“必ず開催”の「五輪観」に菅流と安倍流の違いも?コロナ拡大下での菅×バッハ会談の成果と課題

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  • 大会の成功に向けて完全に一致 菅首相×バッハ会長
  • 「一定の効果はあった」国内コロナ拡大期に訪日の成果は
  • 「五輪はなにがなんでもやる」一方で具体策の議論は難題続き

菅首相とIOCバッハ会長が会談「東京大会の成功に向けて完全に方向性が一致」

11月16日、国内での新型コロナウイルス感染者の拡大傾向が続く中、IOC=国際オリンピック委員会のバッハ会長が来日し、菅首相と総理就任後初めて会談した。会談の冒頭、握手を求めようとした菅首相は、ハッとしたあと、手のひらを閉じてグータッチを求め、バッハ会長もそれに応じた。来年の東京オリンピック・パラリンピックの成功に向けた会談なのだが、目下はコロナ感染拡大の最中にあるという現実を意識させる光景だった。

11月16日・首相官邸
11月16日・首相官邸

菅首相は会談で、「来年の夏、人類がウイルスに打ち勝った証として、東日本大震災から復興しつつある姿を世界に発信する復興オリンピック、パラリンピックとして、東京大会の開催を実現する決意だ」としてバッハ会長に開催に向けた連携を改めて呼びかけた。

バッハ会長は、来年の東京大会は「コロナ後の世界において、人類の連帯と結束力そういったものを表すシンボルになる。いま人類はトンネルの中に入っているかもしれないが、まさにオリンピックの聖火がトンネルの先に見える灯りになるであろうことを信じている」と国際オリンピック委員会の会長らしいワードセンスで応じた。

IOCバッハ会長 11月16日・首相官邸
IOCバッハ会長 11月16日・首相官邸

安倍前総理と菅総理 五輪への思いのほどは?

バッハ会長は今回の来日の中では安倍前首相とも面会し、「五輪功労賞(オリンピック・オーダー)」を授与した。安倍前首相とバッハ会長といえば、在任中の3月24日に約45分間の電話会談を行い、コロナの感染拡大傾向に鑑みて、東京大会開催の1年延期を決断した。

バッハ会長は授与式の席で、安倍前首相を前に「延期する歴史的な判断は個人的なあなたとの強い信頼感があったからこそまとめられた。信頼の証だ」と振り返った。安倍前首相は在任中も五輪の開催に強い意欲を示し続け、延期にあたっては「コロナに完全に打ち勝った証としての東京大会の開催」と言うフレーズを生み出した。

8月28日の首相退任会見で安倍氏は、東京大会開催に向けた今後について「アスリートが万全のコンディションでプレーを行い、観客にも安全で安心な大会を目指していきたい。開催国としての責任を果たしていかなければならないと思っているし、当然、私の次のリーダーもその考え方の元に目指していくんだろうと思う」と次期首相に向けたメッセージを残した。

退任会見に臨む安倍前総理 8月28日・首相官邸
退任会見に臨む安倍前総理 8月28日・首相官邸

その安倍政権の継承を掲げる菅首相は、今回のバッハ会長との会談で「人類がウイルスに打ち勝った証としての東京大会開催」という安倍前首相のフレーズをほぼ引き継いだ。また、自身が学生のころに空手に取り組み、スポーツの持つ力の大事さを体感してきたというエピソードも披露した。

この菅首相の「五輪観」について、ある政府関係者は「経済をこれ以上下落させないためにも五輪開催への思いが強い」と解説し、安倍前首相との微妙な違いを指摘している。

安倍前首相には「自分の任期中に必ず五輪を成し遂げたい」という強い意志が根底にあったが、菅首相の場合は「是が非でも五輪を開催しないと、日本の経済が持たない」という考えが根底にあり、考え方のプロセスが異なるという。その上で、東京五輪を必ず開催し成功させるという強い思いは当然共通している。


菅首相は今後も「コロナに打ち勝った証としての東京大会の開催」という共通の目標に向かって、安倍前首相が築いた以上の個人的な信頼関係の構築も目指しつつ、バッハ会長との連携を強化していくことになる。

コロナ禍での訪日 会談の成果は?

今回の会談の最大の成果だと政府関係者らが指摘するのが、観客を入れた状態での大会開催を前提に、大会でのコロナ対策を検討していくことで一致したことだ。

会談を終えたバッハ会長は「スタジアムの中に観客を入れることに関して確信が持てた」と話し、各種のコロナ対策を道具箱の中に揃える工具にたとえ「想像できる限りのあらゆる道具(措置)を、その箱の中に詰め込んでいく。そして来年、適切な時期に、必要な道具をそこから取り出し安心な大会を担保する」と述べた。

菅首相は「(バッハ会長と)緊密に連携していくことで一致した。極めて有意義なやりとりができた」と成果を強調し、会談に同席した橋本五輪相は、東京大会の開催の確約がバッハ会長からあったのかとの記者の問いに「私はそのように受け止めている。前に向かっていく話しかなかった」と振り返った。

実は官邸関係者からは今回のバッハ会長の訪日を前に「感染者が増えている中でなかなか前向きにいけないタイミングだ」との懸念の声が聞かれていたが、会談後、別の政府関係者からは「テレビでトップニュースで扱っていたところもあり、(五輪の機運醸成に向けての)一定の効果があった」と成果を評価する声が聞かれた。


「想像できる限りのあらゆる措置を」開催に向けた多くの課題

東京大会でのコロナ対策についての議論を担う政府関係者は、菅首相とバッハ会長との会談を終えて、「五輪はなにがなんでもやる、という雰囲気が政府内の共通認識として生まれている」と話す。その一方で「一番やってはいけないのは、国内の日本人の医療体制に負担をかけること」だとし、国内だけではなく、海外でのコロナ感染者の拡大が収まらない状況での開催も想定する中で、観客の受け入れやコロナの検査体制の確立など、「安心安全な大会」を実施するための現実的な方策の議論の難しさも吐露している。


バッハ会長が“コロナ対策のあらゆる道具を箱の中に詰め、適切な時期に取り出し安心な大会を担保する”との方針を示したように、政府は、世界的な感染状況がどのような事態になっても対応できる対策を練り、安心・安全を絶対条件とした受け入れ準備を整えるという、極めて難易度の高い課題を改めて認識させられた形だ。今回のトップ会談を経て、具体的な議論がどのように進んでいくのか、引き続き注視していく必要がある。

(フジテレビ政治部 首相官邸担当 亀岡晃伸)

 

(FNNプライムオンライン11月19日掲載。元記事はこちら

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