コロナ禍で露見した“不安定さ”…回復気運高まる観光業界で人手不足への懸念【岐阜発】

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全国旅行支援や水際対策の緩和が始まり、観光地として人気の岐阜県高山市では期待の一方で、観光業界での“人手不足”が懸念されている。

インバウンドで観光業回復の機運高まる高山市


古い町並みが訪れる人々を魅了する、岐阜県高山市。


市内のホテル「ホテルアソシア高山リゾート」では…。

ホテルのスタッフ:
こちらが新設したキングサイズベッドのお部屋でございます

広々とした部屋に用意されたキングサイズのベッド。


さらに、英語やスペイン語での観光マップ。


「インバウンド」を狙って準備を進めてきていた。


ホテルの総支配人:
外国人好みの客室も備えておりますので、多くのお客さまをお迎えしたいと思っております

10月の「秋の高山祭」では、10万人以上の人出があった高山市。


10月11日からは全国旅行支援がスタートし、新型コロナの“水際対策”も大幅に緩和された。個人の外国人旅行客が上限なしで入国可能になるなど、インバウンドを含めた観光業の回復の機運が高まっている。

コロナ禍で従業員が退職し1人に 観光客が増えても人手不足の不安


学生時代の京都での経験を活かし、2019年に高山で観光人力車の会社「直井屋(なおいや)」を立ち上げた、宿名辰弥さん(34)。


宿名辰弥さん:
(雰囲気が)変わってきましたね、戻ってきましたね。前までずっと表まで誰も歩いていない状態だったので。海外のお客さまも、ちらほら来ていただいているので嬉しいですね


宿名辰弥さん:
(2019年は)アジアを問わずヨーロッパのお客さまが非常に来てくださいまして、おかげさまで私たちもお休みをなかなか取れないくらい、非常に忙しい毎日を過ごしていました。もう一度、観光事業が復興していただくことに期待感を込めております

宿名さんが開業したのは2019年。


その年の高山市の観光客数は過去最高の473万人。宿名さんも順調なスタートを切ったが、新型コロナで観光客は激減し、2021年は194万人に。


60万人以上いた外国人観光客は、ほぼ“ゼロ”になった。


そうした中はじまった全国旅行支援や水際対策の緩和。しかし、喜んでばかりもいられない事情もあった。

宿名辰弥さん:
もともとは、私含めて3人でやらせてもらっていました。(今動いているのは)1台のみで。なので、奥の方にちょっとお休みをしている状態の人力車が2台…


開業時、1台180万円で購入した3台の人力車。宿名さんと従業員2人でそれぞれ使っていたが、コロナ禍で仕事が激減し2人は退職。人員の補充のメドはついていない(10月14日時点)。


宿名辰弥さん:
積極的に興味をもっていただける方、状況を理解した上でお声がけをさせてもらっているんですけど、なかなかハードルが高いのが現実ですね。高山の街の人力車としてお受けすることができない状況がありますので、早くそれ(人手不足)を改善しなければいけないなと思っています

観光客が最盛期の3分の2程度でも…人手不足はコロナ前とほぼ同程度に


帝国データバンクの調査によると、全国の「旅行・ホテル」業で正社員の人手不足を訴えた割合は、インバウンド需要で盛り上がっていた2019年6月は過去最高の73.1%だった。

しかし、コロナ禍の2021年1月には5.3%と過去最低を記録した。その後は上昇に転じ、2022年8月にはほぼ元通りの72.8%に。徐々に「ウィズコロナ」が定着したことや、観光ムードの高まりが要因だという。


とはいえ、観光客の回復はまだまだ。高山市も2022年は8月時点で190万人余りと、最盛期の3分の2ほどに留まっている。


それでも人手は足りていない状況だ。

コロナ禍でガイドも兼業に…ツアー会社には団体予約入るも付きまとう不安


山腰陽一郎さん:
This is the best photo spot in this city. This bridge’s name is “NAKABASHI” .(この町で一番の撮影スポットです。この橋の名前は「中橋」です)


“自撮り棒”を手に、スマホ越しに英語を話す男性、高山市を拠点とするツアー会社「ハッピープラス」の社長・山腰陽一郎さん(39)だ。


コロナ禍でオンラインツアーを始めていた。


山腰陽一郎さん:
歴史、伝統、文化、それから食について基本的には話していくと。興味ある方は(オンラインでも)どんどん質問してきます

コロナ禍以前は、酒蔵巡りや座禅体験のプランなどが人気で、利用者の8割が外国人だった。


“水際対策”の緩和が発表されて以降、アメリカやオーストラリアなどから20人の団体客の予約が11月末までに7件入ったが…。


山腰陽一郎さん:
人手不足というところです。2019年の時は、専門のスタッフを雇ってそのツアーのためにやるということができましたけれども、コロナでだいぶスパンが空いてしまいましたので、そのために(ガイドの)トレーニングはしていきましたけど、ガイドの数が圧倒的に少ない。コロナ禍でだいぶガイドが離れていってしまったりしている。もしツアーが一気にたくさん入って来た時に、対応しきれないんじゃないかという懸念点はありますね

2019年に10人いたガイドは、コロナで仕事がなくなったことで2人退職。残ったガイドもこれまでに別の仕事を始め、“兼業”の状態だ。

山腰陽一郎さん:
ガイドとして所属していても、ほかの職についてしまっていて対応ができなかったり。一旦、別の職業についてしまうと、そちらをやめづらい。そういった状況のガイド達を呼び戻すことも、すぐにはいかない

人力車会社の代表もアルバイト…“兼業”始め見えてきた現実


観光人力車の会社「直井屋」の代表・宿名さんも、自動車販売店で“兼業”を始めていた。


宿名辰弥さん:
いらっしゃいませ!

記者:
装いが変わりましたね

宿名辰弥さん:
人力車を引くかわたら、昼間はスーツに着替えて自動車の販売をこちらでさせていただいております


宿名辰弥さん:
ありがたいことに、この2年という短い間に100台ほどお客さまに販売させていただいて。ありのままの観光地だったり、車のいいところを伝えるというところは共通しているかなと思います

2019年、人力車の仕事はほぼゼロに。会社は畳まなかったが、車のセールスのアルバイトを始めた。


人力車の会社の社長としては、今の観光の機運に乗るために従業員を確保したいものの、自らが“兼業”を始めたことで見えてきた現実があるという。


宿名辰弥さん:
コロナになったことによって、それ(観光業)1本の軸足だけだと非常に危険性があるということに気付き、いかなる状況にも対応もできるように、副業と呼ぶのか、もう一つの収入源として2つの仕事をこなしていくという人は、私の周りでも非常に増えたかなと。生活基盤が(他で)できてしまっているところ、この観光業界自体が不安定なところ、コロナの感染拡大のようなことが再度起こった時に、どういった対応をとれるかという疑問に対して、明確な回答を事業主たちができていないことも(人手不足を補えない)一つのポイントなのかなと思います

コロナがもたらした観光業界の人手不足。観光客だけでは回復できない状況に直面していた。

(東海テレビ)

(FNNプライムオンライン11月11日掲載。元記事はこちら

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