小耳症の子供たちのために…耳にかけずにつけられる「すべり落ちないマスク」を縫製会社が製造

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耳にかけずにつけられる「すべり落ちないマスク」

新型コロナウイルスの感染拡大で多くの企業が影響を受ける中、新しい事業で成功をつかんだ企業がある。チャレンジのきっかけは積み上げてきた技術と困っている人の声だった。

長崎県諫早市にある縫製会社「美泉」。1982年の創業から下着や水着の縫製などを行なっていて、10年ほど前からはオーガニックコットンを使った赤ちゃん用の肌着も手がけている。


そして新型コロナウイルスの感染が広がった2020年2月末からは、培った技術を生かしてマスクの製造・販売を始めた。

美泉・井上孝輔社長:
初めは(社内で)マスクを作るのは、というところは少しあったんですけど世の中から何が必要とされているのかというのをみんなで考えを一つにして作れたのがすごく良くて。


販売を始めてからこれまでにオーガニックコットン製のガーゼマスクや夏用のクールマスクなど5種類を作ってきたが、2020年10月、マスク作りにターニングポイントが訪れた。


きっかけはベビー服を買いに来たお客さんとの会話だった。

美泉・井上孝輔社長:
(お客さんから)実は片耳がない女の子がいて、と話された時に自分の中でハッとするような一言がきっかけになって

この言葉をきっかけに耳にかけずにつけられる「すべり落ちないマスク」作りを始めた。

この取り組みをSNSで知らせると、数日で10万を超える反響があった。

美泉・井上孝輔社長:
小耳症と言って小さい耳の症状と書くんですけど、小耳症の子どもを支援する団体の代表の方から連絡があって、支援団体に作ったサンプルを送りながら開発を進めた。

目標はシンプルなマスク。安く提供でき、見た目も一般的なものとほぼ変わらず日常で使いやすいマスクを目指した。

まず考えたのは、頭の後ろで結ぶタイプだ。

美泉・井上孝輔社長:
これでいいんじゃないかと思ったんですけど、残念ながら(髪で)すべるんですよね。放すとこんな感じで


後頭部にまわす紐に滑りにくいシリコンのチューブを使ったり顔にふれる部分に滑り止めをつけたりと試行錯誤を繰り返した。

見た目が不恰好になり、思うような効果も得られないと頭を抱えていた。そのときだった。

美泉・井上孝輔社長:
商品開発で行きあたってもうどうしようと手で顔を覆ったときに鼻の出っ張りが手に当たるのを感じて鼻に止まるようなマスクだったらいいんじゃないかなと。

鼻にあたる部分にシリコンコーティングされた布を輪にして、縫い付け、そしてひっかかりを作ると、「シンプルでずれないマスク」が生まれた。


耳にかける部分に長さを調節できるゴムのバンドをつけてつなげ首のうしろにまわすと完成だ。

小耳症の支援団体からもお墨付きをもらって発売したところ、喜びの声も届いた。


美泉・井上孝輔社長:
(店に)女性のお客様が来て、実は、私片方の耳がなくてほんとにマスクで困ってて、噂で聞いたから来ましたと言ってそういった女性が着けてくれてこれはいいと

そして、2020年11月上旬に開かれた九州・山口のベンチャー企業などを表彰するイベントでは新しい事業を生み出したとして、優秀賞を受賞した。

美泉・井上孝輔社長:
いわゆるマスク戦国時代だと思う。そういった中で価値と価格のバランスが取れているだけじゃなくてお客様に対する解決策が提案できなければ生き残れない。提案ができているので、うちのマスクは生き残れているのかなと思っています。


困っている人や地域の課題に反応し、解決する、こんな時代だからこそ、思いやりの気持ちを持ったビジネスが評判を呼んでいる。


(テレビ長崎)

(FNNプライムオンライン2月15日掲載。元記事はこちら

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