食生活の欧米化で増えた「前立腺がん」前立腺肥大症との違いや前立腺がんの予防法・治療法を専門医が解説

暮らし 健康・医療

シリーズ「名医のいる相談室」では、各分野の専門医が病気の予防法や対処法など健康に関する悩みをわかりやすく解説。

今回は泌尿器科の専門医、くぼたクリニック松戸五香の窪田徹矢(くぼた・てつや)院長が、日本人男性のがんで一番多い「前立腺がん」について徹底解説。混同されやすい前立腺肥大症との違いや、予防のため気をつけたい食生活や治療法について解説する。


前立腺がんとは

「前立腺」というのは、膀胱の下にある精液を作っている生殖器の細胞のところ。この部分ががん化したものを、前立腺がんと言います。


前立腺がんは、男性のがんの中で今、一番多いと言われています。欧米やアメリカなどでは、20年ほど前からがんのナンバーワンだったんですけれども、日本でも2015年以降、前立腺がんが一番多くなっています。

前立腺がんの症状

前立腺がんの一番の問題ともいえることは、症状がないことです。ですので基本的には採血し、「PSA」という腫瘍マーカーを測らなければわからないというところがポイントです。

早期の前立腺がんは、多くの場合は全く自覚症状がありません。おしっこが出にくいとか、おしっこが近いなどといった症状が前立腺がんの症状だと思われることが多いんですけれども、一般的に言うと、それは「前立腺肥大症」の症状なんです。


よく前立腺がんと前立腺肥大症っていうのが混同されることが多いと思うんですけれども、全く違う病気です。

つまり、前立腺が肥大することで、おしっこが近いとか尿が漏れるとか、そういう症状が出るのは、あくまでも前立腺肥大症の症状であって、前立腺がんの症状というのは基本的には無症状です。

しかし進行していくと、骨やリンパ節などに転移をしていきます。その場合は骨転移が結構多く、そうすると腰痛などの自覚症状が出るということもありますが、基本的には無症状です。

前立腺がんの生存率

いわゆるステージ1、2という早期がんの場合は、もう5年生存率は100%ですから、ほぼほぼ前立腺がんで亡くなるという可能性は0です。ステージ4、いわゆる転移しているような前立腺がんの場合は、5年生存率は大体4割~5割くらいになっています。それでも、転移している割には生存率が高いと思います。

前立腺がんの原因

前立腺がんの原因は、大きくはあまりよくわかっていないというのが実情ですが、高齢者に多いがんです。

前立腺がんは、いわゆる男性ホルモンに影響を受けて増殖するというふうに言われています。原因については、遺伝、食生活、男性ホルモンのほか、50歳以上の方がなりやすいので、加齢が原因とも言われています。

特にご家族などで、例えば父親やご兄弟の方で前立腺がんがあると、リスクが2倍になると言われています。ご家庭の方で前立腺がんの方がいると要注意となります。

また前立腺がんは先述の通り、欧米で多いんですけれども、男性のがんの中では今、日本でも一番多くなった。その原因のひとつには食生活があります。食事の欧米化です。

日本人の食生活でも、例えば赤身の肉や乳製品といったものが多くなったのが、前立腺がんが増えた一因だとも言われています。


前立腺がんの治療

前立腺がんの治療ではまず、治療方針を決めていきます。

がんと診断された場合は、皆さんよくステージ1とか2、3、4などと言いますが、がんが他の部分に転移してないか、進行していないか、全身の状態や合併症などを全てチェックした上で、治療法が決まります。

その上で、大きく分けると前立腺がんの治療は3つに分類されます。

まず1つ目は、手術です。

今はロボットでやる「ダヴィンチ」という手術が主流になっています。前立腺そのものを丸々取って、膀胱と尿道をつなげるという手術をします。

2つ目は、放射線療法。

これは簡単に言えば、前立腺のところに放射線を当てて、がんを死滅させるという方法です。

そして3つ目は、ホルモン療法です。

これは根治的な治療ではないですけども、男性ホルモンが増殖すると前立腺がんが進行することがわかっているので、男性ホルモンの分泌を抑えることによって、がんを抑えるという治療です。

前立腺肥大症の治療と前立腺がんの関係

一方、前立腺肥大症でおしっこが出にくいなどの場合には、「ホーレップ」などといったレーザー手術が今主流です。これは前立腺全てを取るわけではなく、前立腺の中身をくり抜くような手術です。

前立腺がんにおいても、そうすることによって、がんをある程度抑えてPSAが下がる可能性もあります。けれども前立腺がんは残念ながら、前立腺の外側の「外線(がいせん)」という部分にできやすいんです。ですので中をくり抜いたとしても、がんは外側にあるので、全ての前立腺を取り切らない限り、がんがなくなるということはないんです。

あとはよく前立腺肥大症のお薬で、「デュタステリド」というお薬があります。男性ホルモンを抑えることで、前立腺を小さくする効果があります。

これを飲むと、前立腺がんのPSAの値が下がってきます。これは前立腺がんを予防しているというよりは、PSA自体が見かけ上は低くなるので、少しがんが抑えられているのではないかというような可能性があります。

もちろん、この薬を飲んだからといって、前立腺がんにならないというわけではありません。ただ男性ホルモンを抑える方向にいくと、前立腺がんも抑える可能性があります。

前立腺がんの予防

予防については、ご家族に前立腺がんの方がいらっしゃると、特に注意した方がいいと思います。

食事では赤身の肉とか、乳製品を極力取りすぎないことも大事になってきます。あとは研究結果で、大豆に含まれるイソフラボンに前立腺がんの予防効果があると、さらに実証されてきています。


いわゆる和食豆腐とか納豆とか、そういうものを積極的に取ることによって、前立腺がんが予防できるのではないかということがわかってきています。このように、食生活はやはり和食を中心としたり、バランスの良い食事を心がけることも非常に大事です。

気になったらPSA検診を

前立腺がんは、全く症状がないということが問題です。

前立腺がんのPSA検診は、血液検査をするだけですので、近くでPSA検診などをされてる場合は必ず受けていただきたいです。人間ドックなどでも、オプションで入っていることもあります。血液検査の中の項目の一つに入れるだけですから、ぜひ1年に1回、50歳を超えたらPSA検診をしていただきたいです。PSAが数値で「4」を超えてないかどうかというのをぜひ、見ていただければと思います。

(FNNプライムオンライン11月10日掲載。元記事はこちら

https://www.fnn.jp/

[© Fuji News Network, Inc. All rights reserved.]

FNNニュース 健康・医療