【独自】黙殺された反対意見…新型コロナ「第8波」対策の効果は? 遠のく「5類相当」への引き下げ議論

政治・外交 社会

「会議の最後に『反対意見はありますか?』と聞かれなかった。総意としてまとめられてしまった」

政府コロナ分科会のあるメンバーは、取材に対し、こう振り返った。

コロナ分科会(11月11日)
コロナ分科会(11月11日)

新型コロナウイルス「第8波」対策が議論された分科会で、医療機関の負担が限度を超えた場合、都道府県が外出自粛を呼びかけるなどの対策案が了承された。

多くの国がコロナ後の日常を取り戻す中、一部のメンバーは「オミクロン株の重症率を見ても必要だろうか。矛盾を感じる」などとして、対策案に疑問を呈していた。しかし、その声は最終的にかき消された。

結局“行動制限”なのか?

11月15日には東京都の新型コロナ感染者が2カ月ぶりに1万人を突破。北海道では過去最多を更新するなど、第8波が始まっている。

11月18日、政府は第8波に向けた対策を正式決定した。

その一週間前。11月11日に医療や感染症、経済関係などの専門家たちが集まる分科会で政府の対策案が示され、了承された。医療機関の負担が大きくなった場合、各都道府県の知事の判断で住民に外出自粛の“呼びかけ”をするというもの。罰金などの法的な拘束力はない。

コロナ分科会で挨拶する後藤新型コロナ対策相(11日)
コロナ分科会で挨拶する後藤新型コロナ対策相(11日)

政府は、今夏の「第7波」の主流だったオミクロン株から新たな変異で感染力などが大きく変わらなければ「新たな行動制限は行わない」というスタンスを貫くとした一方で、各都道府県に任せる形で一種の“行動制限”の選択肢が示され、街では疑問の声も多かった。

補償や支援がないまま“外出自粛”

大前提として、決定された今回の対策は、あくまでも今夏と同等の感染、医療の負荷状況であれば発動しないとしている。

新たな対策をまとめるにあたり、従来の感染警戒レベルの見直しもされた。「医療負荷増大期」として、重症化リスクのある人が外来診療をすぐに受診できないような感染状況になった場合(新レベル3)各都道府県が独自の判断で「医療ひっ迫防止対策強化宣言」を出し、混雑する場所への外出などを控えるように呼びかける、としている。

さらに感染者が増え、救急車を呼んでも来なかったりと、医療機関が機能しない状況になる恐れがある場合を「医療機能不全期」(新レベル4)と定義。この状況になりそうな場合、各都道府県が「医療非常事態宣言」を出し、より強力な呼びかけを行うとしている。


外出や移動は必要不可欠なものに限定し…
・出勤の大幅抑制
・帰省や旅行は自粛要請
・イベントの延期要請
・学校の行事や部活動の大会などには慎重な対応要請

一方で、経済活動を止めないために…
・飲食店や商業施設の時短、休業は要請しない
・接触者の出勤停止はしない
・学校の授業は継続

コロナ禍の新橋飲み屋街 緊急事態宣言下、時短営業する店も
コロナ禍の新橋飲み屋街 緊急事態宣言下、時短営業する店も

飲食店などに時短や休業を要請しないとしつつも、外出自粛の呼びかけがあった場合は、いずれにせよ売り上げへの影響は大きい。それにも関わらず今回も補償金はない。また、イベントの延期をした場合の事業者側への支援制度も想定していないことが11月18日に明らかになった。

効果に疑問も「何もしないわけにはいかない」

今回の対策は、第7波のときに創設された「BA.5対策強化宣言」をベースにしている。病床使用率が50%を超えるなどしても、実際にこの宣言を実施したのは27道府県にとどまり、さらにその効果を疑問視する声も少なくない。

ある政府関係者は「正直、効果には疑問だが、だからといって政府が何もしないわけにはいかない」とこぼす。

コロナ分科会後の尾身会長会見(11日)
コロナ分科会後の尾身会長会見(11日)

分科会の尾身茂会長は「みんなが協力すれば短期間に効果があるので(中略)、『医療非常事態宣言』のメッセージ性に期待したい」と会見で話している。

実は出ていた反対意見「行動制限ふさわしくない」

対策案について「いくつかの(文言の)修正点があったが、最終的にはこの紙(政府の案)を骨子にした提案というのは、分科会の総意となった」と、尾身会長は分科会メンバー全員から概ね賛同を得たものだと議論を振り返った。

現に、記者に配られた分科会前の政府案と、分科会後で了承された対策案を比較すると、感染警戒レベルの名称や説明の文言は変わっていたものの、考え方や対応策そのものには修正は入っていない。

だが、対策案とともに公表された分科会メンバーからの意見書を見ると、反対意見ととれる記述がある。特に経済関係の専門家たちからだ。


経済学の大竹文雄教授と小林慶一郎教授が連名で出しているものでは「行動制限という私権制限をする前提が第8波で想定されるオミクロン株では満たされていない可能性が高い」、要は「第8波では行動制限はふさわしくない」と主張。その根拠として、第7波の流行の主流だったオミクロン株の重症化率は季節性インフルエンザと“同等”か“低い”という科学的データが示されているからだ。

さらに、医療ひっ迫を避けるためには、こうした行動自粛の呼びかけではなく、新型コロナを一般の医療機関でも診療できるようにすべきだと述べている。つまり、現状は新型コロナの患者の診察や入院を一部の指定医療機関に限定する感染症法上の「2類相当」ではなく、インフルエンザと同等の「5類相当」に引き下げるべきだということだ。

経団連の河本宏子氏は「日本だけが行動制限するのは効果的ではない」と訴えた(写真はイメージ)
経団連の河本宏子氏は「日本だけが行動制限するのは効果的ではない」と訴えた(写真はイメージ)

また、経団連の河本宏子氏は「今回示された事務局案(政府案)に概ね賛同している」としながら、「そもそも海外では、マスク着用をはじめ、コロナ対策の措置の多くが撤廃されており(中略)日本だけが行動制限することは、感染症の拡大防止にも社会経済活動へのネガティブな影響を小さくすることにも効果的ではない」と訴えている。

一方で、「いざとなったら緊急事態宣言を出してもいいのでは」という意見もメンバーからあったと、尾身会長が明かしている。

第8波収束後にまわされた「5類相当」への引き下げ議論

なんだか遠のいてしまったように感じる新型コロナの「5類相当」への引き下げ議論。

尾身会長は会見で「もうすでに2類から5類に、色々なところで弾力的にそっちの方向に向いている」としながら「(議論をする)時期がいずれ来ると思うが、今ではない」と話している。さらに「まだコロナは普通の風邪と全く一緒という段階ではない」と見解を示している。

分科会メンバーの一人は「第8波が始まるもっと前に対策の議論をすべきだった」と振り返る。別のメンバーによると、分科会ではそれぞれの意見を述べることはできたものの、終了前には反対意見があるかどうか確認されることなく、そのまま了承が決定されたそうだ。

分科会メンバーの中でも意見に隔たりがあったにも関わらず、それを埋める十分な議論があったかどうか疑問が残る。

(FNNプライムオンライン11月19日掲載。元記事はこちら

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