反町理キャスター:
アメリカはなぜ中国叩きをするのか。例えばかつて日本は、GDPがアメリカの6割ほどになったときには徹底的にやられた。しかし中国の場合、経済成長すれば民主的な国になるのではと思われている間に6割を超え、将来的にアメリカを抜く国になりつつある。アメリカはラストチャンスとして中国を必死に叩こうとしている、と我々は認識しています。

孔鉉佑 駐日中国大使:
経済規模の大きくなった中国に対し、引き続きパートナーとして見なすべきか、あるいはライバルとして、ひいてはアメリカの発展と国家の安全への脅威と見なすべきかという点について、アメリカ国内でいろんな議論・変化が見られる。バッシングの背景にそれがあるのでは。

アメリカも中国も互いを変えることはできず、その必要もない

孔鉉佑 駐日中国大使
孔鉉佑 駐日中国大使

反町理キャスター:
現在のパクス・アメリカーナに代わるパクス・シノワというように、中国が覇権国・世界のリーダーとして国際秩序を安定させる立場になる用意があるのですか。

孔鉉佑 駐日中国大使:
我々の経済発展、国が大きくなることにつれて、今までと異なる責任の取り方・果たし方も問われている。自国の発展だけではなく、特に発展途上国のより良い発展にチャンスを与えていくことが非常に重要だと。これに力を尽くすと再三表明しており、政策面で実行している。
同時に、例えば気候変動、環境、テロ、感染症対策といったグローバルな問題。これらに対応するには世界各国の連携が不可欠。中国は国際社会の重要な一員として、アメリカを含む国際社会と十分に協力しながら大国としての責任を果たしていく用意が十分にあります。

反町理キャスター:
中国側から見たとき、米中対立の本質はどこにあるのでしょう。

孔鉉佑 駐日中国大使:
やはり、いかに平和共存するか。中米関係は非常に難しい関係。そこで両国関係発展の4原則。「衝突せず」「対立せず」「相互尊重」そして「協力関係」を目指していきたいと考えます。

長野美郷キャスター(左)、反町理キャスター(中)、孔鉉佑 駐日中国大使
長野美郷キャスター(左)、反町理キャスター(中)、孔鉉佑 駐日中国大使

反町理キャスター:
G2という言葉がある。中国とアメリカが世界を2つに分け、それぞれが覇権国として世界をマネージするようなイメージ。これまではパクス・アメリカーナともいわれ、アメリカが世界の国際的な秩序を維持させてきた。中国も無視できないぐらいの経済力と影響力を持ってきたから、中国が影響力を及ぼす範囲と、アメリカが影響を及ぼす範囲という意味において安定した大国関係を作るべきであるという理解でよろしいか。

孔鉉佑 駐日中国大使:
G2という言葉は我々の言葉ではない。報道で聞いたことはあるが、我々はそのような言い方には賛成しかねます。我々が堅持している原則は、今まで世界の平和と安定を保ってきた多国間主義。世界の重要事については世界各国が一緒に相談し解決する。政治的合意に基づき、世界の平和と安定を維持していく。
さらに世界の経済の成長と繁栄を支えてきた自由貿易体制も堅持すべき。一国主義は時代に逆行するもので、国際社会の利益に合致しません。

反町理キャスター:
自由主義か共産主義かという分け方をする人もいる。自由貿易体制は経済における主義主張だが、政治的なそもそもの自由については。中国がアメリカとの安定した大国関係を望むのであれば関わってくる話と思うが、政治的な自由を認めるかどうかという点については。

孔鉉佑 駐日中国大使:
アメリカは確かに我々と違う体制で、これからもその違いは続く。我々はどのような困難があっても、14億もの国民が選択した国の体制をこれからも堅持していく。アメリカは中国を変えることはできない。中国もアメリカを変えることはできない。変える必要もない。
同時に、多様化する世界の中でお互いに尊重し、平和的に共存し、切磋琢磨してともに成長していく。それしか正しい選択はない。

日本に対し「地域への貢献」を望む

習近平中国国家主席(左)、菅義偉内閣総理大臣
習近平中国国家主席(左)、菅義偉内閣総理大臣

反町理キャスター:
米中対立の中、駐日大使が意見を大使館のホームページに日本語で出されたということは、当然日本国民に読んでほしいはず。日本に何を期待するのでしょう。

孔鉉佑 駐日中国大使:
日本は中国の重要な近隣諸国のひとつ。この地域におけるアメリカの重要な盟友である。すなわち日本は、中米関係のこの利害関係者。安定した中米の大国関係構築の面で、日本も役割を果たすことを希望しています。このような関係により、この地域で平和共存・共同発展を図ることができる。
ホームページに出した意見は、日本国民の皆さんにとって、アメリカからの情報だけではなく中国側の言い分も比較して問題を把握するに役立つのでは

反町理キャスター:
日米間には日米安保条約という軍事同盟がある。そうした中、中国には日本との関係があり、アメリカとも共存したい。すると中国としては、日米同盟破棄とは言わないが、日本がアメリカから少し距離を置くことを望むか。

孔鉉佑 駐日中国大使:
日本のアメリカとの付き合い方については、自国の国益に基づき日本が判断すること。だが同時に、日米関係はすべてではない。日本は、日本の国益だけではなくこの地域の重要な一員として、この地域の安定・安全そして地域の発展につながるような形で、日本はこれからのアメリカとの関係を取り扱ってもらいたい。


尖閣問題「国民感情の対立を煽るのは賢明ではない」

反町理キャスター:
尖閣諸島について。今日(10月16日)も、尖閣の領海内に中国の海警の船2隻が60時間弱、我々からすれば領海侵入をしていました。大使は尖閣の問題について、日中間の最大の違いは中国が尖閣での日本公船の活動について騒ぎ立てていないことだと。立場の食い違いを無視するのは建設的ではなく、対話で双方受け入れ可能な解決策を見出すことが大切だと書かれています。

孔鉉佑 駐日中国大使:
我々は日本でいう尖閣諸島を釣魚島と呼びますが、両国が大局的見地に立ってしっかりと意見の相違をマネジメントすることが重要。対立の結果情勢がエスカレートし、両国関係が正しい方向から離脱することは極力避けるべき。お互いに国民の感情の対立を煽り立てるようなやり方が賢明なやり方であるとは思わない。
同時に、少しでもプラスの意味があることを行うべき。例えば海洋気象や、海洋環境の保護について。また海上捜索・相互救助や防災。これらの問題についてはお互いにさまざまなことができる。日本側にそれなりの意向さえあれば、我々も話し合いを通じてできる限りの協力を追求していきたい。

BSフジLIVE「プライムニュース」10月16日放送

(FNNプライムオンライン10月19日掲載。元記事はこちら

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