「障害があっても諦めない」全盲女性が14年かけて大学を卒業…盲導犬と歩む努力の日々

社会

  • 生まれながらの全盲でも大学に通う66歳女性
  • 盲導犬と一緒なら細い道も買い物もお手の物
  • 14年かけてついに…卒業式では代表としてあいさつ

香川県の小豆島に住む全盲の女性が9月、大学を14年かけて卒業した。
「目が見えなくても学びたい」その思いを取材した。

盲導犬と共に自立した生活

大学に向かうため、高松へ移動する船の中は貴重な勉強の場。
手にしているのは、教科書の内容を点字で表す機械。
香川・土庄町に住む室崎若子さん(66歳)は、生まれながら視覚に障害があり、両目が見えない。


室崎若子さん:
障害があっても、勉強していけるのはありがたいです。もう14年も学生していたんだなという思いです


室崎さんが住んでいるのは、香川・小豆島にある昔ながらの漁村で、細い路地を歩くのも、買い物をするのも、盲導犬のタビラと一緒ならお手の物。


篠田吉央キャスター:
少し段差ありますよ。ちょうど右前方に瀬戸内海が広がっています。今 お昼すぎで、海面が太陽の光でキラキラと光っていますよ


室崎若子さん:
そうですか。波の音を聞くと、何かほっとします

7歳で親元を離れ、寄宿舎に

室崎さんは7歳の時に親元を離れ、高松市の盲学校に入学。高等部まで寄宿舎で過ごした。


卒業後は小豆島に戻り、マッサージ師や鍼灸師として生計を立て、1人で暮らしている。
30歳の時に盲導犬との生活が始まり、現在のタビラは6匹目。
白い毛並みと優しい顔が特徴のオス。


ーー盲導犬の存在は?

室崎若子さん:
体の一部ですね。盲導犬持たない時に比べたら行動的にもなったし、人に迷惑かけないなら自分で出来るようになりたい


盲導犬との出会いをきっかけに、何事にも前向きになった室崎さんが、14年前に決意したのが大学への進学だった。

室崎若子さん:
わたし自身、視野が狭いというか、自分の持っていることが少ないので、(大学で勉強して)色んなことを広めていきたいのがあった


指でなぞった点字を繰り返し声に出し、教科書の内容を覚える室崎さん。
様々な科目がある中で、特に学びたいと思ったのは「心理学」だった。


室崎若子さん:
わたし自身、「そうではないやろ」という否定的なことを言ってしまったりするので、勉強して、相手の気持ちを少しでも理解できたらなと思ったんです

地道に努力を積み重ね…ついに卒業

篠田吉央キャスター:
室崎さんが勉強するために、こちらの放送大学ではさまざまな支援を行いました


室崎さんが入学した放送大学は、テレビなどで学ぶ通信制の大学だが、単位の約2割は大学に出向き、対面の授業を受ける必要がある。
大学は最前列の席を室崎さんに用意し、より具体的に解説したほか、教科書や試験問題も点字や音声で対応した。


しかし、専門用語も多く、理解と定着には時間がかかった。
試験に落ちることが続いたが、地道に努力を重ね、7月にすべての単位を取り終えた。
14年越しの卒業。


室崎若子さん:
仕事もしていたので、勉強できていない時は、また再試験を受けないといけないのかなと思うこともありました

ーーそれでも頑張れたのは何故ですか?

室崎若子さん:
やっぱり、周りの協力があったからできたんだと思います

最も近くで支えてきた91歳の母親も、室崎さんの頑張りを何より喜んでいる。

母 和代さん:
わたしの子ですからね、頭が決していいわけではないです。だけど頑張ることには感心します。晩遅くまで起きて、いつも0時、1時まで起きている


妹 前川眞弓さん:
姉さんにプレゼントがあります


室崎若子さん:
ありがとうございます

妹が用意してくれたのは、卒業式のためのスーツ。
色は室崎さんが好きなピンクで、ジャケットとワンピースの裾全体にバラが刺しゅうされている。


室崎若子さん:
うれしい反面、恥ずかしいです

卒業式当日。
室崎さんは、いつものように船に乗り込むが、どことなく緊張した様子。
実は、卒業生代表としてあいさつすることになり、高松に着くまで何度も点字の原稿を確認していた。
14年間通い続けた道を通り、卒業式に臨む。
この日も最前列に座る室崎さんに、所長が歩み寄る。


放送大学香川学習センター 有馬道久所長:
卒業証書、室崎若子。以下同文です。おめでとうございます

卒業生代表あいさつでは…

室崎若子さん:
家庭と仕事の生活の中だけでは経験できない、色々な人との貴重な出会いの機会を、放送大学で得られたことを感謝いたします


受け取った卒業証書をタビラに見せる室崎さん。
その表情は誇らしげ。


室崎若子さん:
諦めたら、ここまでこれていないだろうな。これで終わるのでなく、ぼつぼつ続けて勉強していきたいと思っています

「障害があっても諦めない」
室崎さんが歩んだ14年の日々は、その強い意志を物語る何よりの証。


篠田吉央キャスター:
諦めない心が一番の学びだと思いました

【取材後記】
岡山放送(OHK)で1993年から続くニュース特集「手話が語る福祉」。
手話でどう表現すれば聴覚障害者に伝わるのか…毎月、手話通訳者と聴覚障害者で構成する手話放送委員会にも協力してもらいながら取り組んでいます。
今回のテーマは“視覚”に障害がある中で、14年かけて大学を卒業した人です。
「耳で聞いて情景が浮かぶようにする」「主語や表情を明確に記す」など、岡山盲学校の先生と協議しながら耳で聞くだけでもわかるニュースを心がけました。


「手話が語る福祉」のコーナーは、回を重ねるごとに協力してくれる人が増えています。


(「手話が語る福祉」担当アナウンサー篠田吉央)

(FNNプライムオンライン10月20日掲載。元記事はこちら

https://www.fnn.jp/

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