「学者の傲慢」か、「総理の闇討ち」か…キーマンが日本学術会議会員の任命拒否問題を激論

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  • 任命拒否された岡田氏「理由を言わないで排除するのは卑怯」
  • 大西元会長「これまではリストを官邸に事前説明」
  • 学術会議の独立について大西元会長「現在の形態が一番」

日本学術会議が推薦した会員候補のうち6人を菅総理が任命拒否した問題の余波が広がりを見せている。今夜の論点は任命の主権の所在とその行使、総理の説明責任について。さらにそもそもの日本学術会議のあり方について、議論の中で掘り下げる。
スタジオには、日本学術会議元会長の大西隆氏、元会員で自民党参議院議員の猪口邦子氏、そして今回任命を拒否された岡田正則氏とジャーナリストの門田隆将氏を迎えた。

個別理由の説明は必要か


竹内友佳キャスター:
日本学術会議の会員候補6人を菅総理が任命拒否した問題。共同通信の世論調査では、菅総理の任命拒否に対して適切だと答えた人が35.5%、不適切が45.9%です。菅総理の説明について十分だと答えた人が16.1%、不十分が72.7%。

大西隆 元日本学術会議会長 東京大学名誉教授:
説明を受けて適切かどうか判断したいという人もいると思うので、不十分だと考えている人が72.7%と多い点が印象的。

大西隆 元日本学術会議会長 東京大学名誉教授
大西隆 元日本学術会議会長 東京大学名誉教授

竹内友佳キャスター:
岡田さんは任命拒否された当事者で、反対集会などに参加されています。

岡田正則 早稲田大学大学院法務研究科教授:
理由がわからず排除され、このままでは疑心暗鬼になって自分たちの研究に落ち着いて取り組めないという声が多い。

竹内友佳キャスター:
元会員でもある猪口さんは。

猪口邦子 自民党参議院議員:
推薦と任命は同義ではない。自動的に決まるなら、法律に基づく総理の仕事が形骸化してしまう。今回はその仕事がはっきりとなされた。学術会議には知識の最高峰としての役割があるが、コロナの時期に沈黙していたことも背景にあるのでは。今後より広く一般的な説明をしてもよいが、個別の理由を説明すべきではない


作家・ジャーナリスト 門田隆将氏:
世論調査の結果はこんなものでしょう。まだ国会での議論にもなっておらず、今回の経緯がわからない。国民は不十分だと考える。
私もサラリーマン時代に査定され、部下を査定してきた。しかしその理由は開示されたことがないしされるべきでない、それが組織。ただ個々人を論うような説明はしない方がいい。

岡田正則 早稲田大学大学院法務研究科教授:
まず、我々は総理の部下ではない。そして学術会議による評価は既に済んでいる。にもかかわらず、個人の理由については言わないでおいてあげるという言い方で排除するのは大変卑怯だと思います。

官邸への事前説明はなかった?

作家・ジャーナリスト 門田隆将氏
作家・ジャーナリスト 門田隆将氏

作家・ジャーナリスト 門田隆将氏:
公務員の選定・罷免は国民固有の権利だと憲法第15条にある。そして国民の代表である菅総理に会員の任命権があると、学術会議法の7条にある。そこで、改選される定員105人より多くの会員候補を推薦名簿に載せ、任命にあたり判断の余地を残す形で何年もやってきた。今回推薦されたのはちょうど105人で「すべて任命しなさい」という挑戦的な形。政権ではなく、学術会議側が仕掛けたという見方もできる。

大西隆 元日本学術会議会長:
今のお話は非常に誤解が多い。私が6年間会長だった間、2014年と2017年に半数改選があったが、ともに105人の推薦名簿を総理に出した。学術会議が仕掛けたというのは間違いで、挑戦も何もなく、選考プロセスは法律と会則できちんと決まっている。
その中で、事前に105人にプラスアルファとして6〜9人を加えたリストを示し官邸に説明を行った。本命の105人が誰かは伝わる形


反町理キャスター:
それは要するに「事前承諾を得るための」説明ですよね。そこには政治的ニュアンスがあった?

大西隆 元日本学術会議会長 東京大学名誉教授:
選考委員会でそこまで決めてきており、もし官邸側から名簿に異議があれば持ち帰り議論するが、それは起こらなかった。丁寧に説明し、その105人である理由を理解いただければ納得してもらえると考えていた。


作家・ジャーナリスト 門田隆将氏:
2017年にはその検討プロセスがあったが、今回はなかったはず

岡田正則 早稲田大学大学院法務研究科教授:
選考権も罷免権も学術会議法により学術会議という機関に委ねられている。ここでの任命は、選挙の当選証書交付と同じく形式的なもの。

「総理の闇討ち」か、「学者の傲慢」か


反町理キャスター:
日本に学者は80万人いるといわれる。学術会議の中に2200人。国税からは10億円超の国費が投入されている。ここに有権者である国民の意思が反映されているのかという問題。

作家・ジャーナリスト 門田隆将氏:
学術会議が基準に基づいて選考するのはよいが、「105人をそのまま任命するほかに余地なし」という姿勢には国民は誰も納得しない。民主主義国家ですから。

大西隆 元日本学術会議会長:
総理の任命権とは、学術会議がこの選考基準に照らして適切に選考しているのかを見ること。そこで総理に何か独自の判断基準があるのならば、少なくともそれを示してもらわなければ。6名が拒否された理由としての基準がないのはとんでもない状態。こうした混乱を総理が持ち込んではならない。

岡田正則 早稲田大学大学院法務研究科教授
岡田正則 早稲田大学大学院法務研究科教授

岡田正則 早稲田大学大学院法務研究科教授:
総理は総合的・俯瞰的に判断という。総合科学技術会議での「総合的」の意味合いは、理系だけに偏らず文系も含めて学問全体を見るということ。今回拒否された6人はすべて人文社会系で、むしろ「総合的」に反する。総理が総合的・俯瞰的にこの6人が不適格というなら、理由をきちんと説明できるはず。基準も示されなければ、闇討ちのようなもの。

作家・ジャーナリスト 門田隆将氏:
私たちには間違いがない、と無謬性を疑わない態度は学者の傲慢では?

大西隆 元日本学術会議会長:
学術会議に誤りがないというのではなく、最善のリストを作るために選考基準やプロセスのルールがきっちり定められている。
実際に判断するのは選考委員会や幹事会総会学術会議。専門家として詳細な評価ができるとして、法律で委ねられている。総理がそのプロセスを自ら行うなら、学術会議と同じようなものを作らなければならない。


反町理キャスター:
年に10億もの国費が使われることで議論の対象となる。独立して民間機関になる考えは?

大西隆 元日本学術会議会長 東京大学名誉教授:
学術会議の外にある国の有識者会議の評価では、現在の形態が一番よいと。世界的にも政府に提言する学術機関をサポートしていない主要国はない。科学が政策に反映されていることは民主主義国家の証だからです。

最先端の技術を理解しなければ戦争は防げない


竹内友佳キャスター:
日本学術会議のあり方について。日本学術会議は、戦争に科学が協力したことの反省から1949年に作られた、総理所轄の機関です。

大西隆 元日本学術会議会長:
「戦争を目的とする科学の研究には従わない」という声明は、1950年と1967年の2回出している。私はこれは現在の日本国憲法と通ずるものだと思っています。
ただ、学術会議は明確な声明を出してはいませんが、個人的に自衛隊については別な解釈があります。自衛のための装備がない状態では自衛にならず、その範囲の装備を自衛隊が持つ。日本の科学者がそのための研究をしたいとき、その学者の所属長などはそれぞれの判断において認めてもいいのでは、ということはある。

猪口邦子 自民党参議院議員:
現在の多くの技術にはデュアルユース、つまり軍事・民生の双方に使用される可能性がある。この観点を持ち技術の最先端を理解しなければ、戦争を防ぐために一番大事な国際法の制定において、我が国が主導権をとることが難しくなる。国際法の制定競争に負け、学術会議が戦争を防ぐために役立てなくなってしまう。

猪口邦子 自民党参議院議員:
猪口邦子 自民党参議院議員:

岡田正則 早稲田大学大学院法務研究科教授:
猪口先生のおっしゃる通りだが、軍事が出発点の研究では成果が機密指定となり、平和のための国際交渉や分析、他国の批判などに使えなくなってしまう。

作家・ジャーナリスト 門田隆将氏:
政治性の観点から。日本学術会議は1949年、公職追放令下でできた。GHQの占領下で、多くの学者も含む20万人が公職追放されていた。そこで一番力を発揮したのが共産党だった。その影響がずっと今も尾を引いている。

大西隆 元日本学術会議会長 東京大学名誉教授:
1983年を境にメンバーはほとんど入れ替わっており、そのようなことはない。

反町理キャスター:
本日は半分の内容しか議論できずに時間となってしまい申し訳ありません。ぜひ別の日に続きをやらせてください。

BSフジLIVE「プライムニュース」10月19日放送

(翌週同じゲストによる討論はこちら:中国の軍事研究に寄与している懸念は?軍事研究の是非は…当事者が日本学術会議について徹底討論

(FNNプライムオンライン10月21日掲載。元記事はこちら

https://www.fnn.jp/

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