「手話通訳」なくても“会話”可能に 聴覚障害者の「見えない壁」 デジタル化でなくす取り組み【岡山発】

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今、さまざまな場面で進むデジタル化は、手話通訳の世界でも始まっている。
人工知能・AIを利用したシステムにCGを使ったものまで、聴覚障害者の生活を変える最先端技術を紹介する。

聴覚障害ある社員も…リアルタイムに意思疎通が可能に

聴覚に障害がある男性が、パソコン画面に向かって手話で質問すると…


「マイナンバーカードについて教えてください」

人工知能(AI)が手話を読み取り、文字に変換する。さらに、この質問に音声で回答すると…


「窓口でも申請できますよ」

しゃべった内容が、文字で表示される。手話通訳者がいなくても、聴覚障害者と会話が可能になるシステムだ。


篠田吉央キャスター:
こちらソフトバンクでは、AIを使った手話の新しいシステムを開発しています

SureTalk(シュアトーク)と名づけられた、このシステムの開発が始まったのは5年前。担当課長の田中敬之さんが、聴覚に障害がある社員との会議の際に、スムーズに意思疎通できなかったことを改善したいと考えたことがきっかけだった。

ソフトバンクシュアトーク課・田中敬之担当課長:
(会議中に)文字起こしした文字を、聴覚障害がある社員が読み解いている間に、われわれ健聴者は次の話題に進んでしまうので、聴覚障害がある社員がリアルタイムに意見が述べられなかった。聴覚障害者も同じ土俵に乗って、まずコミュニケーションを取って、リアルタイムに意思疎通することによって、仕事の効率もしっかりと上げていきたい


AIが適切な助詞を補い、自然な文章に

手話は手の動きや口の形、表情などを組み合わせて情報を伝えるが、このシステムは体の動きをAIが解析し、手話を文字に変換する。手話は単語の羅列だが、このシステムはAIが意味をくみ取り、適切な助詞を補って自然な文章にする。

篠田吉央キャスター:
(手話で)トイレはどこにありますか?(→文字に変換)
(音声で質問を受ける)右手奥にあります(→文字に変換)
(手話で)ありがとう(→文字に変換)


篠田吉央キャスター:
簡単な会話ですが、スムーズにコミュニケーションを取ることができました。例えば、あらかじめ答えが決まっている道案内などでも活用できそうですね

現在変換できる単語は約1,500。日常会話には5,000語が必要と言われ、まだまだ足りない。1つの単語を認識するには、100人以上のサンプルが必要なため、開発は簡単ではない。

ソフトバンクシュアトーク課・齋藤奈央さん:
今、手話ができない人と話す時に、手話通訳士などを仲介して会話しているが、時には自分自身で話したい時もあるので、シュアトークが使えたらいいなと思う。自分の言葉で相手に直接伝えたい


ソフトバンクは、このシステムを社会生活のさまざまな場面で活用してもらおうと、企業や大学、メディアなどが連携し、研究を進める協議会を立ち上げようとしている。

ソフトバンクシュアトーク課・田中敬之担当課長:
いろんな企業や団体の方々を巻き込むことによって、新しい発想やアイデアを得て、社会にこういったコミュニケーションの基盤を広げていきたい

CGキャラが手話で説明…スマホアプリで実用化目指す

一方、手話通訳のデジタル化は、岡山でも進んでいる。

篠田吉央キャスター:
岡山市にあるこちらの会社では、手話をCGにしています

画面の中のCGキャラクターが、手話で商品の説明をしている。岡山市のITベンチャー企業「白獅子」が、6月に完成させた。

白獅子・春名義之社長:
(この手話CGは)手話通訳者に取って代わるものではなく、これまで手話が届かなかった所で使ってもらえたらと考えています。今後は、町中や身近なことでのアナウンスや、災害時の危険を知らせる案内などで活用できればと願っています


これまで、音声や文字で伝えられていた情報を手話で伝えることで、聴覚障害者も情報を得やすくしようと考えているという。

白獅子・春名義之社長:
私たちの会社は、専門的であるがゆえに説明が難しいことを、CGの技術で視覚化してきました。つまり言語の壁を越えて説明してきたのですが、手話という言語もCGの技術を使って伝えられるのではないかと考えています

この日は、市内に住む聴覚障害者からアドバイスを受けた。

庄田正子さん:
人がやってるような動きで凄い。手話をする手と服の色が同じで見にくい

白獅子・春名義之社長:
服の色、髪の形や色、性別など全て変更することが可能です


庄田正子さん:
服と手の色が違っていいと思います。手話通訳者はどこでも一緒に行くことはできないが、この技術があれば、どこでも手話を見ることができて良い

ソフトバンクも、聴覚障害者の意見をシステム作りに取り入れ、将来的には開発したAIによる手話通訳をスマートフォンの無料アプリとして実用化を目指している。


体験した聴覚障害者:
(病院などで)筆談でいつも対応してもらい、大変だった。このシステムを使うとスムーズに会話できると思うので期待したい

ソフトバンクシュアトーク課・齋藤奈央さん:
(社会には)今、見えない壁がたくさんある。それを無くすきっかけになればうれしい

世の中を便利にするデジタル化は、聴覚障害者の生活にも大きな変化をもたらしそうだ。進歩する技術に期待したい。

(岡山放送)

(FNNプライムオンライン7月28日掲載。元記事はこちら

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