わずか5ミリの害虫が原因⁉ 樹木の伝染病「ナラ枯れ」土地の所有者不明で対策進まず...【広島発】

地域 社会

広島県内では2006年度から、害虫の大量発生で木が枯れてしまう”樹木の伝染病”がまん延している。なぜ、発見から15年以上経った今も解決が難しいのか…問題は害虫だけではなかった。山の景観にある変化も起きている。対策に追われる中、被害が広がる現場を取材した。

わずか5ミリの害虫が樹木を枯らす

島根県との県境にある北広島町の山林。紅葉する木々に交じって、SOSをあげている木がある。


10月28日、原生林に多く生えるナラの木の調査が行われた。廿日市市を拠点に樹木の治療や剪定にあたっている塩田賢寿さんと一緒に山奥へ入っていくと、木の幹のあちこちに異変が見つかった。

塩田剪庭園・塩田賢寿さん:
あ、これ、やられているかも。ここもですね。1本の木が集中的に攻撃されています。樹液が出ているので、人間で言えば出血して傷が広がっている感じ

北広島町の山林で、ナラの木の幹を調査する塩田さん
北広島町の山林で、ナラの木の幹を調査する塩田さん

塩田さんが”出血”と表現したのは、木の表面にあるいくつもの黒い斑点。


これは、体長5ミリほどの害虫「カシノナガキクイムシ」が飛来し、木の皮を噛み砕いて中に入り込んだ痕跡である。

カシノナガキクイムシは太い木を好んで生息する。メスが卵を産む時に発生する「ナラ菌」によって、木が水を吸い上げる道管が侵食され、ゆっくりと水分が失われて枯渇する。通称「ナラ枯れ」と呼ばれる、樹木の伝染病だ。

木の道管が侵食され、水分が行き渡らなくなって枯渇したナラ
木の道管が侵食され、水分が行き渡らなくなって枯渇したナラ

何も手を打たなければ害虫の卵がかえり、翌年6月以降、羽化した成虫が木の外へ飛び立ってしまう。そして新たな木に入り込む…。塩田さんは「この悪循環が続くと将来的に人々の暮らしにも影響が出る」と予測する。

塩田剪庭園・塩田賢寿さん:
最も懸念される影響は自然災害。多くの木が枯れてしまえば、土砂災害や地形の変化につながります


所有者不明の”私有林”は処置進まず

林野庁によると、「ナラ枯れ」は2010年度をピークに全国の被害量が減少したが、2021年度も東北や関東など42都府県で確認されている。


広島県内でも2006年度に初めて発見されて以降、各自治体が薬剤を注入し害虫を死滅させようと対策に乗り出している。しかし、ある課題が…

安佐北区役所農林課・西澤永恵 専門員:
山の所有者の同意が取れないと、私たちが勝手に持ち主の財産に手を加えることはできません。ところが、山の持ち主も分からなくなっている


広島県内の森林面積のうち約7割が個人が所有する私有林。所有者と連絡がつかなくなったり、土地の境目が分からなくなったりするなど「ナラ枯れ」の処置が満足に行えず、その拡大に歯止めをかけることができないのだ。近年、再び増加傾向にある「ナラ枯れ」被害を食い止めるためにも、私有林で害虫「カシノナガキクイムシ」の駆除にどう取り組むかが問われている。

森林を赤く染め、山の景観にも影響

これは、2021年にヘリコプターから撮影された広島県北部の山林。緑が生い茂る中に、ところどころ赤い葉が見える。紅葉ではなく「ナラ枯れ」を起こしているのだ。

紅葉の季節ではないのに、「ナラ枯れ」が山の景観に影響
紅葉の季節ではないのに、「ナラ枯れ」が山の景観に影響

7月から9月にかけて被害が現れ、放置すると倒木の可能性も。埼玉県ふじみ野市の公園では2022年7月から「ナラ枯れ」によって園内が閉鎖され、休園になる事態も起きている。

さらに「ナラ枯れ」の危険性はそれだけにとどまらない。2021年9月、福島県南相馬市で撮影された真っ赤なキノコ。ナラの木が枯れると毒キノコ「カエンタケ」が発生することが…。3センチ分を食べただけで死に至る猛毒性のキノコで、触れると皮膚が炎症を起こす。理由は分かっていないが、「ナラ枯れ」の周辺でカエンタケが発生する傾向があるという。

ナラ枯れの周辺で発生する傾向がある猛毒性キノコ「カエンタケ」
ナラ枯れの周辺で発生する傾向がある猛毒性キノコ「カエンタケ」

わずか5ミリの害虫が引き起こす「ナラ枯れ」。被害をどう終息させるのか、見通しは立っていない。

(テレビ新広島)

(FNNプライムオンライン11月9日掲載。元記事はこちら

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