村が沈む…50年で約3度気温が上昇したアラスカで写真家が見た現実【愛媛発】

国際・海外 環境・自然・生物

25年以上もアラスカの大自然を撮り続けている写真家の男性が、愛媛・松山市出身にいる。気温が上昇し、氷河が減少し続ける中、男性が現地で目の当たりにした地球温暖化の現実を語った。

2年ぶりのアラスカでの撮影

25年以上にわたり単身、アラスカの大自然を撮り続ける愛媛県松山市出身の写真家・松本紀生さん。マイナス50度の極寒、そして、植物や動物たちの生きる力とともに、松本さんのレンズは地球に起こるさまざまな気候変動もとらえる。
松本紀生さんは約2年ぶりとなるアラスカでの撮影旅行から、9月に帰国した。

松本紀生さん:
今回は2カ所行ってきました。アラスカの西部にある先住民が暮らす村に行ってきました。その後にアラスカの南東部に移って、無人島でキャンプをしながら動物の写真を撮ってきました


松本紀生さん:
ザトウクジラが餌を食べている瞬間です。集団で狩りをしながら、食べるんですよ。ものすごい迫力なんですよね。40トンもあるクジラが大きな口を開けて、一斉に飛び上がってきました。
クジラが息を吐いているところ。吐いた息が白く浮かび上がる幻想的なシーンです。夕日が後ろからあたって、吐いた空気が浮かび上がっているところです。体長が12、3メートルある大きなクジラが一瞬にして、大ジャンプを繰り返す。3メートルの小さなボートから撮影してきました。50メートルくらいは離れています

クジラの大ジャンプをとらえた作品
クジラの大ジャンプをとらえた作品

松本紀生さん:
これはヤマアラシの赤ちゃん

愛らしいヤマアラシの赤ちゃん
愛らしいヤマアラシの赤ちゃん

松本紀生さん:
こんなふうに森の中をちょこまか動き回ってかわいらしく暮らしてます

アラスカの温暖化が進んでいる

松本さんは撮影のほかに、ニュートクという町も訪ねた。


松本紀生さん:
アラスカには、ニュートクのように温暖化で村がなくなろうとするところがたくさんある。そういう村々は移住しないと安心して暮らせないところまで来ているけれども、費用がかかるのでなかなか移住できない。そんな中で初めて移住が始まったのが、人口380人の小さなニュートクという村です


ニュートクは、村の中に水がどんどん入り込んでいる状態だ。

松本紀生さん:
永久凍土が溶けていくので、地盤が沈下して洪水が頻発。村の沿岸が川の水で削られ、村自体がなくなろうとしています


ニュートクに住んでいるのはどんな人たちなのだろうか。

松本紀生さん:
村で暮らしているのは先住民の人たちです。人口380人だが、半分ほどが新しい村に移住しています。彼らも早く移住をしないといけないが、なかなか進んでいない状況です


松本紀生さん:
けものや魚を捕って自給自足のような暮らしをしています。マスを乾燥させて、冬の間も食料とするという、そういった生活をしています


松本紀生さん:
家は草の上に建っているので、地盤沈下が進んでいるので傾いていっている。もともと何軒も建っていたところが、地盤沈下と浸食によって、基礎が追いやられてしまった。温暖化が進んでいるということです。この村は安心して暮らすことができなくて、一刻も早く移住しないといけないんです


村で目に入るのは、傾いた電柱ばかりだ。


松本紀生さん:
こんな電柱ばかりでした。緑の土地がぬかるんでるので、こんなふうに大きく傾いた電柱ばかりなんです。傾いたそのままです。真っすぐ立て直してもすぐ傾いてしまうので意味がないんです


松本紀生さん:
歩くところも水田のようにぬかるんでいました

「僕もこんな状況に追いやったのでは…」

そんなニュートクの人たちを前に松本さんは…。

松本紀生さん:
いろいろと突っ込んだ話をうかがいたかったけれども、僕も彼らをこんな状況に追いやったのではという負い目があり、くわしい話はなかなか聞くことができなかった。先進国に暮らしている僕のような大人のせいで、彼らをこんな状況に追いやっている。それが申し訳なかったです


松本紀生さん:
彼らは多くを語らないんです。もともと先住民の人たちはそうなんですけど、だからこそ内に秘めた憤りはきっとあると思うんですよね。それを出さないからこそ、本当に申し訳ないなという気持ちを新たにしてきました

この50年で、アラスカ州でも、北極に近い地域では約3度気温が上昇している。

松本紀生さん:
これは2022年に撮影したアラスカの写真。氷も氷河もすっかりなくなってしまっています


松本紀生さん:
アラスカではこの氷河だけではなくて、いろんなところで氷河がものすごい早さで減少していっています。それぐらい気温が上がっているということなんです。氷河の減少自体はこれまでも起こっていました。でも、温暖化の影響でどんどんその範囲と早さが加速度的になっています

これは、アラスカの氷河の減少ペースを示したグラフだ。


松本紀生さん:
一目瞭然ですね。右肩下がりで氷河がなくなっていっています

累積での消滅量は数十億トン単位、かなりの量が消えてしまっている。

国連は気温上昇を抑えるためキャンペーンを立ち上げ

ふるさとが丸ごとなくなってしまうという温暖化の現実を目の当たりにして、松本さんは何を感じたのだろうか。

松本紀生さん:
僕たちができることって本当に小さなこと。でも、現状を知って、関心を持って、小さなことでも行動していくことが本当に大事だと思いました。こういうことが起こっているということを僕は知っていました。ただ、今までは見て見ぬふりをしてた。でも、そんなわけにはいかない。このまま放っておいたら手遅れになってしまうという、そういう気持ちから取材をしてきました


国連では2022年6月に、共同キャンペーン「1.5℃の約束~今すぐ動こう、気温上昇を止めるために。」を立ち上げている。

これは「世界の平均気温の上昇を、産業革命以前に比べて1.5度に抑える」というもの。気温はすでに1.1度上昇しているので、プラス0.4度までで抑えなければならない。


そして、そのためには、世界のCO2排出量を2030年までにほぼ半分に、2050年ごろに実質ゼロに、さらに、メタンなどその他の温室効果ガスも大幅に削減する必要がある。

「小さなことが大きな力に」

こういった事実を突きつけられると途方もないミッションのようにも思えるが、今回、最前線で温暖化の現実を目の当たりにした松本さんはこう語る。

松本紀生さん:
小さなことから始めることが大事だと言いました。僕自身も小さなことをやっているけれど、これでいいのかなと思うこともあります。でも、小さなことが大きな力につながる可能性があるんです


松本紀生さん:
例えば、大企業は消費者を相手にしていますから、このままでは消費者からそっぽを向かれると気付いてくれれば、企業が方向転換して、地球に優しい方に経営方針を変えてくれたりする。国も動いてくれるかもしれない。そういう大きな力につながる可能性があるので、小さなことはとても大事だと思っています。知って関心を持って行動してほしいと思います

松本さんはこの冬、再びアラスカに渡り、オーロラを撮影する。

(テレビ愛媛)

(FNNプライムオンライン11月5日掲載。元記事はこちら

https://www.fnn.jp/

[© Fuji News Network, Inc. All rights reserved.]

米国 FNNニュース 愛媛県