1瓶で1回分多くワクチン接種…増産体制の“特殊な注射器”が今まで普及しなかった理由を聞いた

社会 医療・健康

1瓶6回接種可能な注射器、増産進む

新型コロナウイルスのワクチン接種に使われる”特殊な注射器”の増産が急ピッチで進められている。

2月17日から医療従事者への新型コロナウイルスワクチンの先行接種が始まった。今回はファイザー製のワクチン接種となったが、ここで使われているのが”特殊な注射器”だ。ファイザー製のワクチンの場合、一般的な注射器ではワクチン1瓶から5回しか接種できないが、特殊な注射器を使うと6回接種することができる。

その仕組みはこうだ。

通常の注射器を使う場合、薬液の一部が注射器内や針に残ってしまう。しかし、特殊な注射器を使用した場合、注射器先端の“すき間”に薬液が残ることが少ないため、ワクチンのロスが少なくて済むのだ。

そのため、ファイザー社のワクチン1瓶から通常の注射器の場合は「5回分」しか接種できないが、特殊な注射器の場合「6回分」接種することができる。

ピンクの部分が残った薬液
ピンクの部分が残った薬液

この特殊な注射器を生産している会社の1つが、大阪の大手医療機器メーカー「ニプロ」だ。

ニプロでは、7年前にこの特殊な注射器を開発。特徴は、ワクチンを押し出す部分が突起状になっており、ファイザー社のワクチン1瓶から6回接種できることができる。

ニプロでは、1月末に特殊な注射器を増産するよう国から要請があったという。

それでは、現在、ニプロの増産体制はどうなっているのか? そもそもなぜ特殊な注射器は普及していなかったのか? ニプロの担当者に話を聞いた。

国への納品は秋頃に

――国から特殊な注射器の増産要請を聞いた時、どう思った?

従来、特殊なシリンジ(ローデッドシリンジ)の医療機関への供給量は、通常型のシリンジと比べかなり少ないものでしたが、新型コロナ収束に向けて、医療メーカーとしてできる限り貢献したいとの思いを強く抱きました。
※シリンジ…注射器の筒の部分


――国の要請を受けて、現在、特殊な注射器の増産体制はどうなっている?

国からの要請を受け、現在増産に向けて調整を進めております。増産には4~5カ月かかるとみられ、実際の国への納品は秋頃になる予定ですが、前倒しできるよう引き続き鋭意努めてまいります。

病院で使用されることがさほど多くなかった

――なぜ特殊な注射器は日本で普及していなかった?

通常のシリンジは、あるゆる病院において、ツベルクリン反応試験等をはじめとする様々な場面で用いられてきましたが、ローデッドシリンジは、病院で使用されることがさほど多くなく(貴重薬剤投与の場合などに使用)、季節性インフルエンザワクチンの接種時に用いられることが多かったため、主な納品先が開業医等となり、通常品とくらべあまり普及率が高くなかったのだと思われます。


――特殊な注射器を作る上で難しい部分は?

特段難しくはないですが、ガスケット(先端部分)の形状が特殊なため専用の組み立て設備が必要となります。

医療メーカーの責務、全力で取り組みたい

――国家プロジェクトに携わることをどう思う?

ワクチン接種の普及は新型コロナ収束に繋がる重要なステップの一つだと捉えております。貴重なワクチンを無駄にすることなく、医療従事者の皆さまをはじめとする多くの方々にいち早く接種の機会をもっていただけるよう努めることは、医療メーカーとしての責務であると考えおり、ニプログループ一丸となって全力を挙げて取り組んでまいりたいと思っております。

ワクチン接種の様子
ワクチン接種の様子


日本での新型コロナウイルスのワクチン接種は始まったばかり。貴重なワクチンを少しでも無駄にしないためにも、特殊な注射器の増産など、医療器具の確保も重要となりそうだ。

(FNNプライムオンライン2月22日掲載。元記事はこちら

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