豪で作られた“水素”を日本に運搬 「運べる、貯めておける」 脱炭素時代のエネルギー普及に必要なこと

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世界初!液化水素運搬船

大海原をゆっくりと進む一隻の船。

一見普通の船に見えるが、内部には巨大なタンクを搭載。これは、はるか9000キロ離れた場所で作られたあるクリーンエネルギーを運ぶための船だった。


9月19日、三重県の鈴鹿サーキットで3度目のレース参戦を果たしたトヨタ自動車が手がける水素エンジン車。


これまでのレースでも「水素を使う」、そしてクリーンな地熱発電を利用して「水素を作る」など、脱炭素社会の選択肢の一つとされる水素の可能性を示してきたが…

トヨタ自動車・豊田章男社長:
今回、鈴鹿での第3戦においては「運ぶ」。オーストラリアの褐炭から作り上げた水素をこの日本まで運んでくる。


オーストラリアで採掘した水分が多く低品質な石炭である「褐炭」を活用して、現地で水素を精製。それをマイナス253度に冷やして液化し、体積を800分の1に減らして日本に運ぶというのだ。


褐炭は一般的な石炭に比べてコストが10分の1以下。

オーストラリアには日本の総発電量の240年分に相当する褐炭があるとされ、運搬コストを差し引いても低価格で安定的に水素を調達できるという。

1回に75トンの水素を運搬

川崎重工業などが建造した、世界初の液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」。オーストラリアから片道9000キロ、16日間かけて水素を運んでくる。


この船で1回に75トン、燃料電池車1万5000台分もの液体水素を運ぶことができる。

神戸市にはすでにこの船が着岸し、液体水素を受け渡しするためのターミナルも完成していて、今年度中に実証実験が始まる。


今回、鈴鹿のレースで走った車の燃料の一部は、オーストラリアから空輸してきた水素を使用。

川崎重工では、将来の商用化に向けてタンクの容量を128倍にした大型船の開発も計画しているなど、脱炭素社会の実現に向けた動きは着実に進んでいる。


川崎重工業・西村元彦 水素戦略本部副本部長:
将来エネルギーの2割くらいが水素になるといわれています。こういった技術が実用化すると将来、水素が今の天然ガスのように身の回りで手軽に使えるようになって、かつカーボンニュートラルに貢献できると考えています。


作って、運んで、使う。未来を担うクリーンエネルギー「水素」の可能性はさらに広がっている。

“水素社会”実現への課題は?

三田友梨佳キャスター:
日本のモノづくりに詳しい、早稲田大学ビジネススクール教授の長内厚さんに聞きます。海外で作られた水素を日本に運ぶ船、どうご覧になりましたか?

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
「運べる、貯めておける」ことが、脱炭素時代のエネルギーとして水素が注目される理由の1つです。電気と比較すると、例えば、EVは乗らなくてもバッテリーは自然放電してしまいます。一方、水素エンジン車や現在のガソリン車などの内燃機関のクルマは、乗らなければ燃料は残っています。これは、いざという災害時にも大きな意味を持ってきます。

さらに、そもそも電気は使うタイミングではCO2を出しませんが、日本のように火力発電に頼る国では、電気を作るときにCO2を排出していますし、CO2を出しながら作った電力が貯められずに消えてしまうのはもったいない話ですよね。


三田友梨佳キャスター:
水素エネルギーを普及させるためにクリアしなければならない課題は何でしょうか?

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
消費者と水素エネルギーの距離を縮めて、水素の供給と消費を増やす。これが水素エネルギーのコストダウンに繋がりますし、水素エネルギーの拡大にも繋がります。

工場でも自動車でも水素を使える状態、国内どこでも水素が供給できるインフラをしっかり作って、水素エネルギーを 「作る」「運ぶ」「貯める」「使う」 といった分野に参加する企業、仲間づくりを増やしていく必要があるんじゃないでしょうか。

三田友梨佳キャスター:
川崎重工とのタッグも仲間づくりの1つだと思いますが、仲間の輪を広げていく際にはどんなことがポイントになりますか?

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
水素エネルギーに関する強みを日本の社会で共有すること。これは現在のガソリンスタンドに代わる水素ステーションの増加も大切だと思います。未来のクルマはEVで決まりという風潮があるが、EVはあくまで選択肢の1つであると捉えるべきだと思います。EVそのものはCO2を排出しないので一見クリーンに見えるが、発電所でCO2を出してしまう。

一方、水素エンジン車はCO2排出の削減に貢献できますし、何よりも日本のガソリン車で培ってきた内燃機関という強みも活かせる。日本が水素社会を実現すると海外にも広まっていきますし、せっかくなら日本の強いエンジンという技術を使って、日本がしっかりと収益化する。持続的なCO2削減には日本の強い技術を使うことが必要だと思います。

三田友梨佳キャスター:
水素エンジンの開発がどれだけ進んでも、水素を十分に作ってコストを下げながら確実に私たちの生活に供給されないと、水素社会の実現は難しいことだと思います。仲間の輪を広げていくことで、自動車の脱炭素の流れは一層勢いを増すのかもしれません。

(「Live News α」10月5日放送分)

(FNNプライムオンライン10月6日掲載。元記事はこちら

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