首里城火災の最前線では何があったのか 消防士が経験した”異常現象”

社会

  • 正殿の火の気が強すぎて立てない熱さに
  • フラッシュオーバーで北殿や南殿に急速に延焼
  • 再建に向けて防災設備の強化や消防力の強化

2019年10月の首里城火災では正殿を含む6棟が全焼した。
現場で消火活動に当たった消防士の証言から「異常現象」が起きていた事が浮かび上がってきた。
熾烈を極めた最前線で一体何があったのか。

首里城火災で消火活動した消防士たち

中央消防署 首里出張所・宮平良智さん:
あの情景は思い出します、違う所に来た感じなんですけど


那覇市消防局の宮平良智さんは首里城火災の際、通報を受けて最も早く現場に着いた消防士。

中央消防署 首里出張所・宮平良智さん:
あの方向から進入してきまして、ちょうどこのトンブロックが積まれれているあたりから確認したのは覚えています。かなりの勢いで炎が噴き出していた


宮平さんが到着した午前3時ごろ、この時の消火活動は激しく炎上する正殿から北殿・南殿への延焼を防ぐかに重点をおいて展開された。


中央消防署 首里出張所・宮平良智さん:
まだ初期の方は、なんとか(御庭・ウナーに)居れる状況だったんですよ。だんだん炎の勢いが早くて。周り全体が熱すぎて最終的には立っていられないくらいの熱でして

続々と消防隊員が駆け付け放水を続けだが、炎は衰えるどころか勢いを増していった。
宮平さんと同じ隊だった玉城良さんはこの時、現場の「異変」に気付いた。

気がついたら炎に囲まれる状況に

中央消防署 首里出張所(火災当時)玉城良さん:
周囲の確認というのはずっとやってきたんですが、気が付いたら南殿であったり北殿に火の手が回っている状況で


正殿のみで上がっていた炎が、北殿や南殿に急速に延焼し始めた。

中央消防署 首里出張所(火災当時)玉城良さん:
あっという間に火の手が回ったという感じですね


突然、周囲で次々と起きた発火。この時、一体何が起きていたのか。

火災工学が専門の東京理科大学・松山賢教授は首里城火災で「フラッシュオーバー」が起きていたと分析している。

東京理科大学・松山賢教授:
フラッシュオーバーという現象は、火災起こって(屋内の)温度が上がってくると、可燃物自体が同時に着火し始める(現象)。そうしますと同時多発的に燃焼が起こってしまう


炎が上がり、温度が上昇する事で屋内で同時多発的に出火する現象「フラッシュオーバー」。
延焼は想像をはるかに上回る速さで北殿や南殿に進み、消防士達はたちまち炎に囲まれた。


東京理科大学・松山賢教授:
そのまま延焼拡大してしまって、さらに延焼、フラッシュオーバーっていう現象が起こっていくので、消すにあたっては長期戦になってしまう感じだと思います

活動開始から約30分。
炎上する首里城を目の前に消防士達は「一時退避」を余儀なくされた。


中央消防署 首里出張所(火災当時)玉城良さん:
初めての経験だったので、命の危険も感じながら、いつどうなるかわからない状況の中、どういうふうに活動していこうかなという感じでした

中央消防署 首里出張所・宮平良智さん:
間違いなく那覇消防が消防力劣勢、立ち向かえなかった火災ですよね

首里城火災では正殿を始め、北殿や南殿など6棟が全焼。
活動に従事した消防士は近隣市町村の応援も含め200人を超え、これまでにない規模となった。

首里城の焼失は避けられなかったのか。
再建に向けた国の技術検討委員会の委員を務める東京理科大学の関澤愛教授は「構造上、消し止めるのは困難」と話す。

東京理科大学・関澤愛教授:
正殿でもし初期消火出来ずに広がってしまうと、火元の建物(正殿)が極めて大きな火の塊になる

さらに、北殿と南殿が正殿に隣接し、延焼しやすい造りだったと分析している。

東京理科大学・関澤愛教授:
もう一つは正殿から繋がっている南殿から寄満(ゆいんち)、これ全部実際には回廊で繋がっているんですよね。言わば密集市街地のような構造になっていたわけであって、建物自体が延焼しやすい構造になっていたと


再建に向けて防災対策を強化

そのうえで関澤教授は、再建に向けて早期発見・初期消火の体制を強化するよう訴えている。

東京理解大学・関澤教授:
早期発見に関しては熱式感知器から煙式感知器へ。さらには煙が充満して中に入れない時に備えてスプリンクラー設備を設置する。これが早期発見、初期消火です


9月に開かれた国の技術検討委員会では、スプリンクラーの設置や火災報知器を煙感知式へ変更、といった防災設備の意見がまとまった。

消火活動は約12時間。
首里城火災は誰もが経験したことのない未曽有の災害となった。

中央消防署 首里出張所(火災当時)玉城良さん:
われわれ消防は最後の砦だと常に言われていて、そういう気持ちで一生懸命取り組んでいますが、それが出来なかった。抑える事が出来なかった。一番悔しい思いでした


中央消防署 首里出張所・宮平良智さん:
まさに無力だったというか力が及ばなかったというか。もっともっと消防力を上げていかないといけない転換期というか。そういう火災だったと思います。全ての面において

発生から間もなく1年が経とうとする今でも消防士たちは活動を振り返り自問する日々が続いている。


(沖縄テレビ)

(FNNプライムオンライン10月30日掲載。元記事はこちら

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