【全文】皇后さま57歳お誕生日 命の大切さ、尊さに深く思いを寄せる一年

社会 皇室

皇后さまは9日、57歳の誕生日を迎え、現在の心境を文書で寄せられた。新型コロナウイルスに苦しむ人たちを支える様々な人々に深い敬意と感謝の意を表し、陛下を支え、皇后としての務めを果たすべく、健康の一層の快復に向け努力を続ける決意を綴られた。

以下が「令和2年皇后陛下お誕生日に際してのご感想」全文。

命の大切さ、尊さに深く思い寄せる一年

12月3日撮影 赤坂御所
12月3日撮影 赤坂御所

今年もこうして無事に誕生日を迎えることができますことを有り難く存じます。

今年は、特に命の大切さ、尊さについて改めて深く思いを寄せる年になりました。

1920年頃に世界的に大流行したスペインインフルエンザ以来ほぼ1世紀を経た今年、思いも寄らず世界中が新型コロナウイルス感染症の大きな災厄に見舞われることとなり、大変に心の痛む年でした。

新型コロナウイルス感染症により、世界中で、そして日本国内でも多くの方が亡くなっていることに対し、この場をお借りしてお悔やみ申し上げます。世界の各地で、あるいは日本国内で、多くの方がこの感染症に苦しみ、懸命の治療にもかかわらず亡くなっていく現実は、本当につらいものです。

このような中、医療に従事される皆さんが、大勢の患者さんの命を救うために、そして、感染の拡大を防ぐために、日夜献身的に力を尽くしてこられていることに、心からの敬意と感謝の意を表したいと思います。

医療に従事される皆さんには、特に感染拡大の初期には、治療法もまだ確立されない中、また、防護服やマスクを始めとする医療物資が大きく不足する中にあって、どれ程の不安と緊張の中で、自らの命の危険も顧みず、強い使命感を持って治療に当たってこられたことかと、本当に頭の下がる思いがいたします。

10月28日 明治神宮ご参拝
10月28日 明治神宮ご参拝

我が国では、幸いにして、今までのところ感染爆発のような事態には至らずに、諸外国と比べると感染拡大をある程度の規模に抑え込むことができておりますが、これは、感染症対策の専門家の方々の見識と御尽力、政府や地方自治体による取組、そして、多くの国民の皆さんによる様々な面での協力とたゆみない努力のお陰であると、非常に有り難く思っております。

一方で、感染症の感染拡大が経済社会活動に大きな影響を及ぼしている結果、経営破綻や失業に追い込まれるなど、苦境に立たされている方が大勢いらっしゃることにも大変心が痛みます。

また、新型コロナウイルス感染症に感染された方や医療に従事されている方、あるいはその御家族に対して、差別や偏見の目が向けられるという問題が起きていることや、制約の多い生活が続く中で、家庭内での暴力や子供への虐待が増加している可能性があるということも耳にしており、案じています。

大きな禍(わざわい)に見舞われている社会の中で起こりやすい問題とはいえ、今後、皆が心穏やかに日々を過ごせるようになることを願ってやみません。

12月3日撮影 赤坂御所
12月3日撮影 赤坂御所

困難な状況に直面する人々を支える全ての方に深い敬意と感謝

私自身は、特に昨年来、全国の多くの皆様から寄せられた温かい祝意に感謝しつつ、国民の皆様の現在の困難な状況を思うとき、国民のお一人お一人が、幸せであっていただきたいかけがえのない存在であるということを身にしみて感じます。

感染症の不安が渦巻く中、様々な面で自由が失われている日々の中で、多くの御苦労と努力を重ねてこられたものとお察しいたします。

また、新型コロナウイルス感染症により苦労をされている方々の置かれた状況をより良く理解し、心を寄せることができればとの思いで、様々な分野の専門家や現場で対応に当たられている方々から、陛下と御一緒に度々お話を伺ってきました。

医療関係者の皆さんの置かれた環境や御苦労、お年寄りや障害を持った方々をめぐる状況、社会的孤立を深めやすい生活困窮世帯への影響や、そうした世帯の子供たちへの学習支援活動、感染対策と学習との両立に取り組む学校現場の状況など、現場に従事し、取組を進める方々から直接現状を伺うことができました。

4月10日 尾身氏よりご進講 赤坂御所
4月10日 尾身氏よりご進講 赤坂御所

新型コロナウイルス感染症の感染拡大の中にあって、特に、御高齢の方や基礎疾患のある方の御心配もいかばかりかと思いますが、そのような方々や障害のある方、あるいは生活に困窮している方や子供たちなど、社会的に弱い立場に置かれている人々を支える努力をされている方々の尽力にも大きなものがあると思います。

同時に、現在のこの状況の中で自分たちに何ができるかを考え、行動しようとする、若い人たちも含む多くの方の新しい試みや取組を目にするとき、勇気付けられ、心温まるとともに、人と人との絆の大切さを強く感じます。
困難な状況に直面する人々を支え、力を尽くしている全ての方に深い敬意と感謝の意を表したいと思います。

現在、新型コロナウイルス感染症の感染者や重症の方が再び増えてきており、予断を許さない状況が続いています。ワクチンの開発が進み、この感染症の克服に少し光が見えてきているようにも感じますが、一朝一夕に克服できるものかどうか分からないことも多いと思われます。

このような中にあって、今後、私たち皆が心を合わせ、お互いへの思いやりを忘れずに、困難に見舞われている人々に手を差し伸べつつ、力を合わせてこの試練を乗り越えていくことができますよう、心から願っております。

1月16日 歌会始め 皇居
1月16日 歌会始め 皇居

「はやぶさ2」は「嬉しいニュース」

また、今年も残念ながら、国内外で自然災害が発生し、国内では特に7月の豪雨により、熊本県を中心に多くの方が亡くなられたり、行方不明になられたりしたことにも深く心が痛みました。特に、体の不自由な御高齢の方が数多く犠牲になられ、お気の毒なことでした。

亡くなられた方々に心から哀悼の意を表しますとともに、御遺族と被災された方々にお見舞いを申し上げます。

これから寒さも厳しくなります折から、避難生活を続けておられる方々を始め、皆さんにはくれぐれもお体を大切にお過ごしいただきたいと思います。

今年はまた、多くの人が楽しみにしていた東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、延期になりました。
オリンピック・パラリンピックの東京大会実現に向けて尽力してこられている関係者や選手の皆さんの御苦労も多いことと思い、皆さんの御努力を深く多としたいと思います。

翻って、この度小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウから無事に地球近くまで帰還を果たし、リュウグウの砂を採取したとみられるカプセルが成功裡(り)に回収されたことは嬉しいニュースでした。関係者の皆さんの払われた御努力もいかばかりだったかと思います。

今後、持ち帰られたとみられる砂の分析・研究から、太陽系の成り立ちや生命の起源などについて、新たな科学の扉が開かれることが期待されていると聞き、楽しみにしております。

12月3日撮影 赤坂御所
12月3日撮影 赤坂御所

国民と直接触れあうことが難しい状況は「残念」

今年は,新型コロナウイルス感染症の感染拡大のために、私たちの公務も様々に変わることになりました。

戦後75年に当たっての全国戦没者追悼式や議会開設130年記念式典などが規模を縮小しての開催となったほか、多くの行事が延期を余儀なくされました。

先月には,当初の計画より規模を縮小してではありましたが、立皇嗣の礼が執り行われました。これにより、昨年のお代替わりに伴う主な儀式や行事が無事に終了しましたことに安堵しております。

11月8日 立皇嗣の礼 皇居
11月8日 立皇嗣の礼 皇居

他方で、多くの国民の皆様と直接触れ合うことが難しくなっていることを残念に思います。

現在は、様々な場所を直接訪問することが難しい状況の中、最近では、オンラインによる施設の視察等を行うことができるようになりました。

先月には,オンラインにより日本赤十字社医療センターの視察を行った後、日赤の3箇所の拠点病院のスタッフのお話を伺うことができ、また先々週には、時期が少し遅くなりましたが、敬老の日にちなんでの訪問として、御高齢の方々によるはつらつとした活動の様子を見せていただき、集まっている方々とお話しできましたことを嬉しく思いました。

11月25日 オンラインで高齢者とご交流 赤坂御所
11月25日 オンラインで高齢者とご交流 赤坂御所

オンラインという方法により、このように国民の皆様との触れ合いの機会を持てることは有り難く、今後ともそのような機会を大切にしていくことができればと感じております。

また、陛下には、夏前から皇居宮殿での儀式などの御公務が再開され、お忙しい日々をお送りになっていらっしゃいますが、変わらずお元気にお過ごしのことを何より有り難く思っております。

初めてご養蚕に取り組まれ

上皇上皇后両陛下には、本年3月、皇居吹上仙洞御所から高輪仙洞仮御所にお移りになりました。新型コロナウイルス感染症の影響により、外へのお出ましも難しい日々と存じますが、くれぐれもお体を大切になさり、お健やかにお過ごしになりますことを心からお祈り申し上げます。そして、日頃より、私たちを温かくお見守りいただいておりますことに厚く御礼を申し上げます。

私自身は、本年、上皇后陛下から引き継がせていただいた養蚕に初めて携わり、関係者の手助けも得て無事に終えることができましたことを有り難く思います。

その間、養蚕農家の様々な御苦労にも思いを馳せましたが、最後に、蚕の作り上げた繭から美しい生糸が紡がれたことを感慨深く思いました。この間、上皇上皇后両陛下に温かくお見守りいただきましたことにも、重ねて感謝申し上げます。

5月29日 ご養蚕 紅葉山御養蚕所
5月29日 ご養蚕 紅葉山御養蚕所

大学生の愛子さま「10代最後の年を心豊かに過ごしてほしい」

愛子は、今年学習院大学文学部日本語日本文学科の1年生になり、先日19歳の誕生日を迎えました。早いもので来年には成人することを思いますと、幼かった頃のことも懐かしく思い出され、感慨深いものがあります。

現在は、新型コロナウイルス感染症の影響により、世の中の多くの学生の皆さんと同様に、オンラインで授業を受けながら、新しい分野の勉強に忙しい毎日を過ごし、大学生としての生活を大切に過ごそうと努めているように見えます。

愛子には、これからも多くの方からいろいろなことを学びながら、10代最後の年を心豊かに過ごしてほしいと願っています。

愛子さま 11月22日撮影 赤坂御用地
愛子さま 11月22日撮影 赤坂御用地

皇后としての務め果たすべく、快復に向けて努力続けたい

新型コロナウイルス感染症により、世の中の状況や私たちの公務の形が変化する中、私自身は、今年も体調に気を付けながら、できる限りの務めを果たそうと努めてまいりました。

その際、陛下には、常に私の体調にお気遣いいただき、深く感謝申し上げます。

これからも、陛下のお務めの重さを常に心にとどめ、陛下をお傍(そば)でお支えできますよう、また、皇后としての務めを果たすべく、健康の一層の快復に向けて努力を続けていきたいと思います。

12月3日撮影 赤坂御所
12月3日撮影 赤坂御所

この機会に、国民の皆様から日頃よりお寄せいただいている温かいお気持ちに対し、厚く御礼を申し上げたいと思います。

最後に、改めまして新型コロナウイルス感染症の終息を願うとともに、国民の皆様が心を寄せ合い、この困難な状況を乗り越えていくことができますよう心から願っております。

(FNNプライムオンライン12月9日掲載。元記事はこちら

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