マッサージ師の“魔法の手”を筆で再現 6本の穂先が優しく肌をさする…匠の技が集結【広島発】

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伝統の技が意外なところで輝く。時代を超えたテクニシャンのコラボが地域を元気にしている。舞台は筆の街、広島県熊野町。しなやかな手触りの筆が今、意外なところで活用されている。

化粧筆ならではのしなやかさを活かす

竹宝堂 取締役専務・竹森祐太郎さん:
2022年で創業70年になります。うちは、ほぼ化粧筆の製造を行っております。


筆作りで知られる街、熊野町にある「竹宝堂」。日本を代表するメーカーの化粧筆を数多く手がけている会社だ。


竹宝堂 取締役専務・竹森祐太郎さん:
マッサージ用の筆の依頼があったものを作らせていただいてたところです。


「マッサージ用の筆」とはあまり聞きなじみがないが、広島市中区でリンパドレナージュのサロンを開く小笠原さんが製作を依頼した。


小笠原実穂さん:
顔の中には色んなツボや筋肉、血管もリンパ管もあります。すごく敏感な場所なので、あんまり無闇やたらには触らないように、マッサージというほどそんなに触りはしないですけれど。

コロナ禍も”自分の手の代わり”に

リンパドレナージュは、肌を優しく「さする」ことでリンパ液の流れを活性化させる方法で、リラクゼーション効果などが期待される。全国各地で活動している小笠原さん。年に数回はフランスに出向くなど、忙しく飛び回る日々が続いていたが…。


小笠原実穂さん:
コロナが来たんですよ。私もパリに行けなくなったりとか、全国の皆さんに会えなくなってきた。同時に皆さんも移動ができない。今だから私の手が必要なんじゃないかと、手をじっと見て考え始めたのが3年前です。

自分の手の代わりになるような筆をつくれば、自宅で使ってもらえるのではないか、とひらめいたのだ。


小笠原実穂さん:
手のひらをお届けしたくて。そうすると、ここに一個筆を置いて、ここにも置いて…6個になったんですね。


6本の穂先で手の形を再現する…。筆づくりを依頼したのは、これまで企業のオーダーに合わせた筆づくりの実績がある竹宝堂だった。

竹宝堂 取締役専務・竹森祐太郎さん:
どういった筆を作りたいか、こういう柔らかさのものが欲しいですとか、このぐらいの腰(コシ)感が欲しいですとか。色んなものを見てもらいながら、ちょっとずつ形にしていって…。


手の微妙な感覚…言葉で伝えるのに苦労

小笠原実穂さん:
私が感覚で「もっと欲しい」と言うと「何が欲しいんですか?」って聞かれる。「何だろうな、このワ~ってくる感覚がもっと欲しい」とお伝えすると、すごく困られて。それでも、何とか小笠原さんの言ってることを形にしましょうということで、すごく協力してくださったと思います。


竹宝堂 取締役専務 竹森祐太郎さん:
これはうちの会社の会長や社長が常々言ってることなんですが、「筆を使って何をしてもいいじゃないか」と。そういった意味では、今回うちで作るような筆が、今までの化粧筆ではなくマッサージに使うことができたので。筆の街・熊野町ですから、いろんな筆の可能性、いろんなモノに使っていくひとつの機会になれたらいいなと思います。


こうして穂先の目処は立ち、続いて必要になるのは、手でつかむハンドル部分の製作。こちらを担当したのは、広島市湯来町から世界に向けて家具を販売する「マルニ木工」だ。


マルニ木工・柳田康弘さん:
板の状態の物を削り出す工程なんですけど、機械の中で穴を開けて、それからおにぎり状の三角をそれぞれ削っていきます。


マルニ木工 代表取締役会長・山中武さん:
うちは家具を作っているということもあって、木で何でもできちゃうわけですね。ですが、工場の特徴として、家具のような大きな具材を削り出すのは非常に得意なんですが、ああいう小さなものを大量に工場で流すというのは、決して得意ではないです。ただ一方で、家具をつくる際に、どうしても大きな板から具材を取っていくと端材が出ます。


そこで、家具づくりには使用できない小さな端材を使って、小笠原さんのハンドルを製作することにした。しかし、大きな家具の生産が中心のマルニ木工。今回のような小さなパーツを作ることはほとんどなかった。そこで…。

匠の技の結集で優しい感触を再現

マルニ木工 代表取締役会長・山中武さん:
うちは工場のラインとは別に、試作をつくる職人たちがいます。彼らはデザイナーから出たデザイン案を一脚一脚、ほぼ手作りで試作品をつくっていったり、工場のラインでは難しい別注品をつくったり、言ってみればマルニの一番の強みの部分です。世界でもトップクラスの技能力、技術力を持った人たちだと思います。


マルニ木工 代表取締役会長・山中武さん:
大きな椅子であろうが、小さな具材であろうが、作ってほしいと言われれば、全力で丁寧に仕上げていく。おっちゃんたち職人たちにとっても、良い刺激になるんじゃないかなと思っています。

こうして、小笠原さんの思い描いた通りの商品が完成。その名も「SASUTTE (サスッテ)」。


小笠原実穂さん:
広島の技と伝統が、ここに凝縮されている。なるべく肌全部に当たるように穂先が6個あるので、筆の持つ”しなり”というものが、表面の凹凸に対してフレキシブルに対応してくれる。優しい手が必要な今、この筆があれば、優しい感触をご自身で体感していただける。これは本当に、皆さんの歴史と伝統と技でしかできないと、私は思っています。

地域のプロの技の結びつきが、コロナ禍の逆境を乗り越える新しい製品を生む力となっている。

(テレビ新広島)

(FNNプライムオンライン5月16日掲載。元記事はこちら

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