“触れる標本”で話題の路上博物館 本物そっくりに仕上がる「3Dプリントレプリカ」の可能性

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体験型の新たな博物館

東京・神保町で開かれたアートイベント「第6回 神保町ヴンダーカンマー」。

訪れた人が手にしていたのは、動物の骨の標本。本来、博物館では触ることの出来ない標本だが、それを可能にした「3Dプリントレプリカ」の可能性を取材した。


路上博物館・森健人代表理事:
博物館の標本から3Dデータをとって、3Dプリントした。これは実物大のライオンの頭です。


触れる標本の展示は、関東を中心に開催されている「路上博物館」という新たな取り組みによるもの。


路上博物館・森健人代表理事:
博物館に行くのは、日ごろ何らか博物館のことを考えていないとできない。博物館では触れない標本を3Dデータ化して、プリントして路上に持ち出すことで、博物館を認知してもらえるし、おもしろがってもらえるかなと。


500枚以上の写真を解析して作成

この触れる標本は、全て3Dプリントレプリカ。どのように作られているのか、完成までを追ってみると…


路上博物館・森健人代表理事:
写真測量をしています。

標本をあらゆる方向から少しずつ角度を変えて写真を撮り、それを解析することで、立体モデルを作成する。


およそ1時間かけて撮影した500枚を超える写真をその場で解析してもらうと。

路上博物館・森健人代表理事:
こういう感じ。今はまだ粗いデータというか、写真の中の特徴点だけをかいつまんで作っています。


ここからさらに細かい位置調整などの作業を経て、3Dモデルが完成。得られたデータを加工し3Dプリンターで印刷すると、3Dプリントレプリカになる。


その精度は…?

本物のビーバーの頭の骨と、それをもとに作られたレプリカ。近くで見てみると、精巧に再現されているのがわかる。


レプリカはネットで購入も可能

路上博物館では、科学館と共同で3Dプリントレプリカを販売する取り組みも実施。販売サイトを通して、博物館に訪れることのできない人にも標本に触れる機会を提供している。


こうした路上博物館の取り組みを進める意義について、森代表理事は次のように話す。

路上博物館・森健人代表理事:
博物館で標本作りはずっと続けていかないといけない。その中でも、なかなかお金がつきづらかったりするので、(3Dモデルグッズを)商品にして販売できたら、そのお金からもう1回、標本作りに戻せるのではないか。循環型の仕組みが作れればいいなと思います。


学びを最大化する多様な展示が必要

三田友梨佳キャスター:
コミュニティデザイナーでstudio-L代表の山崎亮さんに聞きます。この試みをどうご覧になりますか?

コミュニティデザイナー・山崎亮氏:
博物館とか美術館という社会教育施設が、本来担うべき役割を積極的に果たしているという感想です。レプリカだと“触ることが出来る”という特性を十分に生かした学びの場を作リ出しています。私たちは触ることによって気付くことが多いですし、視覚に障害がある方でも、学びの機会を手に入れることができる。

日本の多くの博物館や美術館はあまり自由がなくて、理由はいろいろとあると思いますが、例えば感想を話し合っていると、ちょっと静かにしてくださいと注意されたり、権利関係があるから写真撮影は禁止。さらに、ペンが折れてインクが飛び散って作品を汚したら困るといって、メモも出来ない美術館があったりもします。

こういったことで、作品に触るなんてもってのほかなわけですが、実際に未知のモノに触れて新しい発想を十分に広げていくことが社会教育施設の役割だと思っています。


三田友梨佳キャスター:
一方で、感染拡大によって博物館や美術館でも密集や接触を避ける工夫も求められていますよね。

コミュニティデザイナー・山崎亮氏:
海外の社会教育施設だと、withコロナよりも何年も前からバーチャル展示を進めてきましたので、今それが役に立っているところもあります。スマートフォンから多くの情報がとれる時代だからこそ、わざわざ出かけていくための場所とはどういうものなのか、どうしたら来場者の学びを最大化できるのか、展示の多様化を進めていく必要があると思います。

三田友梨佳キャスター:
今はデジタルな時代に入って、多様なモノに触れる機会や頻度も減っていますから、こうした新たな展示の形の価値は大きいように感じます。

(「Live News α」12月16日放送分)

(FNNプライムオンライン12月17日掲載。元記事はこちら

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