廃棄される布が”食品用ラップ”に変身 環境問題に取り組むアパレル社長の挑戦

経済・ビジネス 環境・自然

  • 広島で広がるSDGs=持続可能な開発目標の取り組み
  • 包んだり覆ったりでき、洗えば約1年使える”食品用ラップ”が誕生
  • 開発の背景には新型コロナウイルスの感染拡大があった

洗えば約1年使える「蜜蝋ラップ」

今、地球は多くの問題を抱えている。世界の飢餓人口が約8億2000万人(ユニセフ・2019)。児童労働する子どもが10人に1人(ILO=国際労働機関)。広がる環境汚染、進む地球温暖化。国連はSDGs=持続可能な開発目標として17の目標を定め2030年までの達成を目指している。

広島でも、SDGsの取り組みが広がっている。広島で誕生したばかりの持続可能な商品に注目した。誕生の裏には、コロナに負けない挑戦があった。

今年8月末に発売されたこちらの品。包んだり、覆ったりできて、洗えば約1年使える「蜜蝋ラップ」。材料に使われたのは、捨てられてきたものだった。


蜜蝋ラップの考案者の中本健吾さん。洋服や雑貨の販売や卸売り、商品開発なども行っている。20代で起業、30代からは、長く愛されるものを基準に、国内外で商品を発掘。広島や福岡に9店舗を構える。


アパレル業界に携わって約30年の中本さん。去年出会った1冊の本が業界を見つめ直すきっかけとなった。

エヌ 中本健吾社長:
本を読んだときに初めて知ったんですけど、アパレルがエネルギーに次いで環境破壊をしている第2位なんですね


大量生産、大量消費で大量廃棄物を出すアパレル業界の実態を知った中本さんが注目したのは「残布」だった。縫製工場の生産過程で使われない生地が大量に残る。その捨てられる残布を再利用しようと考えた。


エヌ 中本健吾社長:
そうだ、それを僕たちが引き取って、中国地方でできることはないかなと考えたんですよね

中本さんが向かった先は山口県周防大島。これまで、ハチミツの販売で取引のあった養蜂家・笠原隆史さん・亜裕美さん夫妻のもとだった。

笠原さん夫妻は9年前に養蜂場をオープン。ハチミツの生産、販売を行っている。実はここにも、大量に捨てられているものがあった。


KASAHARA HONEY 笠原亜裕美さん:
これは蜜巣ですね。蜂がここに蜜を貯めているんですけど、蜜が完熟して糖度が上がると蜂が蓋をしてますね

この蓋があると蜜を採取できないので削り取り、これまでゴミとして捨ててきた。


しかし、精製すると「蜜蝋」となり、保湿効果が高いため、化粧品の原料やろうそくなどに使われる万能なものだ。捨てられてきたこの2つのものを中本さんは組み合わせ活用した。


残布の上に、削った蜜蝋をのせ、アイロンの熱で溶かすと、あっという間に食品用ラップ「蜜蝋ラップ」が完成。


KASAHARA HONEY 笠原亜裕美さん:
蜜蝋って今まで捨ててきたというか利用されてなかったものなので、それがこんな形で再利用できて環境にいいものができて、すごくいいと思っています


実はこの商品、企画したのは今年6月。たった2カ月で商品化とハイスピードで誕生した。背景にあったは、新型コロナウイルスの感染拡大だった。

エヌ 中本健吾社長:
小売業として(緊急事態宣言で)お店が開けれなかったのは大きかったですし、先が見えなかったので、先の仕入れなんかもどうなるんだろう

買い付けにも行けない中、あったのは、これまでに無かった時間だった。それで去年から気になっていた環境問題とじっくり向きあえた。

エヌ 中本健吾社長:
考えること、知恵を出すことによって補えるんじゃないかなっていうのは、蜜蝋ラップを作ろうという原動力になったと思います

一方、笠原さんは、試作を繰り返し、防虫効果のある松脂を加えることやホホバオイルを足すなどベストの配合を見つけ出す。蜜蝋を削る作業は福祉施設に依頼。障害者の新たな雇用も生み出した。こうしてコロナでできた時間を知恵に替え「蜜蝋ラップ」は生まれた。


そして、今、更なる挑戦が始まっている。この日、開かれていたのは、パリ在住の日本人デザイナーによるブランドの展示会。会場の傍らに置かれていたのは、カラフルな蜜蝋ラップだ。これらは全てこのブランドの洋服で作られた。


目標は業界全体で残布を無くす

中本さんの次なる挑戦はブランドとのコラボレーション。業界全体で残布を無くす取り組みだ。

seya 瀬谷慶子さん:
すごくいいと思います。ファッションシステムみたいなもの構造全体が余った生地をとっておけない状況にあるんですよね。そのシステムを壊すのが大変で、一人じゃできないし、誰かの力を合わせていかないとできないことなので喜んで参加したい


反応は上々。今月、大手アウトドアメーカーでも採用が決まり、確実に残布の蜜蝋ラップは広がっている。

エヌ 中本健吾社長:
クリアのラップがゼロにはならないと思う。半減することはできるかなと思うんで、それが半減したら皆さんがいい環境になるんじゃないかと思うんですよね。これはすごい胸を張れる商品だなっていう、ゴミはゴミじゃないっていう

そんな中本さんにとってSDGsとは。

エヌ 中本健吾社長:
捨てないものを作るのが僕のSDGsかなと。愛着を持つものを使ったりとか、経年劣化ではなく経年変化するものを使っていく、そういうものになれば、世の中ゴミがでなくなるんじゃないかなと思うんですよね


(テレビ新広島)

(FNNプライムオンライン11月16日掲載。元記事はこちら

https://www.fnn.jp/

[© Fuji News Network, Inc. All rights reserved.]

FNNニュース