70年前の消防資料が語る教訓 避難訓練と日頃の備えで聴覚障害者を火災被害から守る

社会

  • 16人が死亡した70年前の岡山盲・聾学校寄宿舎火災
  • 当時の消防資料が見つかり、分析結果を聴覚障害者の避難に生かす
  • 資料には「避難訓練の必要」「痛感」の文字…生徒たちも同じ訴え

16人が亡くなった70年前の岡山盲・聾学校寄宿舎火災

色あせた冊子は、70年という時の流れを物語る。岡山市消防局に眠っていた昭和25年の火災原因分析カード。その年に起きた火災について記録したもので、そのうちの1枚が今回、特別な許可を得て初めて公になった。


見つかった火災原因分析カード:
二十日午前二時頃発火し、天井を伝って同室から隣室へ、更に二階建ての寄宿舎に延焼したものと認められる。静養室(1階西端にあった部屋)が真っ赤になって


その火災は、昭和25年12月20日未明に発生し、岡山盲学校・聾(ろう)学校の児童生徒が住む木造2階建ての寄宿舎を全焼した。
当時、1階で寝ていた盲学校生は全員無事だったが、2階にいた耳が聞こえない聾学校生72人のうち、小学部1年から5年までの16人が亡くなった。危険を知らせるために打ち鳴らされた太鼓の音は届かなかった。


突然の火災に生存者は「どうすることもできなかった」

篠田吉央アナウンサー:
こんにちは。よろしくお願いします

この火災から助かった1人が、岡山市南区に住む伴徹さん(79)。当時、小学部3年だった。

篠田吉央アナウンサー:
火事の時のことを覚えていますか?

寄宿舎火災で生き延びた伴徹さん(当時小学部3年):
はい、覚えています。煙の臭いで気がついた。その時は、もう火は近くに迫って来ていた。でも、その時は逃げ場がなかった


伴さんは、当時の間取りを記録に残している。火元は1階の静養室とみられていて、2階の部屋に記された数字が亡くなった子どもの数。

篠田吉央アナウンサー:
伴さんがいたのはどこですか?

寄宿舎火災で生き延びた伴徹さん(当時小学部3年):
ここ。2階から階段を下りて、玄関の扉を開けて逃げようと思った。でも 逃げられなかった


伴さんは、先輩に引っ張られ、非常階段から何とか逃げたが、突然の出来事にどうすることもできなかったと振り返る。

寄宿舎火災で生き延びた伴徹さん(当時小学部3年):
聞こえる人と聞こえない人との違いがあったと思う。例えば(聾者は)聞こえなくても見える。でも夜だったら真っ暗


篠田吉央アナウンサー:
避難訓練はしてましたか?

寄宿舎火災で生き延びた伴徹さん(当時小学部3年):
(避難訓練は)なかった。(当時)消防車が来て、放水は見たことがあるけれども、避難訓練というのはどんなものかもわからないし、見たこともやったこともない

70年前の消防資料を分析し教訓に

火災から70年。その教訓を生かそうという動きも生まれている。

篠田吉央アナウンサー:
岡山市消防局です。こちらでは2020年4月、火災予防のための新しい部署ができました

岡山市消防局予防課予防企画係。過去の火災を分析し直し、予防に役立てようと設立された部署で、消防局内に残る書類を1枚1枚読み解いている。


岡山市消防局予防課予防企画係・岡﨑圭消防司令補:
これまでは、どういった火災が何件あったのかを分析しておりました。ただ現在は、もっと深いところ。例えば、どのように被災時に行動していたのかを分析することで、最適な避難方法を検証することを求めています

その中で見つかったのが、70年前に記された寄宿舎火災の記録だった。

岡山市消防局予防課・齋藤雅之消防司令:
(寄宿舎は)木造の2階建てで、天井裏が全ての部屋につながっている状態。そして、晴れた乾燥した12月。火の回りはすごく早かっただろうと思う

岡山市消防局が2019年に行った火災実験。いったん火がつくと、火の手は真上に上がり、天井を通じて広がるのがわかる。


当時の記録には、「部屋が真っ赤で、バケツで消火した」と記されている。

岡山市消防局予防課火災調査係・中野亮消防司令:
本当に真っ赤だったら、消火よりは先に避難。今、分析しているが、消火の判断を誤っているようなものがたくさんあります


避難する上で重要なのは、いかに早く火災に気付くか。目の不自由な子どもは助かり、耳の不自由な子どもは助からなかった要因の1つに、「音」による危険の察知を指摘する。

岡山市消防局予防課火災調査係・中野亮消防司令:
火災が実際に起こった時によく言われるのは、大きな音がすると言われる。燃えた時に何かがはじけたり、実際に崩れたりし、(火災に気付くのに)音は大事だが、寄宿舎の火災に関しては、耳が聞こえない方が犠牲になっている


今回の分析をもとに、岡山市消防局では、11月9日からの秋の火災予防運動の期間中に商業施設でイベントを行い、防火や聴覚障害者の避難などについて啓発することにしている。

寄宿舎にも生かされた災害への対策と備え

また、火災の教訓は、現在の聾学校寄宿舎でも生きている。

篠田吉央アナウンサー:
こちらが、子どもたちが生活している部屋です。ご覧のように全ての部屋には、非常時に点灯して危険を知らせる表示や、その時何が起きているかを端的に知らせ、どこに逃げたらいいのかがわかるカードが備え付けられています


このほかにも、一緒に逃げるペアを決め、火災の状況に応じた複数の避難経路を日頃から確認していて、火災だけでなく、地震や豪雨などの災害時にも備えている。

岡山聾学校高等部3年の生徒:
(訓練をすれば)火災発生時に慌てず、安心して避難できると思う

岡山聾学校高等部1年の生徒:
(亡くなった)16人の子どもたちの分まで長生きしたいと思う。寄宿舎の生活に必要な訓練だけじゃなくて、これから社会に出た時に役に立つと思う

火災原因分析カードの最後に記された「避難訓練の必要」、「痛感」という消防の意見は、生徒たちの訴えと同じだった。


16人が亡くなった岡山盲・聾学校寄宿舎火災。70年前に記された当時の記録は、これからも火災の教訓を語り継ぐ。

篠田吉央アナウンサー:
私たちはこの火災を、決して忘れません

(岡山放送)

(FNNプライムオンライン11月14日掲載。元記事はこちら

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