自分を見つめ直す「離島ワーケーション」のススメ ~国、地方、企業、個人に効果!

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コロナ禍でテレワークが一般的になり、職種によっては遠隔でも仕事ができることがわかってきた。一方で地方創生は日本の大きな課題の一つであり、地方への移住やテレワークは効果的な手段の一つと言われている。その中でも旅先でテレワークをするワーケーションが注目を集めている。長崎県五島市が行っているワーケーションの取り組みを体験取材した。離島で仕事をすることは、日本、地方、企業、個人にとって、どんな効用があるのだろうか。

「国」にとっての離島で仕事の意味~デジタルと国境離島保全

政府は、2022年6月に「デジタル田園都市国家構想基本方針」を閣議決定し、地方の課題を解決しながら地域の魅力を向上させ、日本全体が成長することを目指す。デジタル基盤の整備やデジタル人材の育成によって、例えば自動運転技術による交通の課題解決、ドローン配送による買い物の課題解決、雇用促進による労働人口の課題解決などといった取り組みをする。

また、五島列島は、国境近くの離島に特別の措置を講じる有人国境離島法が適用される地域だ。この法律は、日本の領海、排他的経済水域等の保全を目的として2017年4月に施行され、対象地域では住民の航路・航空路の運賃の低廉化、事業に必要な物資の費用の軽減、雇用機会の拡充、安定的な漁業経営の確保などに地域社会維持交付金があてられる。
例えば五島列島の住民は福江から長崎の航空券を通常の約半額で購入することができ、本土企業のサテライトオフィスの設置も条件を満たせば交付金が支給される。
五島列島などの国境離島で仕事をすることは、デジタル田園都市構想計画と有人国境離島法の適用によって資金的に有利であると同時に、「地方創生」と「国境離島地域の保全」といった二つの役割を担っているといえるのではないだろうか。

「地方」は移住者の増加、雇用創出を期待!

地方にワーケーションがもたらすものはどんな効用なのだろうか。五島市地域振興部の庄司透さんに、地方自治体としての移住やワーケーションへの取り組みと手応えについて聞いた。

--五島市では五島市への移住を促進していますが、取り組みについて教えてください。

庄司さん: 就職に伴う面接旅費や子育て世帯の引越費用の助成など、移住支援促進の制度を作ってサイトで紹介したり、オンラインや対面での移住相談会を開催したりしています。移住を見越して試しに短期間五島に住んでみる方や、住居を探すためにワーケーションで島を訪れる方もいます。

--実際、移住者は増えているのでしょうか?

庄司さん:五島市には2018年から毎年200人以上を受け入れています。この中には五島市の移住相談窓口を通さずに移住された方は含めれていないので、実際はもっと多くの人が移住していると思います。2019、2020年は転入が転出を上回る社会増となりました。2021年度はコロナの影響で社会減になってしまいましたが、2022年は社会増への再挑戦として移住施策にも力を入れています。

--移住者の増加は地元にとってどんなメリットがあるのでしょうか。

庄司さん:ワーケーションを誘致することで、離島でも仕事ができることを知って欲しいと思います。移住者が増えることで、病院や交通などのインフラが維持されること、企業などに就職して事業が継続され、あるいは新たな企業の進出により雇用が生まれることを期待しています。五島市にサテライトオフィスを設立した企業が地元の学生を採用した事例もあり、コワーキングスペースも充実してきました。

美しい自然や観光もワーケーションの魅力の一つだ。左上:カトリック水ノ浦教会 右上:高浜 左下:鬼岳 右下:ドンドン渕
美しい自然や観光もワーケーションの魅力の一つだ。左上:カトリック水ノ浦教会 右上:高浜 左下:鬼岳 右下:ドンドン渕

ワーケーションでの「個人」の気づきは「企業」のメリットに!

テレワークの普及でどこでもできる仕事が増えたが、敢えて自宅や勤務先から遠く離れた地方まで移動して働くことは、個人や企業にとってどんな意味があるのだろうか。10月に1ヶ月間五島市が主催したワーケーションのイベントの企画・運営を担当した一般社団法人みつめる旅の遠藤貴惠さんにお話を伺った。

--ワーケーションで個人が得られるものは何でしょうか?

遠藤さん:普段と違う土地、自然や人との交流で刺激を受けることで自分自身を「異化」しつつ、普段の仕事をして、自分のこれまでの価値観を俯瞰するきっかけを掴んでいただくことが、我々の企画するワーケーションの本来の目的です。例えば、自分の人生で本当はしてみたかったこと、1日の働く時間中で自分が理想とする仕事の長さやタイミング、自分がリフレッシュ出来ると感じる場所など、改めて見つめ直すことで、結果的にて幸福度を上げるきっかけになるのではないかと考えます。

--ワーケーションは企業にとってもメリットがあるのでしょうか?

遠藤さん:企業から見ると、ワーケーションという言語に含まれる”バケーション”の部分に不安要素があるのは事実ですが、個人がワーケーションを実践し、リフレッシュ効果の高い環境下で自分のやりたいことや働く目的を見つめ直しながら業務し、同時に普段オフィスでは感じる事の出来ない情報を得ることには、企業にとっても人材育成という意味で非常に大きな価値があることだと感じています。明確な生産効率性といった数値的効果としては未だ明確ではないものの、ワーケーションの個々人に及ぼす本質的な影響の大きさに気付いている先進的な企業は既に人的資本経営の一環社としてワーケーションを取り入れています。ワーケーションに組み込まれている言語は「バケーション」ではなく、「イノベーション」だと明言される経営者の方が出てきているのも確かです。

ワーケーションイベントでは、自分を見つめる仕掛けとして焚き火を囲んでの著名人の講演会をも行われた。
ワーケーションイベントでは、自分を見つめる仕掛けとして焚き火を囲んでの著名人の講演会をも行われた。

筆者も実際に五島列島福江島の数カ所で仕事や観光をしてみて、島内のカフェやコワーキングスペースで地元の人やワーケーションイベントの参加者と自然に会話できる機会が非常に多かったことに驚いた。日常生活から離れて、豊かな自然の中で普段会わない人たちと会話をして、仕事の着想や気づきを得られる体験ができた。

政府の発表によれば、地方創生やデジタル化を促進するために、デジタル田園都市国家構想に投じる予算は5.7兆円。この投資が日本の地方創生とデジタル化にいかに寄与して、全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会をどう実現するか、注目していきたい。

(FNNプライムオンライン11月17日掲載。元記事はこちら

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