「焼けた跡の再建は自分の仕事」かつての首里城復元のキーマン 県民の思い胸に改めての挑戦

社会 文化

  • 城跡を残した先人たちの思いが首里城を復元
  • 防災対策・県民一体で次の首里城を再建
  • 先人が残した沖縄の歴史や文化を次世代に継承

首里城の火災からまもなく1年。
前回の首里城復元の立役者であり、次の再建の陣頭指揮を執る歴史学者・高良倉吉さんはある誓いを胸にこの再建に臨んでいる。


琉球大学・高良倉吉名誉教授:
1年前 ここに最初に来た時は、火災から1週間経っていたけど、個人的には胃が痛くて。30数年かけた作業が、こんななったんだなと


首里城再建のプロジェクトリーダーを務める琉球大学名誉教授の高良倉吉さん。
琉球史研究の第一人者である高良さんは、1992年の復元では古文書の収集や分析などの歴史考証を担った。

先人たちの思いが首里城復元に

琉球大学・高良倉吉名誉教授:
あとこれね。これが世界遺産


在りし日の首里城正殿の下には首里城の遺構がわずかに残されていて、これが世界遺産に登録され、歴史を今に伝えている。

琉球大学・高良倉吉名誉教授:
戦争が終わった後に、首里城が焼けて、城跡は琉球大学のキャンパスになる。普通だったら(遺構を)削って、コンクリートの基礎を作ったりするけど、そうしなかった。
(工事関係者が)遺構の上に土をかぶせて守って、その上に琉大の建物ができた。何ていうかな、さりげない配慮だけどね。そういったものが首里城を守ってくれた


こうした先人たちの首里城への思いが、前回の復元に繋がったと高良さんは語る。
1986年、首里城復元プロジェクトは沖縄の本土復帰20年に向けた記念事業として始動。
全国から研究者や職人が集結し、目指したのは沖縄戦で破壊される前の首里城ではなく、1800年代、琉球王国時代の首里城だった。


2020年4月の取材で、高良さんは当時の思いについて語っていた。

琉球大学・高良倉吉名誉教授:
現役だった首里城、つまり王国時代の首里城を復元しようと。沖縄という小さな島にこれだけ独特の歴史があって、それを象徴するのが首里城だと。次の世代の人間たちがそれを確認するためのものとして必要だと


しかし王朝時代の資料は戦争でほとんどが失われ、誰も目にしたことのない首里城を甦らせるのは困難を極めた。
手詰まりの状態のなか高良さんが奇跡的に出会ったのが、沖縄の文化に魅せられた東京都の研究者、鎌倉芳太郎の寸法記だった。

琉球大学・高良倉吉名誉教授:
衝撃を受けました。見た瞬間に「現役時代の首里城正殿はこれで復元できる」と、確信した資料がこれでした

寸法記には王朝時代の首里城の造形が事細かに記されている。


琉球大学・高良倉吉名誉教授:
(先人たちは)将来、首里城が復元されるなんて考えていないわけだから、ただ残せばずっと後の世代がそれを活用するかもしれない。やがて復元をしようと僕らが動き始めてみると、そういったものに繋がっていくわけですよ。いろんな人たちの気持ちがここで繋がるんだよね。首里城ってそういう存在なんだなと

建設から30年…県民たちの思いに変化

世代を超えた思いが繋がり甦った首里城だったが、当時は県民の関心も低く一部の専門家からは「歴史的価値の無い観光施設だ」と批判も受けたという。
それから約30年が経ち、一夜にして失われた首里城。


その時、高良さんが目の当たりにしたのは涙を流し、再建を願ってひとつになる県民の姿だった。

琉球大学・高良倉吉名誉教授:
特に若い人がね、あんなにも涙を流して反応してくれたから。首里城という存在を自分たちのものに受け止めていたんだなと。それはとても嬉しかったし、ああいう思いを2度とさせてはならないじゃないですか。焼けた後の首里城を再建するのは、また自分の仕事だなと。逃げたら、高良倉吉という男は何の意味があるのかと思ったから


こうして、二度目の首里城再建に挑む決心がついた高良さん。

今回の最大の課題は「防災対策」。
造形はそのままで、あらゆる事態に対応できるよう設備の拡充、防災計画の確立を図り、二度と燃えない首里城を目指す。


そしてもうひとつのテーマは、県民一体となった再建。
あの時の喪失感を忘れないよう、県民の力も借りながら作り上げていく。
焼損した赤瓦の再利用に向けて、ボランティアを募って作業する取り組みも2020年3月から始まっている。

ボランティアに参加した男性:
大きな力に頼るばっかりじゃなくて、みんなの首里城として再建できたらいいなと思っています


那覇市在住の女性:
(首里城に)一度も実は来たことが無くて。なんで行かなかったんだろうという思いもありましたし、大切なものだったんだというのも自分のなかで感じました


高良さんは再建の過程を通して思い描いていることがある。
それは先人たちが高良さんに繋いでくれたように、首里城への思い、沖縄の歴史や文化を大切に守り継いでいく心を次の世代に繋げること。

琉球大学・高良倉吉名誉教授:
首里城がどうやって復元されて、どういう技術や美意識によって成り立っているのかということを、もっと深く認識する、そういった人材が出てほしい。そうすると首里城も永遠に続くし、そういう状況を作ってほしいなというのが僕の希望です


(沖縄テレビ)

(FNNプライムオンライン10月31日掲載。元記事はこちら

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