「食べている時だけ生きている実感」コロナ禍で若者に急増する摂食障害とは【石川発】

社会 暮らし

「摂食障害」という病気を知っているだろうか?。積み重なるストレスに心がうまく対処できない時に、食べ物を受け付けない「拒食」や、食べることが止められない「過食」、食べては吐くを繰り返す「過食嘔吐」など、異常な食行動が現れる精神疾患だ。

患者には10代から20代の女性が多く、真面目で完璧主義、また自己主張が苦手で不安や不満をため込みやすい人がなりやすいとされている。


こうした中、2022年10月、石川県金沢市にある金沢大学附属病院が日本海側で初めての「摂食障害支援拠点病院」に指定された。現場の医師と元当事者が語る摂食障害という病気の難しさとは。

元摂食障害の患者が語る支援の難しさ

摂食障害の経験者 山口いづみさん:
食べてる時だけは生きてるっていう感じがするっていうか、普段は色彩のない世界に生きてて、食べてる時だけ色があるみたいな…

苦しみを語る元患者の山口さん
苦しみを語る元患者の山口さん

山口いづみさん。中学2年生の時からおよそ15年間、食べることが止まらない「過食」と食べては吐くを繰り返す「過食嘔吐」に苦しんできた。

子供の頃の山口さん
子供の頃の山口さん

子供の頃から、「自分だけが人よりも劣っている」と強く思っていたと言う山口さん。劣等感を埋めるために「真面目ないい子」であり続けた。しかし、そのストレスが「過食」となって現れたと言う。


山口いづみさん:
食べて吐いて食べて吐いてって、夜中にずっと繰り返して朝出勤して…みたいな感じの社会生活をして明らかにおかしいんですけど、「自分の意思が弱いからこうなってるんだ」とか自分を責める方向に行ってしまって…誰かに助けてもらうっていう発想がなかったんです

苦しみの最中は、「助けを求める発想」すらなかったという
苦しみの最中は、「助けを求める発想」すらなかったという

金沢大学附属病院。


山口さんのような摂食障害の人を支援するため、2022年10月、日本海側で初めてとなる「摂食障害支援センター」を開設した。臨床心理士など専門のスタッフを拡充し入院となった患者のカウンセリングのほか、家族などの相談を受け付けている。


また、症状に応じて地域のクリニックなどと役割を分担し、重症化する前に、適切な治療につなげる役割を担う。


金沢大学附属病院 内藤暢茂(ないとうのぶしげ)医師
実はコロナ禍になってから、患者さんがすごく増えたんです。全国的にも1.5から2倍になったっていう統計がありまして、うちの病院だけで見ても、外来患者さんと入院患者さん、大体2から2.5倍あたりまで増えてるんですね

患者の増加を危惧する内藤医師
患者の増加を危惧する内藤医師

精神科の内藤暢茂(のぶしげ)医師。2020年にあった新型コロナによる一斉休校。あの時から若い世代の摂食障害患者が増えたと言う。

内藤医師:
あの時って友達と遊ぶことすら制限されてたと思うんです。会話も制限されてましたし…ということで、どうしても内向きに興味が向いてしまうということがあって、家で動画を見たりとかして、こうやったら痩せられるよとか、健康になれるよとか。そういったものから発展して…軽い気持ちで始めたダイエットがどんどんエスカレート


内藤医師:
拒食の場合、低血糖や貧血、睡眠障害やうつなど心と体に大きな影響が出て最悪の場合は死に至ります


早期発見・早期治療が最も大切だが、内藤医師は、その治療の難しさを語る。

内藤医師:
お薬で治るっていうのがなかなか難しい…特効薬みたいなものがないものなので「心理的なアプローチ」というのが非常に重要になるんですね。(摂食障害になる過程には)孤立とか不安とかそういったものが背景にあるはずなんですね。その孤立感とか繋がりを断たれた絆というか、そういったものを取り戻していくというのが1番大事な治療になります


石川県野々市市にある「からこ舎」。
摂食障害を克服した山口さんが去年4月、オープンさせた。摂食障害に悩む人や心に不調を抱える女性たちの職場や居場所にしたいと考えている。


そんな山口さんが摂食障害を克服したのは、30歳のある日のことだった。

山口いづみさん:
「あ、そっか、自分は別に劣ってなんかない」っていうか、「他の人とも全く同じように、自分にも力があるし、価値もある」みたいな当たり前のことがふっと腑に落ちた瞬間があって、嘘みたいに食べたいっていう衝動が起こらなくなったんです


「あなたは、あなたのままでいい」山口さんは今、活動を通して摂食障害に苦しむ仲間にメッセージを伝えたいと考えている。


ただ、その当事者が、なかなか来てくれないのが今の、悩みだ。

山口いづみさん:
(摂食障害の人は)立派なことをしたり、世の中でいいと思われている振る舞いをすることで自分の存在価値を感じるっていうことになってくる。すると、人に助けを求めるとか自分が支援される存在であるっていうことが許されないということに繋がってしまうんですね


かつての当事者だからこそ分かる、この病気の支援の難しさ。だからこそ、支援拠点病院となった金大病院の役割に期待している。

山口いづみさん:
医療の視点だけで摂食障害を捉えてしまうと、こぼれ落ちってしまうものってすごくあるなって当事者として実感していて、金沢大学病院さんには色んな立場で摂食障害に関わっていらっしゃる人たちを巻き込んで、ハブになって連携していくようなことを、ぜひ担っていただければいいなと願ってるところです

(石川テレビ)

(FNNプライムオンライン11月19日掲載。元記事はこちら

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