出社者より長いテレワーカーの残業時間…在宅だと生産性が落ちる?理由と改善方法を聞いた

経済・ビジネス 仕事・労働

出社者よりテレワーカーの残業時間が長い

コロナ禍の前も後もテレワーカーの方が出社者より残業時間が長い傾向にある。

コロナの影響で、テレワークが浸透して働き方も大きく変わる中、テレワーカーに関する興味深い調査結果が明らかとなった。パーソル総合研究所は4月19日、コロナ禍前後におけるテレワーカーと出社者に分けた残業時間の実態に関する調査の結果を発表した。

調査は全国の20〜50代の正社員2000人(テレワーカー1000人、出社者1000人)を対象に、2020年8月26〜31日に実施。「テレワーカー」はモバイルワーク・在宅勤務・サテライト勤務のいずれかを週に1~5日実施している人、「出社者」を在宅勤務・モバイルワーク・サテライト勤務をまったく行っていない人、と定義した。

なお、コロナ前の1カ月あたりの平均残業時間は、全体で17時間、テレワーカーが18.3時間。出社者が15.7時間。これが、コロナ後でどれくらい変化したのかというと、全体で2.8時間減っている中、テレワーカーは3時間、出社者は2.6時間短くなっていることがわかった。

しかし、テレワーカーの残業時間が15.3時間、出社者が13.1時間と、コロナ禍の前も後もテレワーカーの残業時間が長い傾向にある結果となった。
 

(画像提供:パーソル総合研究所)
(画像提供:パーソル総合研究所)

さらに詳細を見ると、コロナ禍前に残業時間が10時間以上と回答したテレワーカーは55.5%、出社者では39.6%。それがコロナ禍後では、テレワーカーが44.7%、出社者は31.4%。コロナ禍後も半分近くのテレワーカーが10時間以上の残業をしているのだ。

ただしテレワーカーも、コロナ禍前後で「残業なし」が19.6%から27.4%へと7.8ポイント増えており、労働環境の改善にはつながっているようにも見える。

(画像提供:パーソル総合研究所)
(画像提供:パーソル総合研究所)

しかし、なぜそもそもテレワーカーは出社者より残業時間が長いのか? そして、どうすればテレワーカーの残業時間を減らすことができるのか?

パーソル総合研究所の上席主任研究員の小林祐児さんに詳しく話を聞いてみた。

テレワーカーは残業時間長めの職種が多い

――コロナ前より残業時間が全体的に減っている理由を教えて

コロナ禍による世界的な経済の停滞の影響で、個々人の業務量も全体的に少なくなったと考えられます。伝統的に、日本企業は従業員の普段の残業時間が多いかわりに、不況の際にはその残業時間を減らし、雇用を守る傾向があります。今回も休業が多くなるとともに全体の残業時間が一気に減り、国際的には失業率はかなり低く抑えられました。失業とのバランスで見る必要があります。


――ではなぜ、テレワーカーのほうが、出社者より残業時間が長い?

テレワーカーと出社者では、職業や企業規模の構成が異なります。テレワーカーのほうがもともと残業時間が長めの職種が多いことが推測できます。具体的には、商品開発部門や学術研究者、専門技術者などの各種の専門家がテレワークも多く、残業時間も長めの職種です。

在宅勤務は育児、介護で仕事に集中しづらいことも

――その他の理由として、テレワーカーが家でだらだら仕事してしまうということは考えられる?

プライベートの時間と仕事の時間の境界があいまいになっている可能性はあります。また、単純に仕事をさぼることの他にも、幼い子供や介護などを抱えていると在宅勤務時に集中して時間をとることは難しくなり、結果的に業務時間が延びてしまうこともよくあります。

こうしたテレワークの長時間労働の課題は、コロナ禍以前より指摘されてきました。今後も経済回復が進むにつれて各企業で課題が顕在化することが予想され、労務管理含めて注視が必要です。

※画像はイメージ
※画像はイメージ

――テレワークは生産性が落ちるものなの?

テレワークの主観的な労働生産性はやはり出社時よりも低い傾向があります。国際的に見ても、とりわけ日本人は効率が落ちたと感じる傾向が見られます。一方で、客観的な意味での労働生産性は、テレワークかどうかよりも、企業の業種や経済構造、さらには景気動向など、多くの要因によって影響を受けます。

経営者などを中心に、実務家の間でもテレワークで「生産性」への注目度は上がっていますが、今回のようなコロナ禍によるテレワーク拡大前と後を単純に比べることはかなり難しいことは理解しておく必要があります。

仕事環境のデジタル化とスケジュール管理がカギ

――生産性が落ちる原因は?

一つは、あまりIT投資が盛んでなく、遠隔勤務のためのITツールや通信環境が整備されていない企業が多いことが考えられます。また、日本企業の働き方は、個人の業務範囲が明確でなく、その場その場で業務量や仕事の範囲をチームで調整する幅が大きい働き方です。

分業体制がはっきりしていない分、状況に合わせたフレキシブルな調整や相談を行って仕事を進めます。そうした職場内の水平的なコミュニケーションがテレワークによってしにくくなることが、主観的な効率の悪さにつながっていると考えています。


――テレワーカーの残業時間を減らすためにはどうすればよい?

まずは、遠隔でも問題なく働けるコミュニケーション基盤やデジタル化などをこれを機に一気にすすめることが、効率化のための基礎になります。大仰なデジタル・トランスフォーメーションとまでいかなくても、ペーパーレス化やコミュニケーション・ツールのトライアルなど、もっとシンプルにできることは多いと感じています。

上司のマネジメントで必要なのは、フレキシブルな業務調整や日々のコミュニケーションが少なくなる分、部下の業務の進捗状況の情報を自ら取りにいき、ジョブ・アサインを明確かつ計画的に行う必要があります。そうしたアサインをうまく遂行しないと、これまでオフィスや職場で自然に「ならされていた」業務量が調整されず、一人に業務が集まってしまうことがよくあります。

テレワークでも効率のよい個人は、問題解決力とスケジュール管理スキルが高いことが研究によってわかっています。相談相手がすぐそばにいなくても、必要な情報収集や的確な質問などで、仕事を前にすすめることができることが求められています。

そうした問題解決力を基礎に、自らスケジュールを作り、期限を自律的に守っていくことが必要です。上司の指示や先輩のOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)に依存していては、テレワークにおいて効率性は上がっていきません。こうしたことが難しいのは、やはり新卒や中途の新人です。そうした人材に対しては、メンターを厚めに配置するなどの会社からのサポートが必要になるでしょう。

※画像はイメージ
※画像はイメージ

テレワーカーの残業時間を減らすためには、会社としては、遠隔でも問題なく働けるコミュニケーション基盤やデジタル化の整備などを進め、そして個人では、問題解決力とスケジュール管理スキルを高める。

現在は、出社からテレワークに移行している企業もある。テレワーカーの仕事環境については、このような点に留意すると良さそうだ。

(FNNプライムオンライン4月24日掲載。元記事はこちら

https://www.fnn.jp/

[© Fuji News Network, Inc. All rights reserved.]

FNNニュース