異例!今年だけで50発超なぜ?”ミサイル先進国”北朝鮮の知られざる「貴族部隊」 日本を狙う「変則軌道」の脅威

国際・海外 安保・防衛

記者リポート:
鬱陵(ウルルン)島地域に空襲警報が出されたとして、韓国のテレビ局が一斉に報じています

11月2日 弾道ミサイル3発
11月3日   弾道ミサイル6発
11月5日   弾道ミサイル4発

異常なペースでミサイル乱射…真の狙いは?

2022年11月だけでも、わずか5日間で13発と、異常なペースで弾道ミサイルを撃ち続ける北朝鮮。その理由を、多くのメディアは米韓の合同軍事演習に抗議するためと解説するが…、決してそれだけではないと語るのは、東アジアの安全保障問題に詳しい山口亮氏。


東京大学先端科学技術研究センター 山口亮 特任助教:
(抗議と)同時に、北朝鮮としては軍事演習、訓練でもありまして。ミサイルの性能検証と、関連部隊の練度や即時発射能力などを確認、そして向上させているというふうに見ております

抗議と同時に、着々と実戦配備に向けた性能実験を行っているという。

また、北朝鮮の元・軍当局者で脱北者のアン・チャンイル氏も、合同演習への抗議はポーズであり、あくまでも実戦配備への布石だと語る。


世界北朝鮮研究センター所長 アン・チャンイル 氏:
米韓の演習は、実に好都合だと思ったのでしょう。(これを口実に)必要なミサイルの実験を沢山しておこうとしているわけです

そして、ミサイル防衛に詳しい元防衛省・情報分析官の西村金一氏は…


軍事・情報戦略研究所 西村金一 所長:
いずれ日本に届く変則型のミサイルができる。そうすると日本は対応できない

ここ10年間の北朝鮮による弾道ミサイルの発射数をまとめてみると、これまでは、多くても2016年の23発や2019年の25発などだった。
しかしなんと2022年は、すでに50発以上も発射している。以前とはまるで次元が違うことが分かるだろう。
では一体なぜ、北朝鮮はここ数日ミサイルを乱射しているのか?いや、出来るのか?

東京大学先端科学技術研究センター 山口亮 特任助教:
一部のミサイルの生産力が非常に高いと。かなりハイペースで発射とかしてますけども、同時にそれぐらい量産できているということ。訓練用のミサイルだけでなく、実戦用・本番用のミサイルも量産して、実戦配備力と即応力があるっていうことを反映してるのではないでしょうか

すでに量産体制に入り、実戦配備が視野に入ってきたからこそ、最後の試験発射を繰り返しているという山口氏。
それを裏付けるのが、ミサイル防衛に詳しい、元防衛省・情報分析官の西村氏だ。

 日本を狙う「変則軌道」ミサイルも完成間近か

軍事・情報戦略研究所 西村金一 所長:
金正恩体制になって、格段にミサイルのレベルを上げたし、中国・ロシアのミサイルのレベルに近づいているというところまで来ている

ーー世界的に言うとどのくらい?
極超音速滑空体というのを持っているのは、アメリカ・ロシア・中国の3カ国だけ。北朝鮮が完成させると(世界で)4番目になる

なんと気がつけば、アメリカ・ロシア・中国に次いで世界4番目の技術を持ちつつあると語る。

ーー北朝鮮のミサイル能力は、この数年で格段に上がった?
軍事・情報戦略研究所 西村金一 所長:
そうです。レベルが次から次に高くなっている。アメリカまで届くものを作ったし

確かにこれまでも北朝鮮は、ミサイルの発射実験を重ねる度に、その完成度を高めてきた。なかでも2022年3月に打ち上げられた「火星17」は、地上400kmにある宇宙ステーションの、約15倍の高度6000km以上に達した。これをもし通常軌道で撃てば、アメリカ全土を射程に捉えることも可能になる。



しかもやっかいなのが「変則軌道」のミサイルだ。

「変則軌道」とは、打ち上げた弾道通りに自然な放物線を描いて落ちてくるのではなく、ガスの噴射によって、予測された軌道を変えてしまうこと。


軍事・情報戦略研究所 西村金一 所長:
大きな修正をされると、(迎撃)ミサイルがどこにいったら良いか分からなくなり、撃ち落とせなくなるんです。
(イージス艦搭載の)SM3という高高度で撃ち落とすミサイルでは、撃ち落とすことができないんです

では、地上に配備された”最後の砦”「PAC3」なら撃ち落とせるのかと言うと…

軍事・情報戦略研究所 西村金一 所長:
(PAC3が打ち落とせる)20kmの手前で核爆発させられると、日本は完全にお手上げ。だから核爆弾を空中で打ち落とせないと大変なことになる


これほどやっかいな「変則軌道」のミサイルだが、韓国などを狙う「短距離弾道ミサイル」ではすでに実験を成功させているという北朝鮮。


そして、今や彼らが完成させようとしているのが…

軍事・情報戦略研究所 西村金一 所長:
これからは(日本を狙える)中距離弾道ミサイルでも、変則軌道の弾頭部分をつけると思います。それはもう間近だと思います

日本全土を狙える「中距離弾道ミサイル」でも、変則軌道の完成は間近だという西村氏。
となると、近々予定されているという核実験も…

東京大学先端科学技術研究センター 山口亮 特任助教:
例えば、ある程度小型化された核弾頭・核爆弾を爆発させることに成功したとなると、それはミサイルに搭載できて、それをミサイル攻撃を通じて爆発できる

つまり、どこからも撃ち落とされない完璧な“核の脅し”が使えるようになるという。
しかし、なぜ毎日の暮らしに困る人民が多いはずの北朝鮮に、そんな技術的躍進が可能だったのか?その秘密こそが…

北朝鮮ミサイル開発…知られざるエリート組織「貴族部隊」


世界北朝鮮研究センター所長 アン・チャンイル 氏:
完全にエリートだけで組織された“ドリームチーム”が存在しているからです

金正恩が作り上げたミサイル開発に特化した”ドリームチーム”。
大学で、ロシアや中国から提供された最先端のミサイル技術を学び、世界的な軍事エリートと化した彼らのことを…

世界北朝鮮研究センター所長 アン・チャンイル 氏:
北朝鮮では「貴族部隊」と呼んでいます。
かつては空軍部隊の食事が一番良かったのですが、今は金正恩の指示で、ミサイルチームが一番です。豚肉や鴨肉もよく出てきますし、軍服も他の部隊より分厚い毛織物を着ています

そう、北朝鮮が持てる全てのリソースをミサイルチームに一極集中することで、今日の成果をあげたというチャンイル氏。
では、そこまで振り切れたワケとは…?

世界北朝鮮研究センター所長 アン・チャンイル 氏:
金正恩は、今ある戦力では戦えない事をよく知っているからです。
ならば旧式の武器しか持たない陸軍などは運河建設などの経済活動に回して、前線で使うミサイル開発だけに資金を集中させればいい。そんな戦略を考えているのではないか

すべての軍事力をまんべんなく上げるのではなく、ミサイルという強力な武器ひとつで世界と渡り合えばいい。そんな戦略を打ち出し、かつて祖父や父でさえ持ち得なかった軍事力を、近い将来手にしようとしている金正恩。

北朝鮮の脅威「日本はやられっぱなしになる」

知らぬ間に世界有数のミサイル攻撃能力を手にしていた北朝鮮。
だが、2022年3月に北朝鮮の国営メディアで「火星17」の実験成功を祝い、大仰なプロモーションビデオのような動画を発表したとき、私たち日本人はその感覚を、時代錯誤なものとして笑っていなかっただろうか。

軍事・情報戦略研究所 西村金一 所長:
(日本は)やられっぱなしになるし、なおかつ正確に当たる。国会議事堂でも狙えば当たるし、撃たれてしまえば撃ち落とせない。
その脅威が増しているところを、日本の国民はよく理解していないというか、感覚的に感じていない。それは非常に危ないことだと思う


では、その脅威を目の当たりにした時、私たちに何ができるのか?
その時は、もう目の前に迫っている。

(「Mr.サンデー」11月6日放送分より)

(FNNプライムオンライン11月7日掲載。元記事はこちら

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