幻の「放ち鵜飼」を復活させた女性鵜匠 1000年以上の伝統を誇る「宇治川の鵜飼」で新たな試み【京都発】

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千年以上の伝統を誇る「宇治川の鵜飼」で新たな試みが行われた。いつもは綱を使って鵜を操り魚をとらえる鵜匠が、その大事な綱を手放してみると…。戻ってくる鵜もいれば、遠くまで羽ばたいてしまう鵜も。幻の「放ち鵜飼」に挑戦する姿を取材した。

幻の「放ち鵜飼」に挑戦

7月の夜、京都の宇治川で鵜飼が行われていた。平安時代から続く夏の風物詩だ。新型コロナによる中断を経て、ことし3年ぶりに完全復活を果たした。


小屋で鵜の世話をしているのは、鵜匠の沢木万理子さん。沢木さんは20年前、関西初の「女性鵜匠」としてデビュー。長年、宇治川の鵜飼を支えてきました。


沢木さんが腕に抱いた鵜の頭を撫でながら、紹介をしてくれた。

鵜匠 沢木万理子さん:
この子が一番若い、ことしの6月に生まれました。大きさは大人と変わらないけど、くちばしが黄色い、子どもさんの顔をしている


沢木さんたちは8年前、育てるのが難しいとされるウミウを全国で初めて人工繁殖させることに成功。ここで生まれた鵜の名前は全員、“ウッティー”だ。


本来であればオフシーズンの10月。沢木さんとウッティ―は、新たな挑戦を始めていた。それが「放ち鵜飼」だ。

鵜匠は、鵜におよそ4mの「追い綱」をつけて操り魚を捕えますが、「放ち鵜飼」はこの綱を使わない。


これまで島根県だけで行われていたが、2001年以降は途絶えてしまった幻の鵜飼だ。


ウッティ―の人工繁殖を成功させた宇治の鵜匠たちは、この放ち鵜飼を復活させようと、4年ほど前から準備を進めてきた。

鵜匠 沢木万理子さん:
人が育てることで私たちのことを親だと思って育ってきますし、すごく私たちに懐いていく。その様子を見て、このヒナが大人になっても鵜飼いをするときに、これだけ私たちのことをしっかりと認識しているのであれば、その綱をつけなくても鵜飼ができるんじゃないかなと


本番へ練習開始「帰っておいでー」

本番まで2週間を切る中、この日も早速練習開始!かごから鵜を出して川に放つ。「頼むし、帰ってきてや」と鵜に語りかける沢木さん。戻ってくれば魚がもらえることをウッティーたちに覚えこませる。

しばらく放した後で、「ウッティー!ウッティー!帰っといで!」と呼びかける。


しかし…ウッティーたちは向こう側の岩場に上がってしまった。「ここが気持ちええんや」と言わんばかりに、岩場で休憩中。呼びかけてもなかなか戻ってこない。


「はいおいで!」と何度か呼びかけると、1羽が戻ってきた。沢木さんは「よっしゃ~偉い子や」と褒める。

ちゃんと戻って来る優等生もいる一方で、はるか遠くへ羽ばたいて行ってしまうウッティーも…。 ウッティーたちの“飛びたい“気持ちも抑えなければいけない。


沢木さんは、船に乗って遠くに行った鵜を迎えに行き、諭すように話しかける。

鵜匠 沢木万理子さん:
あっちに帰らなあかんのにあんた。どこに来てんのよ


また、放してもすぐに戻ってくる子も。

鵜匠 沢木万理子さん:
何で帰ってくるんよ(笑)

母親代わりの沢木さんから離れようとしない甘えん坊なのだ。


鵜匠 沢木万理子さん:
まだ帰ってくる時間がかかっている子もいれば、帰ってこなかった子もいる。焦ったり、イライラするのが鵜に伝わると鵜もイライラするので、鵜と接するときはできるだけ穏やかに

 

 

綱がなくても通じ合う、人と鵜の絆が試されている。


京都の新たな観光資源へと

本番が近づく中、観客向けのパンフレットなどの準備が始まった。今回、沢木さんは「うみうのウッティー相関図」を作成した。

ウッティーの性格や仲良しの子たちや恋愛など関係が分かりやすく書かれていて、鵜飼をより楽しめるよう工夫されている。

鵜匠 沢木万理子さん:
(お客さんも)“推しウッティー”とかがいると、「がんばれ!」と思って見ることができるのかなと


放ち鵜飼はウッティーたちの姿が見えやすい昼間に開催する。1羽1羽についているタグに色をつけることで、お客さんにもウッティーの見分けがつくように工夫している。

普段の宇治川の鵜飼は、7月から9月にだけ行われるが、最近は大雨により川が増水することが増えていて、ことしはわずか30日あまりしか開催できなかった。宇治にも少しずつ観光客が戻ってくる中、夏以外に行う“新たな形の鵜飼”を目指している。


鵜匠 沢木万理子さん:
今までは、あの夏の夜の鵜飼いだけだったが、これからは放ち鵜飼をこの秋、来年の春も予定をしています。宇治の新しい観光の一つとして、これからどんどん認知度も高まっていたらいいなと思っています


試される人と鵜の絆

迎えた当日。大勢のお客さんが詰めかけた。興奮気味のウッティーたち。開始前から飛び込もうとする鵜もいた。

鵜匠 沢木万理子さん:
ウッティー、えらいやる気満々やな!

お客さんへの説明が終わると、いよいよ、ウッティーたちが放される。


魚を追い、水に入ったウッティーたち。追い綱に縛られず、機敏に泳ぎ回る。しばらくすると沢木さんが呼び戻す。それぞれ、魚を飲み込んだのどを膨らませ、岸に帰ってきた。

鵜匠 沢木万理子さん:
はい!赤色と黄色のウッティー戻ってきましたね!

ウッティーが魚を吐き出すと、お客さんたちから歓声が。

鵜匠 沢木万理子さん:
はい!よう取った、がんばったな

次から次へと戻って来たウッティーたちが魚を吐き出す。お見事!“放ち鵜飼”は大成功に終わった。


女性客:
感動でした。学生時代に一回テレビで見てずっと気になってて、やっと生で見られる機会ができたので、すごく良い経験になりました

男性客:
鵜匠の方も言ってましたけど、夜はかがり火焚いてますけど分からないですよね。鵜の動きというのは。ただここはもう昼間ですからそれもよく見えて今日来てよかったなと


鵜匠 沢木万理子さん:
皆さんのご支援とご協力、応援のおかげだと思います。ありがとうございます

(Q.ウッティーの点数は?)
鵜匠 沢木万理子さん:
100点です、よくやった、よくやった


ウッティーと鵜匠の見えない“つな”がりで、京都の伝統に新たな1ページが書き足された。

(関西テレビ「報道ランナー」2022年10月26日放送)

(FNNプライムオンライン11月6日掲載。元記事はこちら

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