「自分の体で地球の大きさを実感」元越冬隊長が語る南極地域観測隊での経験、感動した”絶景3選”

科学 環境・自然・生物

青森公立大学・経営経済学部・地域みらい学科の三浦英樹教授。

現在、学生に科学論の基礎、地球科学、地理学、自然史などを講義しているが、実は、南極の越冬隊長を経験し、7回にわたり南極での研究・調査をした南極研究者の“エキスパート”だ。

三浦さんは、極寒の地、氷の大地でテント生活を400日も送ったという。

その三浦さんに、南極で最も美しいと感じた風景ベスト3や調査で得られた経験、そしてこれからの南極研究の展望について話を聞いた。

環境変動が地形に残した痕跡に感動「絶景3選」

三浦さんが南極で感動する風景は、ペンギンでも、ダイヤモンドダストでもなく、“地球の環境変動に伴う南極氷床の拡大と縮小が直接的・間接的に地形に残した痕跡”だという。

一つ目は、「スカルブネス・きざはし浜」

スカルブネス・きざはし浜
スカルブネス・きざはし浜

写真が撮影された「きざはし浜」は、今は氷は見られないが、海岸線が相対的に隆起した痕跡が残ることから、氷期には周囲も含めて氷に覆われていたと推察できる。内湾の穏やかな環境のため、地形が破壊されずに、約7000年前以降の階段状の隆起海浜地形が奇跡的に残されている。
 

二つ目は、「ラングホブデ北部 ザクロ池と小湊」。 

ラングホブデ北部 ザクロ池と小湊
ラングホブデ北部 ザクロ池と小湊

約5万年前に氷床が拡大したことによって侵食された、J字型の特徴的な氷食地形。J字型地形の前に、氷床が解け陸地が隆起したことで、元は海底だった場所が池となっている。
 

そして、三つ目は、「セール・ロンダーネ山地・ブラットニーパネ手首山付近から見た南方の風景」

セール・ロンダーネ山地
セール・ロンダーネ山地

ここからは、ジェニングス氷河と氷床上に高くそびえ立つ山地が見られる。この周辺の山地は、少なくとも約200万年前頃まで氷床に覆われていた。
 

三浦さんは、「地図や地球儀を見ていても想像の世界でしかなかった地球の大きさや広さを自分の体で実感できたことが忘れられない」という。

南極の観測から卒業し青森公立大学の教授になった今、自身の経験を通して、学生たちにも地球全体を感じて温暖化など現在進行形の様々な事象や課題をとらえてほしいと願う。

南極は“未知の世界” 東南極の調査が今後のカギ

これからの南極観測や研究について三浦さんは、まだ南極は“未知の世界”だと語る。

例えば南極に生息する生物についても、ミクロな生物の新発見に加え、地球全体を視野に入れた様々な生物間の相互関係にも新たな発見があるのではないかという。

そして、欧米の基地が極めて少ない日本の昭和基地がある南極の東側、東南極での調査・観測の成果が地球のミライを予測するうえでの“カギ”となると話す。

昭和基地がある東南極はミライを予測するカギに
昭和基地がある東南極はミライを予測するカギに

東南極は西南極よりも圧倒的に蓄積されている氷の量が莫大である。この氷を“眠れる巨人”と例える科学者も多い。

その“眠れる巨人”が一気に解けてしまうのか、温暖化の影響を受けずに残り続けるのか。今まさにこの研究が進められているが、結果次第で地球のミライの見方や現在の人類のあり方が大きく変わることになる。

三浦さんは、「今までの仕事も振り返りながら、自分の住む町の風景、地形がどうしてできたのかを考えることで、氷期・間氷期の時間の流れや、気候変動などダイナミックな地球の営みを感じることができる。

人類を含めた地球という惑星がどうやってできているのか、その成り立ちを知ること、そして、社会や文化も含めてこれからどうあるべきなのかを考えることは、これからの人類にとって大切な教養のひとつになるのではないか」と語った。

三浦英樹教授  青森公立大学
三浦英樹教授  青森公立大学

〈三浦英樹さん〉
青森公立大学教授。1994年国立極地研究所入所、第37次南極地域観測隊(夏隊)参加。第38次(夏隊)、第40次(夏隊)、第45次(夏隊)、第47次(越冬隊)、第51次(夏セールロンダーネ山脈)。第56次越冬隊長。地形地質や貝の化石を利用した南極氷床変動の研究を行う。2022年度から現職。

(FNNプライムオンライン11月9日掲載。元記事はこちら

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