“消えたインバウンド” 生き残りかけ新たな挑戦 国内ツアー参入の旅行会社「進むしかない」【福岡発】

経済・ビジネス

  • 外国人観光客が新型コロナで激減 インバウンド企業は方針転換
  • オープン5日後に休業した施設も… 国内需要も視野に新店舗へ
  • 国内ツアー参入の旅行会社では社員全員が添乗員資格を取得

新型コロナ影響 インバウンドの回復見通せず

仲村健太郎記者:
がらんとしています。広い駐車場なんですが、やはり観光バスは1台も止まっていません


2016年、福岡空港の近くにオープンしたインバウンド向けの施設。2018年の「春節」で取材した際には、800席ある広いレストランが、「爆食い」する中国人観光客で大にぎわいだった。


しかし現在、施設は3月以降、休業している。

KISS福岡・牧山強代表:
ここは以前、食器の洗い場だった。1日6,000人の洗い物。これ1つじゃ足りないから、もう1カ所あった

1日6,000人に上った観光客だが、今は、半年以上ゼロの日が続いている。


KISS福岡・牧山強代表:
お客さんが来なくなったあと、やむを得ず3分の2ぐらいの社員を解雇した


2003年にスタートした政府の訪日促進事業などを背景に近年、急増した外国人観光客。
九州でも入国者の数は右肩上がりで増え、2018年には最多となる511万人を記録したが、新型コロナの影響で2020年は激減してしまった。


インバウンドの回復が見通せず、大手の免税店が撤退に追い込まれる中、この施設では…

KISS福岡・牧山強代表:
会社の存続を考えて、新しいコンセプトを考えなくてはならない。イベント会場や展示会会場、国際会議の場所として使おうと、今考えている

レストランを主体としたコンセプトを変更し、今後は、イベントや会議の場として活用していくことを決めたという。
早速、10月に開いた骨董(こっとう)品のイベントには、国内から大勢の人が集まった。


“オープン5日後”に休業…「今は耐える状況」

「消えたインバウンド」をめぐる模索は、2020年に完成したばかりの商業施設でも…


仲村健太郎記者:
2020年3月、福岡市東区にオープンした大型の複合施設。施設の目玉だった九州最大級の免税店だが、店内は半年以上、ひっそりとした状態が続いています

照明が消えた店内に並べられた数千種類もの商品。


店を運営する会社の幹部は…

アレキサンダーアンドサン・間宮修平人事総務部長:
3月27日にオープンをして…。でも、やっぱりどうしても稼働ができない状況にあったので、4月1日からまた営業を停止している状態。今現在は、耐える状況がずっと続いておりまして

オープンのわずか5日後から休業を余儀なくされていた。


事務所に置かれたカレンダーも、3月で止まったまま。
インバウンドの動向はいまだ不透明なため、運営会社は今後、国内の需要も視野に入れた新たな店舗作りに乗り出す方針で、2021年4月のリニューアルオープンを目指している。


アレキサンダーアンドサン・間宮修平人事総務部長:
地元のお客さまにも当社のことを知っていただくために、11月15日から在庫一斉処分の大セールを計画している。免税店は、国内のお客さまへのサービスは全くノウハウがない。店員の教育もあるし、そこも含めてテスト的に11月にやってみようかと

インバウンド向け旅行会社も国内ツアーに参入

インバウンド向けの店舗がさまざまな形で方針転換していく中、福岡市内の旅行会社も生き残りをかけ新たな挑戦を始めた。

福岡市早良区の旅行会社「ドリームインターフェイス」。


ドリームインターフェイス チームリーダー・畠中美沙子さん:
素人なので、出来栄えは手作り感満載なんですけど

「GoToトラベル」を利用した国内向けの日帰りバスツアーのチラシを作っていた。

ドリームインターフェイス チームリーダー・畠中美沙子さん:
ツアーの中身をゼロからつくって、いろいろ関わるところを調べながらやっていくので、新しく勉強しないといけないところもたくさん増えています

実はこの会社、海外の旅行会社の訪日ツアーをサポートするインバウンド事業などで、2019年度は10億円の売り上げを記録した。

社員14人のうち、半数は外国人で、社長の楊さんも中国出身だ。
2010年の開業以来、インバウンドの増加とともに業績を伸ばしてきたが、新型コロナの影響で外国人観光客がゼロとなり、会社は一気に存続の危機に直面した。


ドリームインターフェイス・楊欣代表取締役:
貯蓄を切り崩して、スタッフの雇用をなるべく守っていきたい


最悪のケースも覚悟したが、「GoToトラベル」がスタートする直前、社員からある提案を受けた。

ドリームインターフェイス・楊欣代表取締役:
「国内旅行、何でうちの会社やらないの?」と。何もしないで終わるのが一番後悔するんじゃないかと

こうして始まった国内ツアーへの参入。後発だけに容易ではない。

男性:
山口県の錦帯橋の方まで行くツアーなんですけど、車エビの食べ放題。飲み放題つき。生ビール、焼酎、日本酒、酎ハイ

女性:
それは昼もできる?

男性:
昼でもできます。本来はできないんですが、お店の人と何回か話して

勝負のツアーは、高級シャインマスカットと鶏の炭火焼きの食べ放題ツアー。
料金は、利益がほとんど出ない6,900円に設定した。

ドリームインターフェイス・小椋志保マネージャー:
「GoToトラベル」があるおかげで、われわれは国内やれているというのは間違いない。ただ、GoToトラベルがなくなったらどうなるんだろうと。なので、このGoToを使って会社の名前を少しでも覚えていただこうと

成果は徐々に 配ったチラシは20万枚超

最大の課題は、どうやって売るか。国内に販売ルートはゼロ。
活路を求めたのは、チラシのポスティングだ。会議しながらも、社員全員でチラシを折る。


近場の福岡市から始めたポスティングだったが、今では北九州まで足を伸ばしている。
これまでに配った枚数は、20万枚を超えた。

社員:
よろしくお願いします


その成果は徐々に現れ…

ーー予約ですか?

社員:
はい。反応が出てくるとすごくうれしい

さらに、ツアー代金を支払いに、わざわざ会社を訪れるお客さんも。

ツアーを予約した客:
チラシを見て予約した

また、同業者も訪れた。

福岡伊都バス・越路輝男代表取締役:
このチラシ、うちで販売させてもらえないですか?

スタッフ:
ぜひぜひ

福岡伊都バス・越路輝男代表取締役:
通りすがりの客が、旅行に行きたいとうずうずしているけど、バス1台分は集まらない。便乗して1台になれば、お客さんに紹介できる。うちは糸島の方にあるバス会社なもんですから、西方面からの出発に使っていただきたいなと思ってごあいさつに来ました


ドリームインターフェイス・小椋志保マネージャー:
大手旅行会社は、ネットワークもたくさん持っていますし、広告宣伝もお金をかけてできますから、われわれとは見ている市場は違う。あえてアナログを取り入れていこうと思っているし、アナログを求めていらっしゃるお客さまに訴えていこうと思っています

社員全員で添乗員の資格を取得

ツアー当日。


ーーこれまで添乗員の仕事は?

ドリームインターフェイス・朴松虎さん:
全くしたことないので、先月からやっと日本人のお客さんを迎えることになっているので、まだまだ全然頭が空白

9月、社員全員で添乗員の資格を取ったという。


緊張の第一声は―。

ドリームインターフェイス・朴松虎さん:
皆さま、おはようございます。本日皆さまとご一緒させていただきます、添乗員の朴と申します。中国出身です


ドリームインターフェイス・朴松虎さん:
家で10回くらい練習してきましたが、やっぱり本番になると緊張します

利用客:
楽しみにしていました

利用客:
シャインマスカットって結構高いから、“めっちゃお得やん!”と言って、行こうと誘いました

最初の目的地、宇佐神宮に到着。

ドリームインターフェイス・朴松虎さん:
地域共通クーポンはこちらの店で使えるので、お買い物されるかたはクーポンで

お昼は、お待ちかねの鶏の炭火焼き食べ放題。添乗員も忙しく動き回る。
そして、いよいよメインイベントのシャインマスカット狩りへ。


ドリームインターフェイス・朴松虎さん:
黄色っぽいのが甘いです

甘い実の見分け方も、しっかり勉強してきた。

ドリームインターフェイス・朴松虎さん:
今はこれが生きていく道というか、頑張らないといけないところなので、もっともっとツアーを作って、もっともっとたくさんのお客さんに楽しんでもらいたいと思います。頑張ります!!

第一歩を踏み出した国内ツアーの見通しは不透明だが、社長は“進むしかない”と話す。

ドリームインターフェイス・楊欣代表取締役:
勝算は正直ないんですが、仕事がないよりは、あった方がいい。良い仕事をしてから利益を追求すればいいと思う

(テレビ西日本)

(FNNプライムオンライン10月24日掲載。元記事はこちら

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