「戦場の独特の臭いが記憶に焼き付く」ウクライナ軍に所属する日本人正規兵が初めて明かした“戦場の現実”

国際・海外

ロシアによる侵攻が続くウクライナで、ロシア軍との戦闘に参加していた20代の日本人男性が死亡した。

「彼の死を無駄にしてはならない。戦争が起きるということはどういうことなのかということを少しでも考えてほしい」

男性の死についてこう語ったのは、現地で実際に兵士として戦っている日本人男性・鈴木氏(仮名)だ。20代の男性とも連絡を取り合う間柄だった。

侵攻当初、日本人義勇兵約70人が志願したと伝えられたが、その後、彼らの実情はほとんど伝えられることはなかった。

鈴木氏が8か月間に渡って目の当たりにしてきた“戦場の現実”、そして死亡した男性への思いについて語った。

ウクライナ侵攻後初、日本人“戦死”

ロシアによるウクライナ侵攻が始まった2月24日から、まもなく9か月が経つ。ロシア軍が一方的に併合を宣言したウクライナ南部の要衝へルソンでは、ウクライナ軍の攻撃によってロシア軍が撤退するという重要な局面を迎えている。

ヘルソン奪還を喜ぶウクライナ兵
ヘルソン奪還を喜ぶウクライナ兵

SNS上では「ウクライナ軍!」「へルソンはウクライナのものだ!」など、ウクライナ市民たちが兵士を担ぎ上げ、喜びの声を上げる映像が多く流れている。

そうした中、11月11日に松野博一官房長官が記者会見で、ウクライナで戦闘に参加していた日本人の死亡が確認されたと発表した。ウクライナ侵攻で日本人戦死者が確認されたのは初めてだ。

死亡したのはウクライナ軍の同国東部の前線部隊に所属していた、20代の男性。ロシア軍に反転攻勢に出る中で命を落としたという。日本人兵士死亡のニュースは海外メディアも、銃を持つ生前の姿の写真を掲載し、報じた。

番組では、日本人志願兵たちがどのような状況にあるのか取材を進め、現地で実際に兵士として戦っている日本人男性、鈴木氏(仮名)にたどりついた。鈴木氏はウクライナ軍の正規軍に所属していると言い、取材班に所属を示すID(身分証明)を示した。今回死亡した日本人兵士とも連絡を取り合う間柄だったという。

鈴木氏は立場上、身元は明かさないこと、通信データを暗号化するソフトを通じて音声のみの取材とすること、声を変えて放送することを条件に取材に応じた。ウクライナ軍の戦闘行動に実際に参加している日本人が日本のメディアの取材に応じるのはこれが初めてだ。

日本人の私が「ウクライナで戦う」理由

鈴木氏は20代の元自衛官。ゆっくりと落ち着いた丁寧な口調で取材に応じた。

鈴木氏は、自発的に抗戦する義勇兵ではなく、ウクライナ軍と正規に契約を結ぶ“正規兵”だ。
契約期間は「終戦まで」、つまりロシア軍との戦闘が終わるまでだという。給与は、前線部隊であれば月約40万円、後方部隊であれば月約13万円。ウクライナ人兵士と違いはないそうだ。

これまで鈴木氏は、ウクライナ東部や南部などのロシア軍との激しい攻防が行われる地域でも戦闘に参加してきた。

鈴木氏が命を懸けてウクライナのために戦うことになったきっかけとなったのは、ウクライナと国境を接するポーランドの駅での光景だったという。知人からウクライナの惨状を聞き、何か役に立ちたいとウクライナに入国しようとして、たまたまその駅に立ち寄った。

22年3月、鈴木さんが撮影したポーランド国境「プシェミシル駅」の様子
22年3月、鈴木さんが撮影したポーランド国境「プシェミシル駅」の様子

「最初、私はボランティアとかをしようかなと考えていたのですが、(駅で)子どもたちは無邪気に走ってるんですよね。ただ、お母さん、おばあちゃん、お年寄り、家を失って逃げて来た人たちは、駅に降りたと同時にボロボロと涙を流していました。私には家庭もなく、結婚もしていないので、その光景を見て、自分にできることと言ったらウクライナ軍に入って戦うことだなと思い、志願しました」

日本政府は、ウクライナ全土に退避勧告を出し、渡航を中止するよう求めている。さらに、日本人が外国の兵士として戦闘を行うことは、国内法に触れる可能性もある。

日本に残っている方からは、今の行動をやめてもらえないかとか、危険なのではないかという声はあったのだろうか。

「やはりウクライナに行くといろいろ話す中で、友人を含め賛否両論はあります。『死んだらどうするんだよ』と。しかも、ウクライナは、我々日本人の祖国ではないですからね。ただ、自分が選んだ道なので…。生きるか、死ぬかは正直わかりません」

「最前線で見る“戦場の現実”」

ウクライナ軍兵士として、ロシア軍と戦うことを選択した鈴木氏は、8か月間にわたり目の当たりにしてきた“戦場の現実”を語った。

鈴木さん(仮名)が使用する銃
鈴木さん(仮名)が使用する銃

「一番ひどいのは…、どちらかというと、兵士が即死する場面というのはあまり心に残らない。それよりも砲弾の破片等で足がもげて、苦しみながら、泣きながら、叫びながら死んでいく(仲間がいつまでも忘れられない)。戦場の独特のにおいがあるんですよね。焦げ臭いというか。焦げ臭さと腐乱臭というか。そこがやっぱり今でも(記憶に)焼き付く部分がある」

「実際に戦場の前線にいると、自分が生きること、命令を聞いて、その命令に従うことで精一杯な部分がある。ただ、自分の正義のために信念を曲げずに戦っている兵士たち。ウクライナ軍兵士たちの必死さと言いますか、全力で戦う姿、そういうのは(心に)残るんじゃないでしょうかね」

鈴木氏の言葉からは、戦場の生々しさが伝わってくる。そして、目の前で敵として戦うロシア兵は、報道で伝えられる姿とは全く違うという。

「実際に戦闘状況になったら生きるか死ぬか、なのでみな必死です。ロシア兵は士気が低い、練度が低いと一部の報道では言われていますが、侮れる敵ではない。侮ると痛い目を見るとウクライナ軍は思っている。最後の最後まで気を抜いてはいけない」

死亡した“同志”日本人兵士の思い

鈴木氏によると、ウクライナ軍の正規兵として戦う日本人は約10人。死亡した日本人兵士はその中の1人で、連絡を取り合うこともあったという。

「彼は自分の道を信じ、彼の信念を信じ、ウクライナに来て戦いました。そして結果として亡くなりました。SNS上では、『自己責任だ』というような書き込みが見られます。まさにその通り、自己責任なんですよ。ただ、彼がどんな思いで戦ってきたのか、どんな道を歩んだのか、その熱い思いを考えたときに批判ができるのかなと」

その“思い”は共有していたのだろうか。

「はい、そうですね。(亡くなった男性は)実直な方だった。仲間たちからも非常に信頼されていたと聞いています。報道が過熱して、ご家族に迷惑がかかったり、彼の死に対して唾をかけるような行為があったりしてはいけないと思います」

鈴木氏は、亡くなった男性が生前よく口にしていた話を教えてくれた。それは、世界中から支援を行うボランティアやウクライナ市民への感謝だったという。

「彼ら一人一人が、私は英雄だと思います。笑顔で手を振ってくれた子どもたち、彼らがいるからこそ、自分たちは頑張れる部分があります。ウクライナのために戦ってくれている仲間であり、ウクライナの英雄です」

鈴木さんのウクライナ軍の制服
鈴木さんのウクライナ軍の制服

「私が強く願っているのは、彼の死を無駄にしてはならないということです。確かに様々な賛否両論、議論はあると思います。しかし、実際にウクライナで今、戦争が起きているんです。戦争が起きるということはどういうことなのかということを少しでも考えていただく。日本で有事が起きたときに、誰が命を張って戦うのか。日本で戦争が起きかねない状況、台湾有事などを考えるきっかけになると私は思います」

鈴木氏がいる部隊は現在、後方で待機を命じられている。しかし、今月末には最前線に派遣される予定だという。

外国での『戦闘参加』は許されない?

インタビューを行う梅津弥英子キャスター
インタビューを行う梅津弥英子キャスター

「ウクライナの正規軍に日本人が参加していること、その前線で壮絶な体験をしていることは、正直とても驚きました。また、強い思いを持った鈴木さんのような人をどのように引き止めたらいいのかということに関して、非常に難しいということを率直に感じました」

インタビュー取材を行った梅津キャスターがこうスタジオで振り返ったあと、議論の焦点となったのは、『海外で戦闘行為に参加することは法的に許されるのか』ということだった。

つまり、鈴木氏や死亡した日本人兵士の行為は、外国に対して私的に戦闘行為をする目的でその準備や陰謀をした者を処罰する刑法第93条「私戦予備・陰謀罪」、あるいは刑法の殺人罪にあたる可能性があるのかという議論だ。

左から橋下徹元大阪府知事、佐藤正久元外務副大臣、櫻井よしこ国家基本問題研究所理事長
左から橋下徹元大阪府知事、佐藤正久元外務副大臣、櫻井よしこ国家基本問題研究所理事長

以下、スタジオで行われた議論要旨。

佐藤正久氏(自民党参院議員・元外務副大臣):
鈴木さんの思いは非常に気高くてウクライナの人たちのためにという純粋な気持ちで参加しているという話をしていました。ただ、非常に危険な地域であることには変わりはない。日本政府は決して推奨はしていない。そのことを理解した上で、「自分は自己責任で行っているんだ」と話しをされていた。

ポイントは傭兵や義勇兵、戦闘ボランティアではなくて、正規軍の兵士ということ。正規軍と、傭兵、戦闘ボランティアとでは、法的位置づけが全然違う。私戦予備・陰謀罪の「私的に戦闘行為をする目的で」という要件からは外れる可能性がある。

アメリカで正規のアメリカ兵として勤務し、戦っている日本人が何人かいます。フランス外人部隊も正規のフランス軍の一部です。そういう正規兵となると多分(法的扱いは)違うでしょう。

櫻井よしこ氏(ジャーナリスト・国家基本問題研究所理事長):
日本国民を守るという意味で退避勧告を出している政府の立場はわかるが、インタビューに応じた鈴木さん、亡くなった日本人兵士の方の思いというのは国を守るとか、国民の命を守るということはどういうことなのだというのをすごくリアルに、私たちに突きつけている。

私たちはウクライナで侵略戦争が起きていて、ロシアがどんどん侵略しているということは知っているけれども、本当にそれを守る側のウクライナ軍の人々がどんな目にあっているのかということを実体験として全くわからないですよね。ここに日本人が入っていて戦後の平和の豊かな日本国から飛び出ていって、自分の命を懸けて救おうという気持ちの人たちがいるというのは、私はよく決断なさったなと思います。

「自己責任」ではなくて、彼自身の「人間としての決断」だと前向きに受け取るべきだ。

橋下徹氏(番組コメンテーター・元大阪府知事):
刑法で国民が国外で殺害行為をやった場合には、日本国内の刑法が適用される。武力攻撃事態で防衛出動が発動された場合は、自衛隊が国外で殺害行為を行っても、これは正当業務行為ですが、防衛出動が発動される前のPKO(国連平和維持活動)などの段階で刑法が適用されるかはまだ議論中なんです。

インタビューを受けた鈴木さんの尊い気持ちはわかるが、正規軍と言っても(鈴木氏は)日本国籍のままなんです。ウクライナ国籍になって、ウクライナ国民として戦うのであればその意志はもちろん尊重されなければいけません。

日本では正義のための殺害というのは2つしかない。死刑と軍による戦闘行為です。正規軍とはいえ、日本国籍を持っている人が外国の部隊に入(り殺害行為をす)ることが許されるのかどうなのか、というきちんとした議論がないままに、尊い行為だからといって許すということはダメだと思います。

ウクライナのためにという気持ちやロシアを許せないという気持ちは分かるけれど、やはり成熟した民主国家である日本、日本国民である以上、法に従って、どんなにウクライナのためであったとしても国外での殺害行為は絶対にダメだという前提で考えないといけない。


更に橋下氏は、政治家に議論してほしいと呼びかけた。

「これは政治家がきちんと制度的に考えるべきだ。日本だって場合によっては少子化で自衛隊の人数が減ってきているわけですから、外国人の力を借りなければいけないことも出てくると思う。であれば、日本人だって(他国での戦闘行為に)行く場合もあるし、この議論を今までしてこなかったことが問題だから、これを議論してもらいたい」

 

※11月13日放送「日曜報道 THE PRIME」で放送されなかった一部内容を加筆、編集しました。
(インタビュアー:梅津弥英子、ディレクター・執筆:管野龍介)

(FNNプライムオンライン11月17日掲載。元記事はこちら

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