【わかるまで解説】介護保険料見直し 40歳未満に負担拡大案に専門家「完全に失策」…街では怒りの声も

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3年ぶりとなる制度改正が話し合われている、介護保険。高齢化が進む中、新たに40歳未満の若い世代にも負担を求めようという意見も挙がっています。果たして、どのような改正となるのでしょうか。

介護保険制度とは? 現在は満40歳以上に加入義務

2000年に創設された、介護保険制度。満40歳以上の全国民に加入義務が課せられています。
訪問介護・デイサービス・施設系サービスなど、介護サービスの費用を支援するものです。40歳~64歳は自己負担1割、65歳以上は自己負担が1割~3割(所得による)となります。

介護サービスの受給条件は、65歳以上は、日常生活などで介護や支援が必要と判断された場合。40~60歳は「特定疾病」により、介護や支援が必要な場合です。「特定疾病」は全16種類で、末期がん・関節リウマチ・脳血管疾患・認知症・パーキンソン病などです。


高齢化が進む中で、要介護認定者の数は、2000年が218万人、2022年は690万人と3倍以上に増加しています。それに伴い介護の総費用も、2000年が3.6兆円、2022年は13.3兆円と、こちらも3倍以上に増加しています。
このことから、制度持続のため、保険料見直しに向けた話し合いが行われているのです。

具体的にどのような案が出ているのでしょうか。

40歳未満にも負担? 対象拡大案に専門家「それは失策」

そのうちの1つをご紹介します。
例えば、3年前の2019年の社会保険審議会で「将来的には被保険者範囲を40歳未満に拡大し、介護の普遍化を図っていくべき」という話が出ました。現在は加入義務のない20代30代を被保険者に追加して、保険料を負担するというものです。
今回の審議会でも、同案が再浮上しました。


こうした案について、街の20代・30代に聞いてみると、
「高齢化社会だからしわ寄せが来るのは仕方ないけど、なんで自分たちの世代からなのか」
「怒りしかない。自分の生活でいっぱいなのに、上の世代のことまで考える余裕はない」
「納得はできないが、自分たちの老後も安心だという前提なら支払ってもいい」
という声が聞かれました。

40歳未満を被保険者に追加し、保険料負担となる可能性はあるのでしょうか。介護保険などの社会保障政策が専門の、淑徳大学総合福祉学部・結城康博教授に聞きました。


淑徳大学総合福祉学部・結城康博 教授:
私はないと思いますが、実施すると完全な失策としか言いようがない。
いま20代30代の方、賃金もあまり高くないですし、中には非正規職員や契約社員もいるので、なかなか難しいと思います。
特に親の介護を考えるのは、40歳以上。そもそも介護保険が40歳以上からにした理由というのは親を想定しているので、20代30代から義務を負うのは完全に間違いですね。

65歳以上の保険料を見直し? 難しい負担額の“線引き”

そうした中、いま有力視されているのが、65歳以上の保険料を見直すというものです。
現在の介護保険料は、40歳~64歳が平均で月6829円を、健康保険料と一緒に支払っています。一方65歳以上は、年金から天引きという形で平均で月6014円払っています。

改正案では、65歳以上の介護保険料に関して、年間所得が高い人の負担額を増やし、年間所得が低い人の負担額を減らすという、支払い能力に応じて負担を軽減するものです。現在も、年収に応じて負担額は異なりますが、その幅をさらに拡大し、貧富の差を埋めようという案です。


こうした“線引き案”の背景には、年金受給者に重い負担がかかっているという問題があります。標準的な年金額の推移を見てみると、2000年度は23万8125円だったのが、2022年度は21万9593円まで下がっています。
一方、65歳以上の介護保険料は、2000年度は2911円だったのが、2022年度は6014円まで増えています。


こちらの案の方がまだ公平と言えるのでしょうか。

淑徳大学総合福祉学部・結城康博 教授:
介護保険というのは、基本的には高齢者をターゲットにした制度ですから、たくさん収入のある高齢者に関しては保険料の負担を増やすというのは、社会保障的には非常に有力で正しい選択だと思います。
ただ、高所得の高齢者の水準というのがどこまでなのか、ということを議論しなければいけないので、年収400万500万ならいいと思いますが、200万300万あたりの人が果たして高いと言えるのかどうか。そこはちゃんと見極める必要があると思います。

「引き上げには限界」 保障の形自体の見直し案も

他にも、保障の形自体を見直そうという案も出ています。
厚労省の部会では「保険料の引き上げには限界がある」という意見が出ているのです。
案の1つ目は、要介護度が低い高齢者のケアを“市町村による支援”に切り替えるというものです。
もう1つは、ケアマネジメント(介護のプラン作成や相談)の費用を、全額給付から一部自己負担に変更するという案です。


高齢化で財源圧迫…専門家「貯金がある人に負担を」

「働く全世代に負担拡大?」
「高齢者間で負担を分散?」
「サービスの利用を制限?」
と、出ている案の中から3つほど紹介しましたが、結城教授は今後、高齢者がさらに増えていく上でどのような選択が最適だと考えるのでしょうか。


淑徳大学総合福祉学部・結城康博 教授:
一番は高齢者の負担というところだと思います。
今の日本の介護保険というのは、所得に応じて負担しているので、今後は、所得という物差しだけだと限界がある。たくさん貯金がある人にはたくさん負担してもらうというような仕組みに変えていかないと、財源が足りないのではないかと思います。
サービスの制限というのはあってはいけないことなので、そこはちゃんと議論したほうがいいと思います。

(めざまし8「わかるまで解説」11月18日放送)

(FNNプライムオンライン11月18日掲載。元記事はこちら

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